FC2ブログ

ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

ポスドク問題に関するご意見募集

N村さんのコメントに誘発され、ポスドク問題について感じることを書きます。N村さんだけでなく、言いたいことがある方も多いと思います。みなさんがどういう風に感じ、どうしたらよいと考えているのか意見を聞いてみたいです。クリスマスで忙しい人も忙しくない人も、ご意見がある方はコメントしてみてください。私にしか見えないコメント設定もあったはずです。

ポスドク問題を纏めると、こういうことでしょうか。
欧米(というかアメリカ?)のようにパーマネントでない研究員を増やし、競争を厳しくすることで若手研究者の実力、ひいては科学と技術力の底上げを図る。一方で、これまたアメリカのように、ポスドクをやりパーマネントの職に就かなかった人は、一般企業に就職することを目指す。また、ポスドク経験者がそういうキャリアパス構築を目指すだけでなく、社会、というか企業が博士課程修了者、ポスドク経験者を雇用してくれることを期待した。
そういう精度を導入したことで、当然ポスドクの数は増えたが、アカデミックの世界でパーマネントのポジションに就かなかった人が、どこにも就職先がなく不安定な生活を強いられている。
…ということだと認識しています。

この認識を元に私が感じることは、パーマネントのポジションは最初から増やすとは言ってないので、アカデミックの世界でパーマネントの職に就けない人がいるのは、ある意味当然です。そういう道に進まなかった人の行き場がなくなっているというのが問題なわけです。ま、当たり前のことなのですが一応。

では、なんで行き場のない人がいるのか推測してみます。すぐに私が思いつく可能性は3つ。

1つ目は、企業が博士過程修了者、ポスドク経験者をアメリカのように雇ってくれない。ちゃんとした統計を見たことがないので完全に推測ですが、日本の企業の採用の方法とかを見てると、これはあるだろうなと思います。しかし、ポスドク増やそう計画を昔言い出した時に、企業がこれからはポスドク経験者を積極的に雇いますと言ったわけではない(のですよね、きっと)ので、企業を悪者にするわけにはいきません。ただ、全ての企業が同じ時期に固定した母集団から採用する人間を選んでいるという今の求人スタイルを見ていて、優秀な人を雇おうとしているのか疑問を感じることがあり、それと似た感覚を持ちます。

2つ目は、大学などで博士課程の学生を指導する立場にある人間が、ポスドクになった後のビジョンを学生に描かせずに、とりあえずポスドクになっとけ的な指導をしている(いた)可能性。大学では教員数が減らされる一方で雑務が爆発的に増加。結果として研究遂行の中心がポスドク、あるいは博士課程の学生となっているため、ポスドクを確保するというのは、研究遂行に関して重要性が増しています。だからこそ私も含め、優秀なポスドクを確保したいと思っている人間が多いのは事実です。学生が優秀で将来パーマネントの職に就ける確率が高い場合は問題ありません。が、そうでない場合に、将来どうするかを本人によく考えさせ、どういうキャリアパスがあるのかを十分示したかどうか、というのは議論されるべき問題かもしれません。そういう反省のもと、最近ではキャリアパスセミナーなんていうものがあるのでしょうね。

3つ目は、将来のビジョンなくポスドクになってしまった人たち自身。パーマネントのポジション数<<ポスドクの数ですから、希望するポストに就けなかったときには、すぱっと気持ちを切り替えて就職活動に励む、そういう計画、気概でなければポスドクにならないほうがよいと思います。就職できないと言ってる人たちにはそういう割り切りがあるのかどうか知りたいです。ちなみに、就職関連の会社の人から教えてもらった情報・統計によると、たとえば素粒子理論のポスドクだった人は、生物とかやってた人よりも就職率がいいのだそうです。なにしろ、素粒子理論と一般企業は何の関係もないので、就職活動すると決めたら、職種に対するpreferenceが少ないのだそうです。ところが、生物とかやってると、自分の興味がある職種に就職活動対象を絞ってしまうために、就職率が下がってしまう傾向があるのだそうです。と、婉曲に書きましたが、就職関連会社の人の解析では、一般企業に対して就職活動する際のより好みが、就職を難しくしている原因の一つだということです。

以上の3つ以外では、2つ目と関連するのですが、次のポストが見つからないからと、ポスドクを複数回やっている人をさらに雇い続ける大学・研究機関にも責任があると思います。社会問題になっている派遣ではありませんが、安い労働力で重労働をさせ(=これだけなら私たちも同じですが)、かつ、パーマネントの職の人に比べて社会との接点が少ないというのは、ポスドクの人に対して非常に大きな不利益を作っていると思います。研究以外の経験値を上げる機会があまりないというのは問題ではないかと。研究者以外の色々な人とコミュニケーションを取り、書類書きに苦労し、自分の部署を守るために人とケンカをし…こういう経験で社会的なスキルが上がっていくわけですが、ポスドクの人にはそういう機会があまりありません。もちろん、研究の世界に残りたい人が多いわけですから、そういう所謂雑務をポスドクの人にしてもらうことが良いというわけではありません。ただ言いたいのは、同じ年齢だったら、会社としては社会スキルのより高い人間を採用したいわけで、これまた当たり前のことになってしまいますが、年齢が上がれば上がるほどアカデミックの世界であれ、一般企業であれ、就職はどんどん難しくなってしまいます。だからこそ、どこかで決断を迫らなければならないのに、人情で(?)あるいはなぜかわかりませんが道徳的に(?)雇い続け、結果として本人のためになっていないのではないかと思うのです。恨まれ役、憎まれ役になってしまうのかもしれませんが、どこかで印籠を渡すということが必要なはずです。

