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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

LHCの予定とか

今月はLHCは重イオンの衝突実験。検出器は立ち上がっていますし、データも収集していますが、まあ正直、自分にとってはエキサイトなデータ収集ではなく、自分たちの実験が走ってるのに実験状況に関してあまり興味がない、という不思議な状態です。そんな重イオン衝突もそろそろ終わり、12月の第2週くらいからクリスマスシャットダウンです。ビーム衝突の再開は2月中旬の予定となっています。

2010年から11年にかけては、通常よりも短いシャットダウンで休み無くLHCを走らせるという話でしたが、短いシャットダウン=がっつり2ヶ月休み、というのはヨーロピアンな感じです。普通にシャットダウンすると言ったらどれくらい休むものなんでしょうね。

クリスマスシャットダウンはさておき、高エネルギー関係者が今注目しているのは、その後のLHCの予定です。2011年一杯は7TeVで走り、その後1年強のシャットダウンで14TeVに行けるように加速器を準備するというのが既定路線でしたが、最近は、どうもその予定が変更されそうです。2011年ではなく、2012年まで7TeV(あるいはどこかで8TeVにエネルギーを上げて)で走り続けるという案が有力になってきています。

Tevatronが2013年まで(でよいのでしたっけ?)走ることになりそうなので、間違ってTevatronに先にヒッグスを見つけられては困る、というのが予定変更を考えている理由だと思われます。Tevatronの結果は、exclusion limitを下げるための、本当の意味での探索ではない解析手法で出された結果なので、2013年まで走っても兆候さえ見つけるのは難しいのではないかと私は思っていますが、同じように考えていても上層部の判断としては、1年間シャットダウンを先延ばしするというオプションはあるでしょうね。Tevatronをやや上回るまでの感度を出しておいて、その後ゆっくりとシャットダウンをしてエネルギーを上げる、というのは非常にありうる判断です。

ところでTevatronでは、CDFと特にDzeroのシリコンは死なないんでしょうかね。自分がやっていたDzeroでは、シリコン飛跡検出器の最内層に耐放射線特性の高いシリコン検出器が追加されていて、その検出器はTevatronのルミノシティなら相当長いこと生き延びますが、それ以外の検出器は放射線ダメージの影響が出始めているはずです。Tevatronが延長して、もしかするとLHCと競争できるのは非常に軽いヒッグスの場合のみなので、btagできなくなると走る意味がありません。って、まあ、P5でやりたいって言ってるくらいなので、なんとか死なないで走れる目算があるのでしょうね。

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この記事のコメント

私自身も元々そう興味がある事象ではなかったのですが、先々週末からこちら、解析(特にcaloとjet関係)現場は戦場です。

トップダウンで様々な指令が下り、その中でなんとか名を上げようとする人々と、自分のボスの思惑やらに振り回されております。

と、言っているうちにATLAS初の PRL paper は HI data から出てしまいました。上層部はやや暴走気味でしたが、セミナーが終われば少しは落着くでしょうか…。
2010-11-30 Tue 00:53 | URL | T [ 編集]
現在は公開をやめましたが、2003年頃私のHPで書きましたとおり、ヒッグス場は「auxiliary(補助)」場と呼ばれるほど、理論的に根拠の薄いものだと思います。例えば単なる比電荷は、スカラー場には違いありません。

私の削除された博士論文元原稿 hep-th/0407057 の題名には、はっきり「ヒッグス粒子を仮定しない」と書いています。この分野は、専門外の方には何やら難解で、憧れてしまう究極理論に見えるかもしれませんが、大学院での進路に迷っている方は、くれぐれもこのような言葉に過剰な夢を抱くことのありませんように。

なお、この主張は教授のお墨付きではなく、私の独断によるものです。博士論文を問答無用で1/6に削除された者の意見ですから、何か勘違いがあるかもしれません。物理学科卒業程度の予備知識を持つ方の反論は歓迎いたします。

幅広い方々の健全な価値判断の下に、効率よく物理学研究が進みますように、
「現在は素粒子研究の組織を離れて利害関係のない、素粒子物理のTA経験者」
として、責任を感じ、あらためて(無給のボランティアで)忠告を申し上げました。
2010-11-30 Tue 02:04 | URL | nisimiyu(西川美幸) [ 編集]
このblog読むのをいつも楽しみにしてます。

さてDZeroのシリコンの件が出てたのでそこの当事者としてコメントさせていただきます。

新しく入れた最内層のほうはセンサー自体は問題なさそうです。が、印加するバイアス電圧を上げるためにはケーブルや外側のモジュールの改造が必要です。
最初から入っていた次の層ですが、すでに2010年初めにはアンダー・ディプリーションの状態が始まっています。S/Nの関係で実際に使い物にならなくなるのは今からあと一年ほどと予想されています。この層が使えなくても新しい最内層のおかげで物理解析に与える影響はそこまで深刻ではありません。
その他の層は2014年までならなんとか大丈夫だと予想されています。

あと今回の騒動のおかげでb-tagやトラッキングアルゴリズムで改善できる点が見つかっています。この辺の改善を含めてTevatronの検出器たちは2014年まで走れるという結論になってます。

ただ一番の問題となるのは人手が足りないことだと思います。
2010-11-30 Tue 04:52 | URL | 青木@Dzero [ 編集]
> トップダウンで様々な指令が下り、その中でなんとか名を上げようとする人々と、自分のボスの思惑やらに振り回されております。

