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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

SUSY探索の話

昨日はATLAS日本グループ内の物理解析のミーティングでした。一昨日の政治の話と違って、物理の話は面白いです。普段大阪にいるときは物理のことを考える時間も機会もありませんが、実験現場では流石に物理に触れる機会が多く、そしてワクワク感が全然違います。特に、個人的にはSUSY探索が一番気になります。そこで、今日はSUSY探索の最新結果の解説を少しだけしてみます。ちょっと前に、PRLという雑誌に論文掲載が決まったという話の流れで、現状SUSYが見つかっていないという話をしましたが、今日はもう少し詳しく説明してみます。

まずは図を2枚。
fig2 of PRL susy 1lepton allowed region as dark matter

左側はATLASで公表された最新結果。PRLに載ってる図です。横軸はm_0と呼ばれるSUSYのパラメータの一つで、標準模型粒子のフェルミオンの超対称性パートナー粒子(スクォークやスレプトン)の重さを決めてるようなものだと思ってください。縦軸はm_1/2と呼ばれるパラメータで、今度はゲージボソンのパートナーであるゲージーノ(ビーノ、ウィーノ、グルイーノ)の質量を決めてるようなものだと思ってください。つまり、この図で左下に行けば行くほど、超対称性粒子の質量は全体として軽く、右上に行けば行くほど重くなります。

で、過去の実験結果と、ATLASの結果が描かれているのですが、どうやって見るかというと、今のところ超対称性粒子を発見していないので、それに応じてm_1/2 vs m_0平面上で存在が許されない領域がでてきます。ATLASの結果は、赤い線より左下のパラメータ領域ではあり得ないということを示唆します。つまり、軽めの超対称性粒子は見つかっていません、と解釈できます。これから実験データをもっと貯めると、より重い粒子の探索も可能になるので、赤い右線よりも上あるいは右側の領域を探索できるようになります。

ちなみに、過去の実験結果以外に描かれている点線は、スクォークあるいはグルイーノの質量の指標です。グルイーノの質量はm_1/2に放射補正を加えるのですが、放射補正量はm_0にはあまり依存しないので、図にあるようにほぼ横線、つまり、m_1/2でグルイーノの重さは大体決まってきます。一方、スクォーク質量もm_0と放射補正で決まるのですが、こちらの放射補正はm_1/2にも依存するので、その平面上では等質量線は(楕)円状になります。

この図だけを見ると、じゃあもっと統計を貯めて、あるいは加速器のエネルギーを上げてより重い超対称性粒子を探しましょうということになってしまいますが、超対称性あるいはSUSYと言えば今はダークマター候補という意味合いが強く、この結果の与えるインパクトは結構大きいです。

ということで、今度は右の図、John Ellisさん他の有名な論文からの借用で、今度は縦軸と横軸が入れ替わっていますが、左の図と同じパラメータ平面を描いています。ごちゃごちゃと色々書いてありますが、重要なのは濃い青の領域。それが、宇宙背景輻射の観測から制限されるダークマター候補として許されるパラメータ領域を示しています。左下のm_0、m_1/2ともに小さい部分と、そこから上に、あるいは右にまっすぐ伸びる僅かなパラメータ領域しか許されていません。もちろん、今の宇宙論あるいは、宇宙背景輻射の観測の解釈の仕方が間違っていないという仮定のもとでの話です。

では、今度は左と右の図をくらべてみます。すると、m_0、m_1/2ともに小さい領域はATLASの実験結果が棄却してしまっています。残されているのは、m_1/2あるいはm_0のそれなりに大きなわずかな領域ということになります。自分たちの実験結果なので右の図を使ってもう一回繰り返して説明すると、m_0が大きく赤線よりも右側、薄い青色で塗りつぶされた領域の上面に沿った部分、あるいは、m_0は小さめでm_1/2の大きい赤線よりも上側の線状の領域だけがダークマターとして許されるということになります。しかし、前者が許される領域というのは非常に小さく、かつ、パラメータとして若干不自然な感じがして、もしダークマターだとしたら、m_0が小さく、かつ、m_1/2が大きめという後者の領域が有力です(個人的見解)。

さて、では、そのm_0が小さくm_1/2が大きい領域の(ATLAS実験での)超対称性事象の特徴はというと、ジェットの数が少なくなります。説明は省略しますが、m_0 >> m_1/2 だとジェットの数は多め(4本)、m_0 << m_1/2だとジェットの数が少なめ(2本)になります。またm_1/2が大きいということですからゲージーノの質量が重く、ダークマター候補のニュートラリーノの質量も大きめになります。消失運動量になるダークマター(=ニュートラリーノ)の質量が重いので消失質量が小さくなりがちで、m_1/2が大きくなるにつれ探索が難しくなります。なので、注意深く見てもらうとわかりますが、探索して存在を除外した領域は上にはあまり伸びていなくて右に伸びています(縦軸と横軸のスケールが違うことに注意)。

ということを言っておいた後に登場するのが私たちのグループの博士課程2年のMくんの解析です。彼は、感度では若干劣ると思われていたdijetの解析をしています。bと同定されたジェット+消失運動量を利用したdijetの解析をしています。そうです、超対称性粒子の質量が軽かったらすでに発見されていた可能性があり、そのときはmultijetよりも感度が悪いモードだったのですが、今となると、逆にチャンスです。ダークマター=mSUGRAのニュートラリーノというシナリオだと、残された唯一の領域に感度のある解析なのです。本人がそれを自覚してるかどうかはわかりませんが、このチャンスを生かせると素晴らしいです。

ちなみに、GMSBだとLSPがグラビティーノになることが多いのですが、あまりにも軽くなり過ぎて冷たい暗黒物質になれません。よくわかりませんが、GMSBのときはダークマターはアクシオンだと考えてしまうのか、宇宙論のほうで頑張ってもらうのか、とにかくひとヒネリ必要です。

さらに、ちなみに、なのですが、SUSYと宇宙論というのはそれほど相性良くありません。ビッグバン物質合成と、グラビティーノ問題の2つをすっきりと片付けるのはひとヒネリ、ふたヒネリ必要で、そこまで自然なシナリオではない気がしています。って、これだけじゃ何言ってるかわかってる人にしかわからない説明になってしまいましたが、今日はもうだいぶ長くなったのでこの辺でやめておきます。

最後のほうの話は、できるだけ近日中に補足説明を試みます。

[日本時間3月7日午前1時40分頃にtypo訂正「軽めのヒッグス粒子→軽めの超対称性粒子」]
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この記事のコメント

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2011-03-06 Sun 23:55 | | [ 編集]
> この中で、”つまり、軽めのヒッグス粒子は見つかっていません、と解釈できます。”と書かれていますが

ご指摘ありがとうございます。これは単なるtypoです。軽めの超対称性粒子が
見つかっていません、と書くべきところでした。本文も訂正いたしました。

2011-03-07 Mon 01:43 | URL | ExtraDimension [ 編集]

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