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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

反復練習

唐突ですが、日本の最先端の研究のオリジナリティのなさを、子供の頃に画一的な訓練をたくさんさせたことに帰着させる、させたがるマスコミの風潮は理解に苦しみます。そもそも、日本の研究にオリジナリティがないかどうか、という議論は置いておくとして、今言いたいのは、詰まらない単純な計算を繰り返す、といった反復練習は何かを真に理解するには不可欠で、詰まらないからという理由でそれを子供にやらせないのは子供の才能の芽を摘むことになるのではないか、ということです。

当たり前のことかもしれませんが、一緒に研究をやっていてアイデア豊富な人というのは、研究内容をより深く理解している人のことが多いです。その内容をあまり知らない人が荒唐無稽なアイデアを提示し、それが実際に素晴らしいアイデアだった、なんていうことはドラマでもない限りあまりありません。内容を深く広く理解しているエキスパートが、やっぱり、いつも鋭いアイデアを出します。

受験勉強だって同じですよね。知ってるだけじゃダメで、真に理解しているほうが圧倒的に得点に結びつきます。

うまく説明できないのですが、「知ってる」から「わかる」に変わる瞬間ってありませんか。たとえば、何かの公式があって、それを覚えていて、どのように使えば問題が解けるかはそこそこ知っていたとします。その公式がどのようにして導き出されるかも知っていたとします。けど、それらは単なる記憶で、同じような問題を繰り返し繰り返し解いていると、あるとき、「あー、この公式が言ってるのはそういうことかっ」と膝を打ちたくなるような瞬間が来る、みたいなことないですかね。

もちろん、その「わかった」と思える瞬間が来るまでに要する時間に個人差はあるのかもしれませんが、いずれにせよ、その境地に達するには反復練習が欠かせないと思うのです。あ、ただし、数学とか物理は、他の学問と違って(?)、今勉強していることの礎になっている部分を「わかって」いないと、その境地には達するのが難しいという特徴はあるかもしれません。

別の表現だと「身に付く」ということなのかもしれません。毎年学部の1年生を相手に物理学実験という授業を担当していますが、驚くことの一つに計算の要領の悪さがあります。ちょっと複雑な数値計算があったとします。因数分解が「身に付いて」いれば、考えなくても、まさに脊髄反射というヤツですね、その後の計算が簡単になるように数式をばらします。もちろん彼らも、その式を変数にしてよく見る因数分解っぽい表現にしてあげると、因数分解できるのですが、そういうヒントを出さないと自らは因数分解しないんですね。因数分解が骨身にしみ込んでいないのかなぁ、と思ってしまう瞬間です。

で、こういうのって、まさに王道はなくて、ひたすら我慢。というか、ひたすら同じような問題を反復練習するしかないと思うんですよね。世の中には、反復練習しなくても真にわかったり、身に付いたりする人がいるのかもしれませんが、少なくとも私はそういう人に出逢ったことがありません。理論屋でも実験屋でも、凄いなぁと思う人にはしょっちゅう出逢いますが、彼らに共通しているのは強靭な足腰。少し話をしただけではわからないのですが、何かの問題を議論すると、最終的にはみな凄い計算力を持っています。それくらいの計算力を持つくらい反復練習しないとならないんだなぁ、とよく感じます。

日本人以外も全く一緒です。反復練習で身につけた体力は、競争をするためのスタートラインに立つ資格のようなもので、もし本当に日本人にオリジナリティが足りないとしたら、それは反復練習をし過ぎたからではなく、そこからの勝負に負けているのではないか、というのが私の感じるところです。いやもしかしたら、反復練習で身に付けた基礎体力が負けているのではないか、とさえ思ってしまいます。

しかも、悲しいかな。こういう反復練習で体にしみ込ませる作業は、子供の時でないと相当難しいです。その時期に鍛えておかない、というのは勿体ないです。多少誤解させる書き方だったかもしれませんが、色々なことを詰め込ませろと言ってるわけではなく(いや、それも良いことなのかもしれませんが)、平易なことでいいので、それを繰り返し繰り返しやらせるというプロセスが大切なのではないか、と思ったのでした。

そういえば誰かが上手いことを言ってました。「すぐに身に付くことは、すぐに役に立たなくなる」というような内容で、激しく同意したことを覚えています。

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この記事のコメント

先生の意見に同意します。
でも反復って時に退屈な作業なので、ついつ怠ってしまうことがあります。これからは面倒くさがらずにやらなくてはと、このエントリを読んで思いました。

あと、そういう意味で公文式は最強だと僕は思っています。
2011-04-17 Sun 03:43 | URL | とある就活生 [ 編集]

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