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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

質量って

大学内、学外での雑用と、大型実験ならではのドロドロとした戦いに明け暮れる毎日で、全然研究者っぽい日常を過ごしていませんが、じゃあなんで大型の素粒子物理実験をやってるのか改めて考えてみると、やっぱり、素粒子物理が好きなんですね。では、素粒子物理の何に一番興味をもっているかというと、ありふれていますが、質量とはそもそも何なのか、その起源は何なのか、ということに一番興味があります。

そして次が超対称性。量子重力の世界に行くには、今のところ超対称性がないと理論的にすら無理っぽいですし、いわゆる階層性問題についても余剰次元なんかよりも現実味のある解決方法だと思っています(ハンドルネームはExtraDimensionですが。ははは。)。余剰次元での階層性問題の解決って、エネルギースケールの違いを結局別の何かの違い、余剰次元の大きさだったりワープファクターだったりに置き換えてるだけのように感じてしまうんですね。まあ、私が余剰次元を理解していないだけという可能性は高いですが、とにかく問題の解決になってないように感じてしまいます。

話を戻して質量ですが、そもそも質量がよくわからないのは量子重力が完成していませんから、私が不思議に思うなんていうのはある意味当たり前…なのですが、そこまで本質に行かなくても不思議だなぁって直感的に感じること多くありませんか。重力質量と慣性質量が同じなんて日常生活からは違和感ありますし、他の相互作用はゲージ原理に立脚してるのに、重力の場合は指導原理が等価原理だったり相対性原理。量子重力が完成していないことの言い換えになってしまいますが、やはり謎がいっぱいです。

にもかかわらず、ですよ。標準理論ではヒッグス場を持ち出して、ゲージボソンはまだしもフェルミオンにまで湯川結合で質量を与えちゃうって…相当無理があります。ゲージボソンはフェルミオンの運動項がゲージ対称であるために必要なわけですが、それを私のイメージに焼き直すと…時空の各点でフェルミオン場という波を勝手に位相変換しても物事が無茶苦茶にならないように、フェルミオン場同士の間に別の波(=ゲージボソン)が調整役として登場する、というイメージです。時空の各点で位相変換してもラグランジアンが不変になるためには、各時空点での位相のズレを吸収する何かが必要ですから、それがゲージボソンというわけです。

科学的にどうのこうのというわけではなく、全くもって私の直感(それをnaturalnessなんていう言葉で説明しようとすることもありますね。ははは)なのですが、そんな物質場ではないゲージボソンが質量ゼロなのは不思議ではないし、物質じゃないんだから質量なくてもいいだろうくらい思ってしまいます。でも、WとZには質量があるからなんらかのカラクリで質量を捻りだしておこう。スカラー場(標準理論ではヒッグス場)を導入して質量を作っちゃえ。という流れはまあわからんではありません。

でも、WとZに質量を与えるためのスカラー場との結合でフェルミオンの質量まで作り出しちゃうというのは、いくらなんでもと思うわけです。そもそもゲージ対称性からは質量ゼロである必要ないんですから(二重項のペアが同じ質量でないと都合わるいですが)、別にスカラー場との結合を持ち出さなくても、と感じてしまいます。

一方で、そうやってなし崩し的(?)に導入されたスカラー場=ヒッグスというのは現象論的にはあまりに上手く色々な物事を説明します。たとえば、私がいつもインプレッシブだと思うのはgauge cancellationです。LEP実験でのgauge cancellationの有名な実証実験は、ee-->WW生成断面積の測定です。ゲージボソン同士の結合がないと発散してしまいますが、W,Z,光子というスピン1のベクトルボソン同士の寄与により発散項をキャンセルするということが実証されました。

話はここで終わりではなくて、電子陽電子衝突による中間状態は電子の有限質量のためにwrong helicity stateからスピン0成分が生じます。この寄与の発散を防ぐにはスピン0の粒子がいないとなりません。それがヒッグスで、出来過ぎだなぁと感じるのは、wrong helicity stateの量はフェルミオン、ここでは電子と陽電子の質量に比例しますが、ヒッグスの結合の強さも質量に比例するというところです。Wrong helicity stateによる発散項がうまいことヒッグスによってキャンセルされるというわけですね。

直感的にも、理論的にも、無理があるなぁと思うのに、現象論的にはあまりに上手く物事を説明する、それが私の標準理論におけるヒッグス機構の印象です。だからこそ、自然はどうなっているのか実験的に検証したい、というのが私がエネルギーフロンティア実験を指向する大きなモチベーションの一つとなっています。
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