まあ、その辺は大きなプロジェクトなら、高エネルギーに限らずみんなそうなるん
でしょうね。人口で見たらかなりの数の人間は大きな企業(あるいはその関連会社)
で働いていて、指摘されてる点は同じような環境なのかもしれません。

一見無茶苦茶に思える上層部ですが、競争(ATLAS vs CMS)にさらされてる環境
ではやむを得ない面があるのかな、とも最近は感じます。ATLASとCMSの場合は
加速器が同じなのでまだいいですが、Belle vs BaBarのときが加速器も含めた競争
だったので、さらに大変でした(Belleの人間は)。

こういう厳しい競争環境(消耗戦ですよね)の実験を渡り歩いてきたので、
Scientificなことだけ考えてのんびりとやってる実験を見ると、それは楽しそう
ではありますが、のんびりやり過ぎなんじゃないの、と逆に感じてしまう
今日この頃です。流行の言葉だと「仕分け」られても仕方ないくらいのんびり
やってるプロジェクトあるよなぁ、とか思っちゃいます。学者が世間知らずと
揶揄されるのに納得してしまうのですね。

もちろん、科学者としては世間知らずと呼ばれるような態度で臨むべきでも
あり、その辺の匙加減、バランスを取ることが自分自身の課題かなぁ、
なんて思っています。

話を戻すと、何かが見つかるまで(あるいは見つかりそうもないとわかるまで)は
しばらく今のようなケイオスな状態が続くのかもしれません。でも、それが永遠に
続くわけではないので、現場の人は歯を食いしばって頑張ってください。
キツいかもしれませんが、(色んな意味で)今しかそういう経験できませんから。
2010-11-30 Tue 09:39 | URL | ExtraDimension [ 編集]
コメントありがとう。
N村@Belleに引き続きの実名コメントですね。ははは。

> 新しく入れた最内層のほうはセンサー自体は問題なさそうです。が、印加するバイアス電圧を上げるためにはケーブルや外側のモジュールの改造が必要です。

今は何ボルトくらいでオペレーションしてるの?
IB(だっけ?)あたりが厳しいのかな。

> 新しい最内層のおかげで物理解析に与える影響はそこまで深刻ではありません。

自分の仕事なので、この事実は嬉しいですね。

> その他の層は2014年までならなんとか大丈夫だと予想されています。

なるほど。ということは、CDFも大丈夫そうだね。
でも彼らのL00は動いてないんだよね、きっと?
だとしたら、L1がなくてもDzeroのほうがresolution出る
だろうから、btagの性能、ひいてはlow mass Higgsの
探索感度はDzeroのほうが良いのかな。
少なくとも、私がいた頃はよくそういうシナリオを
描いていたのだけど。

> ただ一番の問題となるのは人手が足りないことだと思います。

はい、色々な人から聞いています。でもまあ、色々なことを
自分でやれるし、collaboration内で蹴落とし合いをするのではなく、
協力して(=collaborateして)やれる環境にあると思って、
ポジティブに受け止めて頑張るしかないでしょう。
と、外野の意見で申し訳ない。
2010-11-30 Tue 09:47 | URL | ExtraDimension [ 編集]
西川さん
ヒッグス粒子は検出されると思いますよ。
なんたって、「南部モード」で有名な天才南部陽一郎大先生の「自発的対称性の破れの」アイデアがベースとなって仮定されているんですから。
(ヒッグス機構が間違っているとすれば、ウィークボゾンとレプトンとクオークのカレント質量はどのように説明されるのでしょうか?)

それと、シーソー機構も、天才マヨラナが考えたマヨラナ粒子の理論がベースとなって仮定されていますから、ニュートリノレスの二重ベータ崩壊もいつかは検出されると思いますよ。
(ニュートリノの質量が非常に少ない事と、ニュートリノのヘリシティーの極端な非対称性は、シーソ機構以外に説明可能でしょうか?)
2010-12-01 Wed 02:02 | URL | 凡人 [ 編集]
>今は何ボルトくらいでオペレーションしてるの?
>IB(だっけ?)あたりが厳しいのかな。

おっしゃる通りIBが問題視されてます。設計では300Vまでなら大丈夫らしいですが、それが信じられる値かどうかを今調べているところです。
最内層は現在150Vのバイアス電圧でオペレートしてます。 生データから得られた今現在の全空乏化電圧はおよそ100Vです。ちなみにこれはすでに型変換後です。来年いっぱい走った場合、15fb^-1、には全空乏化電圧が280Vあたりになると予想しています。つまりその先を走りたい場合はIBを改造するか、ケーブルを迂回させるしかないということになります。

人手の話ですが、たしかに以前よりも色々な物理解析グループ間での強い協力関係が出来上がりつつあると思います。おかげで共有できる解析フレームワークも増えました。物理の結果を出すだけなら昔より簡単になっているのかもしれません。
(ただ弊害として、頭を使わない若い人が増えた気がします。それと人手が物理解析に偏ってしまってオペレーションをやる人が足りてないです。)
僕も間もなく離れてしまうので無責任なことしか言えませんが、なんとかうまく頑張って欲しいです。
2010-12-01 Wed 07:29 | URL | 青木@Dzero [ 編集]

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