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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

解析の主導権争い

何度か書いたことある気がしますが、高エネルギー物理業界では、幾つもある国際会議の中で最も重要な会議は、夏のLepton PhotonあるいはICHEP(これらは1年交代でそれぞれ2年に1回行われます)と冬(3月)のMoriondという会議です。解析の新しい結果は大抵上記の会議あるいはその少し後の会議で発表されます。なので、解析している人間はこれらの会議に新しい結果を出せるよう解析を進めるので、忙しさもその開催時期に同調することになります。

ATLASの場合は、陽子陽子衝突のデータは3月のMoriondまでに増えることがないので、すでにあるデータを使って解析が粛々と進められています。ただし、大きな実験グループですから同じ解析を幾つもの研究機関でやっていることもあり、内部では厳しい競争、戦い、戦争が繰り広げられています。自分たちの結果が国際会議で使われるオフィシャルな結果になるべく、本当に激しい戦いが繰り広げられています。

とある解析ノートの編集者になったので、否応無しにその戦争に直面しています。いえ、編集者でなくても自分たち(=大阪グループだったり、一緒に解析をやっている他の大学グループ)の結果がオフィシャルになるべく私は戦いたいのですが、悲しいかな現場にいないとなかなか戦いに参加できません。ところが、遠隔地にいても解析ノートの編集者になったために激しい戦いに参加することができるわけで、ある意味ラッキーではあります。

具体的にどういうことが起こるかというと、それぞれのグループが自分たちの解析経過、結果を関係者にメールで流します。するとそれに対する反論や、自分たちも同じことをやってるという内容のメールが複数投げ返され、そのメールに対してさらに反論が…というふうに、メールの交換が劇的に増えます。ここ数日、朝大学に来てメールをチェックするといつもよりも格段にメールが増えていて驚きます。

ここら辺は、私の経験上、日本、アメリカ、ヨーロッパ、どこの実験グループでも同じようなものです(ただし、日本人は戦わない人が多いです)。ところがその先の進め方が国によって、というか日米欧でかなり違います。アメリカではミーティング等公の場で声のでかい人の主張が通り、日本ではみんなから一目置かれるような存在の人の意見が通り、ヨーロッパではいつ意見集約が行われたのかほとんどの人にはわからないまま、裏で階級社会(この場合、どれだけ長いことプロジェクトにかかわっていたか)の上位に位置している人間の意見で物事が決まっているようです。端的に言うと、ヨーロッパでは実力よりもコネが重要視されるという感じです。日米は、表面上の決め方は違うのですが、どちらも本当のところ、優秀な人の判断で物事を決めようという意志があるように私は感じています。もちろん、これは私の主観であり、傾向を言ってるので何事につけ必ずしもこうだという主張をしているわけではありません(一般的な傾向を議論してるつもりなのに、分布のテールについての議論にすり替えたがる人がいますので一応断っておきます)。

というわけで、実験現場にいないながら久々の戦闘を体験しており、戦いが嫌いではない私としては久々にやる気が出ています。残念なのは自分自身が戦闘に参加できないことです。実際の戦争では指揮官自身は戦闘には参加しない、参加すべきではないというのが戦術のセオリーらしいので、そういう意味では自分自身が突進していかないのは戦術上正しいのかもしれません。ただ、実際には私は自分自身で突撃したいタイプなので指揮官には向いていないのかもしれません。

ちなみに、こういう戦争を日本人が避けたがる、嫌いなのは、なにも物理屋に限ったことではないのでしょうね。無茶を言ってくる外国人と戦わなければ外交では有利に立てませんが、戦おうとする日本人の割合は少なそうです。好むと好まざるとにかかわらず、売られたケンカは買わないと、どんどん陣地は減ってしまいます。私たちの場合は戦いを避けてばかりだとクレジットがどんどん奪われてしまいます。大型国際プロジェクトは、外交の縮図かもしれません。

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この記事のコメント

主観と一般的というのは、一見、矛盾するように見えるのですが・・・

と、そんなことはさておき、Extradimensionさんの考え方としてどうあるべきか、という意見を聞いてみたいですね。
2010-12-08 Wed 22:40 | URL | WB [ 編集]

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