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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

AMS-02打ち上げ

昨日のエントリーに,反ヘリウム発見と聞いて宇宙線かと思った,というコメントがありました。それで思いついたのが,AMS-02がいよいよ打ち上げられるというニュース。よし,今日のブログネタはこれだ,と思ったのですが,RolfHeuerに先を越されました。RolfというのはCERN所長なのですが,29日に最後のスペースシャトルで衛星軌道上(でいいのかな?)に運ばれるという内容のメールがCERNユーザー全員に送られていました。

って,まあ,私のニュースのソースもCERNですから,所長のほうが情報に通じていて当然なのですが,なんか,ちょっと悔しい気分です。

そんなことはどうでもいいのですが,AMS-02というのは,宇宙線のスペクトラムを測る,とりわけ反粒子のスペクトラムを測ることを主眼とした人工衛星上の検出器です。もう10年近く前に完成して,スペースシャトルで打ち上げられる予定だったのですが,名前忘れましたが,スペースシャトルの事故があったために打ち上げが大幅に遅れていました。ようやくスペースシャトルが再開され,積み荷リストに載った。でもスペースシャトル計画は打ち切り。どうなるんだろう。いや,最後のシャトルに搭載されることが決まった。という紆余曲折がありました。その最後のシャトルの打ち上げが29日に迫っています。実験関係者にとっては待ちに待った日がやってきた,という感じでしょうね。

AMS-02という名前からわかるように,この検出器は2代目で,先代のAMSは,様々な宇宙線スペクトラムを測定しましたが,先に書いたように,反陽子と陽電子という反粒子の測定に特徴があります。特に注目されたのが陽電子のスペクトラムです。1年,いやもう2年くらい経つでしょうか。PAMELAという同様の実験で,陽電子の量が予測値よりも多い。すわ暗黒物質か,という結果を報告したことがありました。AMSはそれよりも10年近く前の観測で,PAMELAほどではありませんが,やはり陽電子の量が思ってるよりも多いという結果を報告していました。なので,もっと性能の良いアップグレード版でより精度の高い測定を目指したのがAMS-02でした。

ちなみに,このブログでも以前取り上げたことありますが,PAMELAの結果というのはなかなかに解釈不能で,暗黒物質ではなさそうというのが世間のコンセンサスです。さらに,電子と陽電子の区別はできない(電荷を識別できない)がエネルギーと角度分解能の高いFERMI/LAT衛星というので電子のスペクトラムが精度よく測定され,ますますPAMELAの観測が暗黒物質ではなさそう,というように理解されています。が,しかし,陽電子のスペクトラムは高い精度の測定で追試されていませんから,AMS-02の反粒子に対する観測というのはなかなかに興味深いです。

ところで,宇宙空間に打ち上げられた人工衛星でそれなりの運動量を持った粒子の電荷を識別するのは一苦労があります。電荷を識別するには磁場が必要です。かつ,高い運動量の粒子を曲げて電荷を識別しようとしたら,強い磁場と,粒子の曲がり具合がわかる程度の大きな磁場のかかった空間が必要です。地上の実験なら大きな電磁石を使えばいいという話ですが,人工衛星はロケットで打ち上げるわけですから,大きさにも重さにも厳しい制限がかかります。宇宙線のスペクトラムの測定では人工衛星ではなく気球を使ったものもあるのですが,その制限は気球実験でも一緒で,軽い電磁石(超伝導電磁石)で強い磁場を作る技術が必要となります。

さらに,AMS-02には粒子種の識別のために複数の検出器が組み込まれていて(TRD, RICH, TOF, ACCくらいがparitcle IDのためにあったような。。),人工衛星のプロジェクトの中でもかなりのビッグプロジェクトだと思われます。そんな検出器を作り,ビームテストまで繰り返していたのですから,無事打ち上げられることになって本当によかったです。29日が楽しみですね。

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この記事のコメント

超伝導をあきらめて永久磁石にしたと記憶してるんですが勘違いだったでしょうか?
超伝導電磁石がうまくいかずに諦めかけていたらシャトルの方が遅れてくれて、ぎりぎり間に合わせた、という話だったと記憶しています。
私の記憶が正しいとすると、磁場が弱って、電荷が測れる運動量(Rigidity)の上限が下がってしまうのでかなり残念です。
2011-04-27 Wed 21:43 | URL | 中村@Belle [ 編集]
> 超伝導をあきらめて永久磁石にしたと記憶してるんですが勘違いだったでしょうか?
> 超伝導電磁石がうまくいかずに諦めかけていたらシャトルの方が遅れてくれて、ぎりぎり間に合わせた、という話だったと記憶しています。
> 私の記憶が正しいとすると、磁場が弱って、電荷が測れる運動量(Rigidity)の上限が下がってしまうのでかなり残念です。

へー,そうだったのですか。知りませんでした。
せめて,HEAT/AMS-01+PAMELAのexcessの辺りまでは
見えて欲しいですね。

にしても…返信早過ぎです。ははは。
2011-04-28 Thu 19:07 | URL | ExtraDimension [ 編集]

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