ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

パーマネントのポジション

日本の人口分布がピラミッド型になっていないからなのか、別の理由なのかは知りませんが、パーマネントのポジション数が相対的に若手に少ないとつくづく感じる今日この頃です。なにも研究者に限った話ではなく、世間一般でよく言われる世代間格差と同じ問題なのかもしれませんが、身にしみてパーマネントのポジションが若手向けにもっとあったら、と感じる出来事が身近にありました。

それともう一つは、最近よく言われている若者の内向き指向というのは、パーマネントの数が足りないという問題、あるいはポスドク問題ともしかしたら関連しているのかもしれません。私が異常に馬鹿で単純だから、というのが大きな理由であるのは間違いありませんが、私は学生からポスドクだったときに、将来のことをあまり心配しませんでした。いえ、パーマネントの職に就けるかどうかは強迫観念としてもちろんありましたが、幸いなことにそういう心配をしている暇がないくらい忙しく学生生活、そしてポスドク生活を送れたために、気付いたらパーマネントっぽい職にありついていました。

ラッキーなのは間違いありませんが、ラッキーではない大きな原因の一つは、私は職にありつけるなら世界のどこででもいいと考えていたことです。もちろん、高エネルギー物理をやってるのはほとんど日米欧ですし、ヨーロッパでは日本人はなかなかパーマネントのポジションに就けないと聞いていましたから、実際的には日米のどこで研究をやっても構わないと考えていました。そうやって間口を広げると、競争率は変わらないのかもしれませんが、流動性が高くなるので、限られた時間内で職を探すにはやはり有利なはずです。だから海外で職を探せと若い人に言うつもりは全くありませんが、内向き指向はポスドク問題と強い相関を持っているのかな、なんて感じました。

書いていて思いましたが、流動性の低さというのは日本の高エネルギー業界の大きな問題です。ぶっちゃけちゃうと、物性よりも競争率高いと思いますが(博士課程の学生数/研究室数が素粒子系と物性系ではかなり違います)、さらに辛いのはポジションの絶対数が少ないことです。先にも書いたように、競争率が同じだったとしても、ポスドクをやっていられる年数にはある意味限りがありますから、そうなると母集団の大きい方が、(一定期間内に)職を探すのはやはり有利ですから。

思い浮かんだことを適当に書きなぐっていますが、さらに思いついたことが所謂ポスドク問題の副作用。博士が100人いる村だかなんだか知りませんが、研究現場の現状をあまりに悲観的に、ネガティブに報道され過ぎているために、実際には研究現場で生き残っていける逸材が、そういうネガティブな情報をもとにアカデミックなポジションを目指すことを放棄してしまうことです。研究室に閉じこもって研究するのではなく、大人数の中で開かれた環境で研究競争をしている高エネルギー物理に限った話なのかもしれませんが、私くらいの年代の人間は、常に優秀な若手がいないか探しています。学会、研究会はもちろん、普段の研究時から他の大学・研究所の人間の働きぶりがよく見えますから、自分の観察も含め、多くの他の人の意見等から、かなり公平な情報が流通しているのではないかと思います。ですから、優秀な若手だったら最初は任期のある職だったとしても、最終的には非常に高い確率でパーマネントの職をゲットしています。にもかかわらず、このパラグラフの最初に書いたように、そういう潜在的に優秀な若い人が実情もわからないまま「ポスドク問題」に踊らされ、本当は研究が好きなのに研究者の道を目指さない、というのがポスドク問題最大の問題ではないかと思っています。

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この記事のコメント

若手向けパーマネントのポスト(Explicitには助教)は、増えていると思います。
私がDの頃(EDさんと同じ頃)、就職先をさがしてましたがパーマネントな助教(当時は助手)の求人と言うのは年に1か2でした。私は片端から受けて全て落ちましたから良く覚えています。もっとも、当時はいわゆるポスドクと言うのも学振のPDだけで、これが、増え始めた頃だったと思います。私が修士の頃はPDの学振も年2,3人で、それが今では爆発的に増えています。
ポスドク問題に関しては色々言いたいことも有りますが、私の記憶が確かなら、90年代の後半は、アメリカ型の構造に変更すべきだと言う議論が活発でした。ですから、ある意味、業界の希望通りになったわけです。
人々は余り先のことは考えてなかったのですね。
私もEDさんと同じで世界中どこでも良いと思っていたので、なんとか生き延びましたし、私の頃よりむしろ今の方が国外のポスドクになる学生は多いと思います。
内向き指向は我々の業界には当てはまらないと言うことでしょうか。
2010-12-23 Thu 20:02 | URL | 中村@Belle [ 編集]
> 若手向けパーマネントのポスト(Explicitには助教)は、増えていると思います。

