FC2ブログ

ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

海外出張者数

「日本の研究者、内向きに」という新聞記事を読みました。今年ノーベル化学賞を受賞した2人が海外で研究生活を送っていたことを受けて記事になってるのは明らかで、マスコミにこういう問題を取り上げてもらうことは悪くはないと思うのですが、もう少し突っ込んだ取材をしていただき、正しい問題意識を広めてもらえるとさらに有り難いです。

文科省の担当者の話を引用して、海外出張費はあるが、研究環境が国内でも整ってきてるから出張者数が減ってる、というような結論、とまでは言いませんが、そういう仮説で記事は終わっています。でも、こういう書き方だったら内情を知らない人は、それが大きな原因だと思ってしまいます。確かにそういう面もあると思いますが、他にも幾つか有力な原因が考えられます。

まず私が推測する1番の要員は、大学教員の雑務が劇的に増えていることです。それと、雑務ではありませんが、多くの大学で教養部が無くなり、元々研究指向だった大学スタッフまでもが授業に縛り付けられるようになったことも大きく影響してると思われます。記事で引用されているデータ(グラフ)は、1ヶ月間以上の出張で、大学の教員ではそれだけ長期で大学を離れるのは相当難しくなっています。これが主因だと私は思うのですが、そういうことには全く触れられていません。

次に考えられるのは、年代が下に行くにつれて、海外(というより欧米)に対するコンプレックスみたいなものがなくなっている気がします。団塊の世代の人たちには、多かれ少なかれ、欧米文化が日本文化よりも優れているという偏見を持ってる人が多いと感じます。そこまで強い偏見ではなくても、憧れを若者よりは持ってる(た)気がします。それはそうだと思うんですよね。彼らが若い頃は、科学と技術の面では欧米に圧倒されていたのですから。でも今は状況が変わってます。いわゆるポップカルチャーは日本がリードしていますし、車や家電製品といった身の回りのものも欧米製品に比べて圧倒的に負けてるというわけではありません。携帯電話なんてガラパゴスと称される独自な世界になっちゃってますし。そういうわけで、昔は「海外で修行して」という感覚を多くの人が持ってたと思うのですが、今の若者にはそういう感覚が育っていない気がします。雑用が事務があっても、無理してでも、海外に行きたいと感じる土壌がなくなってるのではないでしょうか。

そして、3番目が、新聞記事にもあるように、わざわざ外国に行かなくても同様の研究ができるから、という理由でしょうか。時間と金を使わずに同じ研究ができるなら国内でやるというのはある意味合理的です。ただ、私自身は、この理由で海外で研究活動しないのだとしたら、日本の未来は暗いと感じてしまいます。グローバル化、国際的な競争をあらゆる分野で強いられるわけで、そこでは、日本国外の物事の進め方、文化、政治、というようなことを学んでおくことはやはり貴重だと思うのです。あと、人脈作りというのも実は非常に大切です。今ATLASで研究をしていて、真に協力的に研究を行っている外国人研究者のほとんどは、過去に一緒に研究をしていた、いわゆる同じ釜の飯を食った連中です。若いうちは意識しないかもしれませんが、大人になって、自分でプロジェクトを率いるような立場になったときは、この人脈というのは実は凄く大切だったりします。まあ、そういうわけで、国内で同じ研究ができても、外国で研鑽を積むことも悪くないし、必要なんじゃないかなぁと思っています。

それにしても、人数の減り方って相当激しいですね。10年で半分ですか。。。

研究 | コメント:2 | トラックバック:0 |
<<充実した議論 | HOME | 不発弾>>

この記事のコメント

2000年にはいってから数が下がっているのは、国立大学独立行政法人化の影響でしょうか。もしそうであれば、それを推進した文部科学省に責任があると言えると思います。また、もっと一般化した議論にするためにも、同じ調査を企業での研究職についても行ってほしいです。そういった意味で、おっしゃる通り、もうちょっと突っ込んだ調査や分析が欲しいですね。
2010-10-16 Sat 12:56 | URL | Shuji Mochida [ 編集]
Mochidaさん、コメントありがとうございます。
まだ、たまには読んでくださっているんですね。

独立法人化も影響あるかもしれませんし、私が個人的に
影響が大きいと思うのは教養部の廃止です。昔は、
イチローのようなプロ野球選手と、レッスンプロに
分かれていたのに、今は全員がレッスンプロを兼業。
本来の野球のプレーを磨く機会がなくなりました。
それに伴って研究室の数が増え、逆に研究室あたりの
スタッフの数が減ったので、交代で教育のdutyを回す
ということもやりにくくなりました。

それにしても、今の私たち物理学専攻は、准教授の
ほうが教授よりも担当コマ数が多く、教授と助教の
コマ数が同じ、というように、相対的に若い人の負担が
大きいシステムです。今の日本の縮図でしょうか。

同じ調査を企業で調べると面白いというのは確かに
そうですね。そういう見方を瞬時に思いつかないと
いうのは、自分もムラ社会の一員ということですね。
まだまだ修行が足りません。こういう視点でガンガン
ツッコミを入れてください。
2010-10-16 Sat 20:08 | URL | ExtraDimension [ 編集]

コメントの投稿















コメント非公開の場合はチェック

この記事のトラックバック

| HOME |