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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

塩水振動とゲージ原理

突然ですが、塩水振動という現象をご存知でしょうか。ググってもらえれば詳しい説明があるかと思いますが、簡単に説明しておくと…

水槽に真水を入れておきます。それとは別に、底に穴のあいたコップのような物に塩水を入れておきます。さて、そのコップを水槽の水面に入れるとどうなると思いますか?

そうです、塩水のほうが真水よりも重いので水槽内に塩水が流れ出ます。実験をやるときには、塩水であることがよくわかるように色を付けておくとよいようです。ま、ここまでは当たり前なのですが、知らないとその後の展開に若干驚きます。コップ内の塩水の重さによる穴から水槽に飛び出そうとする圧力と、それとは逆向きに働く水槽内の水の水圧が釣り合ったところで塩水の流出が止まるような気がします。ところが、勢いに乗って塩水が出過ぎてしまうため(という説明でよいのか私にはわかっていませんが)、今度は水槽内からコップの穴を通して水が逆流を始めます。するとまた逆流が勢いに乗ってしまい、平衡点を越えてまたコップ内の塩水が水槽内に流れ出ます。そしてまた勢いに乗り過ぎて…と、コップ内と水槽内の水が出たり入ったりを繰り返します。

似たような現象は他にもあって、私が見せてもらったことのあるのはろうそくの炎の振動。1本のろうそくだとゆらゆらと燃えているだけなのですが、2本(複数本)まとめておくと、炎の大きさが周期的に変化します。これらは、非平衡系の物理という物理学の中の1つのジャンルとなっていて、塩水振動の例だと、水の粘性やらなんやらを考慮して、そういう現象をモデルを立てて説明します。

で、私がこの前見せてもらって驚いたのは(ちなみに、Saturday Afternoon Physicsの高校生への講義で見せてもらいました)、塩水振動のための容器を2つ使った場合です。初めはそれぞれ2つの容器の水の出入りがばらばらです。ところが時間が経つと、だんだんその周期が一致してくるんですね、しかも逆位相で。2つの容器の間では情報伝達をしていませんから、独立に塩水振動が起こるような気がするのですが、まるで連成振り子みたいな挙動をするのです。なかなか不思議な現象です。

ろうそく振動でも同じようなことはあるようで、これはずいぶん前にどこかで見せてもらったのですが、ろうそく2本をある程度の距離に離しておくと、さきほどの例では同じ位相で、つまり2本の炎の大きさが同時に変化していたのが、今度は逆位相で振動を起こすんですね。

どちらの例も、水の粘性による水の流れや、炎の大きさの変化による空気の流れで説明できる現象なのでしょうが、誰でも見てすぐにわかるという点で非常にインプレッシブな実験です。そういう実験を見て私が感じるのは、ゲージ原理の偉大さです…物凄い飛躍ですね。ははは。

こういう一見不思議な現象を人間がどのように理解するかというと、色々なパラメータを導入して(=パラメータの持つ物理的な意味を考え)モデルを立て、そのモデルが観測結果を再現すると、パラメータの持つ物理的な意味、解釈が正しいということになるわけですよね。弱い相互作用におけるパリティの破れや、CPの破れを観測し、その観測事実に合うようにラグラジアンの形を決めたのに似ています。

ところが、ゲージ原理というのはその原理を使うと相互作用ラグラジアンの形が決まってくるのです。観測事実から推測するのではなく、ゲージ原理が宇宙を支配するルールだとして、そのルールを受け入れることで観測事実に合うラグランジアンを決められるわけです。これって凄くないですか。そんなことわざわざ言わなくても、だからこそ、多くの素粒子物理屋は標準模型に信頼を寄せているわけですが、その凄さを多くの人にわかって欲しいなぁ、なんて思うのでした。素粒子を学ぶ学生さんでも、その凄さ、ご利益を実感していない人が多いですし、一般の人に対してきわめて説明しづらい概念なんですよね。それがまた、塩水(ろうそく)振動の実験などと違って悔しいところです。

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