中村さんが言ってるのは、まさに母数が少ないためのflucutuationを捉えてるん
じゃないですかね。私たちの大学では助教のポスト数は減らされています。
他の大学でも同様で、助教を減らし、それまで助教だった人が講師、あるいは
准教授になっていますが、それによって助教が増えているということは稀では
ないでしょうか。正直、聞いたことありません(ある研究室で1個ポストが増えても
どこか別の研究室のポストが減ってる)。学会誌等での記事でも、助教以外の
ポストは増えても、助教は横ばいというのを見かけます。
…というようなポスト(数)の変化は、独立法人化によるものだと理解しています。
トータルの教員数は減らされていますから、教授、准教授の数が有意に増えている
以上、皺寄せがどこかにいくわけで。

繰り返しますが、数に変化がないのに、多くなったように見えたり
少なくなったり見えたりするというのは、高エネルギー物理業界の
母数の少なさの象徴だと思います。

> ポスドク問題に関しては色々言いたいことも有りますが、

せっかくなので、ブログ本文でも取り上げますので、ぜひ毒を
吐いてください。

> 内向き指向は我々の業界には当てはまらないと言うことでしょうか。

高エネルギー物理に関しては、他の分野よりも内向き指向が少ない
というのは確かでしょうね。そもそも、実験数が限られていて
やる場所に極めて強い制限がありますから。

ただし、年代による変化を考えると、やはり、内向き指向(*)に
なっているのではないでしょうか。だって、我々より上の世代は、
トリスタンで初めて国内で高エネルギーをやれるようになるまでは、
必然的に外国で研究してたわけですよね。全員ではないにしても、
今よりも外国に行ってた人の割合は圧倒的に多かったのではない
でしょうか。KEKでATLAS/Belleをやってる若手常勤スタッフで
外国の研究機関に籍を置いていたことのある人は、中村さん以外に
思いつきません。

(*)上記のような数の変化を捉えて「指向」と呼ぶのは
間違っているかもしれません。指向してないけど、そうなってる
のかもしれません。
2010-12-24 Fri 14:54 | URL | ExtraDimension [ 編集]
はじめまして
実はいつも密かな?楽しみとして拝見させていただいております。
        
さすがにデリケートで、かつ根深い問題なので、あまり書きこみが
少ないのか(もしかすれば、書き方が別にあるのか?)と、そんな
ふうに感じておりましたが、、、。
        
それで、、、歳がバレてしまいますが、、
80年代の原子核若手夏の学校でも、毎度、OD問題の件がとりあげ
られていたように記憶しています。
今以上に、素粒子・原子核の院試も競争が激しかったのではと勝手
に思っているのですが、、。また一方で、ODの拾い口は少なく、
非常勤を斡旋してもらえれば良い方で、技官で紹介してもらうか、
予備校で内職しながら、OD研究生でもという訳のわからないポジシ
ョンでやっていくという、資産家でなければ金の切れ目が縁の切れ目
のようなそんな選択肢しかなかったように思います。少なくとも当時
よりは遥かにパーマネントのポジションは多いのではないでしょうか?
            
ただ当時は今と様相は少し違い、バブル期に向かう高度成長期でした
から就職者も多く、院進学の方が少なかったように思います。
今は、旧帝大はほとんどが進学ですし、私学でも半分以上は進学では
ないでしょうか、、、内心、これって異常なことのように日々感じて
おります。
いわゆる大学でのacademicな研究テーマにだけ、これほど人を資源配分
する社会の方がおかしいのではないでしょうか。
              