思いつく問題点を書くだけで、(予想していた通り)長くなりました。

さて、じゃあ、これからどうしたらいいかと考えると、2番目と3番目の問題というのは強い相関があります。おもいっきり短く表現すると、3年なら3年、5年なら5年とポスドクの期間を自分の中で決めて、それで希望するポストが見つからない場合は、進みたい道をスパッと諦める。大学などでも学生に対してそういう指導を徹底するというのが、まずは必要なのかなと思います。

1番目の問題は…難しいですね。もし本当に、一般企業が博士課程修了者をvetoする傾向があるとしたら、日本のお役所の得意技で、行政指導でそういう枠を作ってもらうのでしょうか。(いやー、無茶苦茶だな。)
でも、だとしたらポスドク増員計画の旗を振った文科省あたりでまずは、理系の博士課程修了者を大量に雇ってもらいたい、ということになってしまいます。ポスドク経験者が役立つということを認識してもらわなければならないわけですから、これは一朝一夕にはできません。うーん…難しいです。

これ以上考えてもいいアイデアが出そうにもないので、ここでやめます。

冒頭書いたように、ご意見のある方はぜひコメントしてみてください。N村さんもぜひ。

研究 | コメント:4 | トラックバック:0 |
<<来年度予算案 | HOME | パーマネントのポジション>>

この記事のコメント

指名されたのでコメントしようと思ってましたが、忙しくて出来てませんでした。
我が国のポスドク問題を考えるときに欧と米はどうなっているのかを考えるのがいいと思います。私もそれ程詳しいわけではないのですが、それぞれの国で雇用のシステムはずいぶん違います。アメリカはいわゆるテニュア制度で、ポスドクの再雇用も少なめですが、ドイツとかはポスドクの再雇用が盛んで、50位でもポスドクと言う人がいたりします。フランスは昔の日本と良く似ていて基本的に全部パーマネントみたいなシステムでした。
こういう視点から日本の素粒子物理(実験)分野のポスドク問題を考えると、EDさんの指摘とほとんど同じですが、人事の流動性の少なさと、学生(あるいはポスドク)の危機意識の低さと言うのでほぼ説明がつきそうな気がします。
D3の学生には良く『学振も取らんとD論書いてどうするきやねん』と聞くのですが、危機意識を持っている人は皆無です。D論だしたあと、就職先が無かったら無職になることがわかってるのか?といつも諭すのですが、そのままぼんやりと同じ実験のポスドクになってしまったりします。
諸外国の現状について特に詳しいわけでは有りませんが、それ程問題になっていないような気がするのは1)全体のパイがそこそこ大きい、2)流動性が保たれている。からだと思うのですが、特に1)は日本もそのパイに加わってしまえばいいわけで、私やEDさんのようにDをとったら外に出ていく解と言うのをぜひ若い人には考えて欲しいです。

だらだらと書いて来ましたが、私は、業界の流動性の低さを作っている諸悪の根源KEKにいて、次の職も見つけられない日本最低の物理屋なので、余り偉そうなことを言えた立場では有りませんから、このへんでやめておきます。
2010-12-28 Tue 12:43 | URL | 中村@Belle [ 編集]
忙しいところ、コメントありがとうございます。
分析しようと思うと、誰が考えても同じようなことになって
しまうのでしょうね。

2010-12-29 Wed 11:42 | URL | ExtraDimension [ 編集]
あまりラディカルに変化を促しても世の中がついて来ないですからね。政府のポスドク増加計画が少し拙速だったのと、予想外に経済が停滞したことで、ポスドク問題は大きくなったのでしょう。
地道な努力としては学生への啓蒙と、身も蓋もないですが、ポストを増やす努力でしょうか。
では、良いお年をお迎え下さい。
来年こそはATLASで New Physics の兆候が見つかることを期待しています。
2010-12-29 Wed 17:22 | URL | 中村@Belle [ 編集]
> あまりラディカルに変化を促しても世の中がついて来ないですからね。

お役人主導のドップダウンで物事が上手く行かなかった典型的な事例
だと思うのですが、ラディカルたるポイントは、日本企業の多くが
(アメリカに比べて)年功序列であり終身雇用ということでしょうか。
使えないヤツだったら首を切ればいいから、面白そうな人材なので
とりあえず採用してみよう、ということに企業としてはなかなか
なりませんもんね。
2010-12-31 Fri 12:06 | URL | ExtraDimension [ 編集]

コメントの投稿















コメント非公開の場合はチェック

この記事のトラックバック

| HOME |