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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

グラビティーノとレプトジェネシス

一昨日のエントリーでグラビティーノ問題に言及しましたが、今日は、それをなんとか説明してみます。素人の説明ですので、間違いがあるかもしれません。眉に唾をつけて読んでください。

まず、グラビティーノとは何か説明しておきますと、重力を媒介すると考えられている(未発見の)グラビトンという粒子の超対称性パートナーで、超対称性の模型によりますが、超対称性粒子の中で一番か二番目に軽く、ダークマターの候補になりえる粒子です。その特徴は相互作用が非常に弱いということです。

そして、いきなり話は宇宙初期のインフレーション時になります。宇宙の最初というのは人類は理解していませんが、まあ色々想像を逞しくすると(?)、一つだった力から重力が分かれた直後に宇宙が物凄い速さで膨張します。インフレーションですね。急激に膨張しますから温度もすごい勢いで下がります。ところがある時点で(たぶん)ヒッグス場のようなスカラー場の相転移で真空の持つエネルギーが解放され(過冷却の潜熱によくたとえられます)、そのエネルギーによって宇宙が再加熱されます。ついでに膨張の速度も加速し、いわゆる火の玉ビッグバン状態になります。そのときの宇宙の温度のことを宇宙の再加熱温度と呼びます。その後、ビッグバンが落ち着くと通常の(?)の膨張にもどり、温度も下がり始めます。

そのビッグバンの頃に強い相互作用も分化し、また、高温=高エネルギーのために色々な粒子が作られます。グラビティーノもそのときに大量に作られるのですが、もしグラビティーノがダークマターだったと仮定した場合、現在のダークマターの観測量から逆算すると、宇宙の再加熱の温度に制限がつきます。そのときの温度によって生成される量が決まってくるからです。で、その温度の制限というのは、グラビティーノの質量に依存して決まるので(単純には重ければ作るのにエネルギーがたくさん必要ですから、再加熱温度もより高くないとなりません)、グラビティーノの質量に応じて再加熱温度に制限がつくということになります。その結果はというと、無茶苦茶軽くて熱いダークマターになってしまう場合以外、つまり冷たいダークマターになりうるには再加熱温度が高過ぎると困る、ということになっています。

では、ダークマターが2番目に軽い粒子でダークマターに崩壊するという場合はどうなるかというと、これまた似たように、再加熱温度が高過ぎると不具合が生じます。再加熱の温度が高くてグラビティーノがある一定量以上生成されると、宇宙がさらに冷えて、ハドロンが生成され、元素が合成され…というビッグバン元素合成のシナリオに悪影響が出てしまうのです。冒頭で書いたようにグラビティーノは相互作用が弱いため寿命が長く、宇宙の再加熱時に生成された大量のグラビティーノが元素が合成されるくらいの時代に崩壊して、元素合成のシナリオに影響を与えます。元素合成のシナリオは観測量とほぼ一致していますから、そのシナリオに悪影響を及ぼすほどグラビティーノができては困る。よって、生成量が多くなり過ぎないためには、やはり宇宙の再加熱温度が高過ぎては困る、となります。

つまり、いずれにせよ、超対称性が存在しグラビティーノが存在する場合は、宇宙の再加熱温度の上限に制限がつくことになります。

ここで話が大きく変わって、バリオン数生成の話になります。みなさんよくご存知のように、この宇宙には物質(粒子)はあるけど反物質(反粒子)はほとんど存在しない。それはなぜか、という話です。これを説明するシナリオは無数にあるのですが、一番有力なのがレプトジェネシスと呼ばれるシナリオで、すっごく単純化すると、ニュートリノの相棒となる無茶苦茶重いニュートリノが存在し、それが宇宙の再加熱時に生成され、それが崩壊する時にレプトン数を破ります。そのレプトン数の破れがバリオン数の破れに変わり、結果としてバリオン数が大きく破れているという筋書きです。

このシナリオでは、バリオン数の破れの素が重いニュートリノの崩壊なので、現在のバリオン数非対称を説明するためには、それに見合うだけの重いニュートリノが宇宙初期になければなりません。その重いニュートリノの生成も宇宙の再加熱によるエネルギーでなされるので、結果として、十分な数の重いニュートリノを生成するには、今度は宇宙の再加熱温度がある一定値以上でなければなりません。

ということで、グラビティーノからは宇宙の再加熱温度は一定値以下が要請され、標準的なレプとジェネシスからは再加熱温度は一定値以上が要請され、さあ困った、というのがグラビティーノ問題です。ですので、これを解決するにはレプトジェネシスのほうで色々頑張って、温度が低くても上手く行くようにするか、超対称性のほうで、不都合がしょうじないような模型を作るか、のどちらかを行わなければなりません。

以上が、素人が頑張ってみた説明です…。

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