いつの頃でしたっけ、大学院の定員を増員し、おまけに前期後期5年
一貫をベースにしはじめたのは、、現在の問題のすべてがここに端を
発しているように感じているのですが、、、、。
国民性と言ってしまえばそれっきりなんですが、どうも進学一つとって
もコヒーレントな動き方をするなあと、、違和感を感じます。
もう少し多様なスタイルの学生~研究生が出入りできる仕組みをつく
っていかないと拙いのではないでしょうか。
一端には、ビッグサイエンス化した分野の固有の問題もあったりしま
すので、、、あまり書き難いこともありますが、、、、
     
要は、見かけだけ高学歴化した、修学年数の長い教育システムに問題が
あるのでは、というそういう意見です。卒業年齢が高くなると企業に
とってはとても使い難い面(要するに給与)があるのは、今も昔も変
わらないように思います。
          
それこそ全員大学院まで行くのが当たり前の、そんな社会構造を作ろう
としているのかと、そんな感じにしか見えませんし、、。当然、みんな
勘違いしだす学生が多くなるのはあたりまえではないかと、、、。
誰を責めれば良いのか?わかりませんが、文化省役人と膝を突き合わせ
て、どうするんだと、やるしかないのじゃないかと、、、真面目に考え
出すと、そんな妄想にかられてしまいます。
                        
とりとめもなく書いてすみません。         

         
2010-12-27 Mon 23:57 | URL | mokusiroku [ 編集]
当然、詐欺のように非現実的な研究をさせる教授側の責任だと思います。学生には、定員の関係で、必修選択や、専門コースを自由に選ぶ権利さえなかったのです。

「厳密解」と言われたら、ああ、子どもの質問をはぐらかすようなことなしに、厳密に、本当のことを教えてくれるのかな、と期待しますよ、普通の日本語では。「モノポール」なんて、高校までの常識でも特に必要なくて、ありそうになかったのに、「研究」させられました・・・時間の無駄だったような気がします。

今更ながら、素粒子の標準理論は全ての基礎なので、すべての物理学科生が一度はちゃんと理解しておくべきだったと思います。大学院まで「お預け」にするシステムはおかしいです。それも、ラグランジアンの部分を見ただけでは意味が通じないため、細かい計算技術は必要ないから全体像を知っておく必要があります。重力の謎も、実は昔から判っていたのではないでしょうか?誤解を招かないよう効率的に教えるのは、教授の責任です。

そして大学院では、中学生の頃から疑問に思っていた、「自分と同じ配置に原子を並べたらどうなるのか、最短何秒でできるのか」とか、「宇宙人はいるのか」とか、「病気を未然に防ぐ」とか、本来もっと重要だと思っていたテーマをいろいろ、研究できれば良かったのです。私だけ価値観がおかしかったのだとは思えませんが他の人はそうでなかったのか謎です。

教師になりたい訳ではありませんが、後輩には自分の経験したような悲しい思いをさせたくありません。また、私の学年でも、素粒子分野を希望した人は多かったです。物理学科生として当然、知る権利のあった重要な事柄だと思うのです。院試の問題はおかしかったと思うので、専門については正直に伝える責任を感じました。
2010-12-29 Wed 02:41 | URL | nisimiyu [ 編集]
コメントありがとうございます。

> さすがにデリケートで、かつ根深い問題なので、あまり書きこみが
> 少ないのか(もしかすれば、書き方が別にあるのか?)と、そんな
> ふうに感じておりましたが、、、。

はい、この問題に関してはずーっと気になっていましたが、自分の
考えをそのまま書くこともできず(本文もかなり抑えた内容になって
います)、仰られている通り、議論がそれほど盛り上がらないのでは
ないかと思い、これまで話題にしませんでした。

でも、一度は書いておこうと思いましたし、色んな意味での当事者が
読んでいそうなブログですので意見を聞いてみたいと思い、ああいう
形で書いてみたのですが…やはり、書き込みはあまりありませんし、
私に意見も送られてきていません。

しかし、一人でも意見を書き込んでもらえたことは収穫です。
ご意見ありがとうございました。
2010-12-29 Wed 11:33 | URL | ExtraDimension [ 編集]
>重力の謎も、実は昔から判っていたのではないでしょうか?
「重力の謎」というのはどのような「謎」の事でしょうか?
出来ましたら、ご教示をお願いします。
2010-12-29 Wed 11:36 | URL | 凡人 [ 編集]

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