ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

棒磁石

今日の午後は、今年(今年度ではありません)最後の授業。物理学科だけでなく、すべての理学部生を対象としたユルい物理学実験の授業でした。毎度書いていることですが、同じ母集団のはずなのに、クラスに依って熱心さが結構違うのですが、今日のクラスは熱心に興味を持って実験を行う学生が多く、良い気分で今年最後の授業を終えることができました。

実験の内容は大きく分けて4つ。最初は、棒磁石の作る磁力線を砂鉄(鉄針)を使って目で見てもらうという、中学生あるいは高校生でやるような内容。2番目は、コイルの中に棒磁石を入れて発生する誘導起電力をオシロで見るというもの。3番目は、回転するコイルを使って永久磁石の磁場の強さを測定。最後は、3番目と同じセットアップで磁場の強さの距離に対する依存性の測定。という内容です。

この実験を担当する前は、一番最初の実験はユル過ぎるだろうと思ったのですが、やはり目で見えるというのは人の興味を惹くには重要で、オシロで誘導起電力を視覚化すると興味が増すのと同様、簡単でもやってみる価値はあると最近は感じています。特に面白いのは、2つ棒磁石のN極とN極を向かい合わせ、その間に鉄の棒を入れるときです。鉄の棒が片方の棒磁石のN極に接しているときは、当然、鉄の棒の棒磁石と触れている面がS極に、鉄の棒の逆の先端がN極になります。なので、これまた当然ですが、もう一方の棒磁石のN極を鉄の棒に近づけると斥力が働きます。

が、その斥力に逆らって棒磁石のN極を鉄の棒に押し付けてしまうと、今度は棒磁石のN極と、押し付ける前はN極だったはずの鉄の棒の先端がくっついてしまいます。鉄の棒の逆側、もともと別の棒磁石とくっついていたほうもそのままくっついています…鉄の棒がどのように磁化してるのか不思議ではありませんか。両端がともにN極にくっついているのですから、棒の一方の先端がN、もう一方の先端がSというような配位にはなっていません。

では、それがどうなっているのかを鉄針の流れの向きで推測してもらおう、というのが最初の実験の狙いで、この現象を初めて見る学生が多いので、多くの学生が興味津々でどうなっているのか考えてくれますし、私の説明にも興味を持って食い付いてくれます。今回は、特に、自分で色んな仮説を立てて説明してくれる面白い学生がいて、私が非常に楽しめた授業でした。

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この記事のコメント

物性では、スピン間の位置が明確でない、単なる内積のハミルトニアンでスピン間相互作用を表したりするんですから。同じ縦向きの棒磁石を、直列に繋げればくっつくが横隣に並べれば反発する・・・このような小学校で習う理科の知識と、矛盾する表現のモデルを、大学院入試で解かされた訳です。違和感がありました。わざと誤解を誘っていたの?それとも物性ではあれが実験的に正しいのか。
私は寿栄松宏仁教授の出した1次元磁性体鎖に関するレポートで、斥力と引力、両方の場合を書いてしまいました。正解は何だったのでしょう・・・。返してもらったことはありません。
2010-12-24 Fri 00:46 | URL | nisimiyu [ 編集]
というんでしたっけ?S・S相互作用を並べたようなハミルトニアンの。私は小学校の砂鉄の実験で見た磁界の形や、Maxwell方程式を信じていましたので、量子だからといって縦横で同じとは思えませんでした。・・・あの、物性研の助教授が4年生前期の必修科目「現代物理学入門」で「出るかも」とわざとらしく言っていたスピンの4個並んだ問題も、指示通り解きはしましたが、考えてみれば不自然です。現実の棒磁石を決して説明できないようなスピンのモデルを、専門の物理で解かされたわけです。「磁区」という言葉はむしろ工学系の参考書で学んだように思います。

和達三樹教授は、1度目の院試の後相談に行くと「横田さんのこともどうしようかと思っている」「(キャンパスの離れた)研究所の教授は、普段学部生を教えていないので志望者が少なく、学生を取りたくても取れない教授もいる。研究室の人気が偏って困る」などと親切そうにおっしゃいました。当時から、桜蔭の理科の先生(とても楽しい授業の恩師でした)の兄であることは知っていましたので、ついでにそれも話しました。しかし、1998年の卒業前に上のレポートを提出した半年後、2度目の院試の、物性系の面接では、スピンの模型を講義で教わったようなモデルで書いたところ、どちらだったか忘れましたが「符号が逆だ」と嘲笑するように言われました(※)。

そういえばこのような「トイ・モデル」は、彼や江口教授の研究室の論文でよく見られました。ふたつとも、不思議とアカデミックポスト就職率の高い研究室でした(大学や物理学会の要職を歴任なさっていたから当然でしょうか)。あまり現実的ではないかも知れないが簡単な、1、2次元のモデルを仮定して、数値計算ではない解析解だから「厳密解」だと主張して科研費を受けていたのです。専門外の方にはそうと判り難いかもしれませんね。

その後、院試には合格したのに、江口徹教授や和達三樹教授に、事務員には「白痴」と言われていちど退学させられたわけです。訂正しますが入学金は27万円で、和達教授は「27万円くらい・・・」とおっしゃったのだと思います。こうして、中学生時代から科学者を志していた私の人生を、スタート時点から奪いました。

和達教授が豊田亨死刑囚を教えたことがおありか判りませんが、ご自分のご子息は、博士課程在学中から私の10倍の給与の研究員に採用されたり、海外留学させてもらえました。いっぽうで、阪神大震災は予言できなくて、あの同じ試験を受けて留年する羽目になった横田さんの自殺は防げませんでしたが、紫綬褒章はもらえました。彼が科学者になった経緯のようなインタビュービデオが公開されていますが、元々気象庁長官の子だからか、若いうちから留学もさせてもらえて、図書館の本で勉強しただけの私よりは相当恵まれた待遇を受けたようです。あれを見て、自分も科学者になれるものと思い、被害に遭う学生が出ませんように!

(※)まあ、面接試験で多少受験生をいじめるのは当然の慣行のようですが。私は某教授に講議で「醜いですね」と言われたこともあり、緊張して怖いと思ってしまうと混乱してしまいやすいので、講師には向かなかったと思います。物理的にはこちらのほうが正しかったと思うのですが、プレゼンテーション能力はあまりないです。桜蔭中学の入試でも理科は社会と違って満点近く、理科I類の入試でも物理は満点近かったと思うのに、小柄な女性だからか、一方的に能力がない、と決め付けられてしまうのは悲しいです。
2010-12-24 Fri 23:59 | URL | nisimiyu(西川美幸) [ 編集]

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