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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

SUSY探索の方法

しばらく前に、天文の分野ではブラックホールを観測したことになっているが、重力の分野では観測したことになっていない、というようなエントリーを書いたことがあります。ブラックホールは光っていませんから、すなわち、何かを放出しているわけではないので、それ自身を直接私たちが観測することはできません。物質がブラックホールに吸い込まれるときにX線を出すので、そのX線の観測から、光っていない「何か」の質量が推定でき、質量がそんなにデカイ(というか密度の高い)光らないモノは理論上ブラックホールしかありえない。よって、そのX線源はブラックホールだというのが天文の人の見方です。一方、重力研究家は(物理の人の多くはこっちかもしれません)、直接見たわけではないので間接的な観測だ、というわけですね。

どっちがどうと言うわけではないのですが、実は私たちの超対称性(SUSY)探索にも似たような面があります。

SUSYは理論上の仮説で、さらにその仮説をもとに数多くのモデルが構築されています。その多くのモデルでは、Rパリティといって、超対称性粒子と私たちの知っている粒子(標準模型粒子と呼ぶことにします)との間にある保存量があると仮定しています。Rパリティの保存に基づくと、超対称性粒子が崩壊する時は必ず超対称性粒子と標準模型粒子の2つに崩壊しないとなりません。ということは、重い超対称性粒子が崩壊してより軽い超対称性粒子と標準模型粒子になり、さらに、できた超対称性粒子がより軽い超対称性粒子に崩壊する…というような具合にどんどん続けていくと、一番軽い超対称性粒子(LSP:Lightest Supersymmetric Particle)は崩壊できなくなります。それより、軽い超対称性粒子がないのですから。ということでLSPは崩壊できないために安定な粒子として宇宙に存在し続けます。

同様に、Rパリティにより超対称性粒子の反応にも制限がつき、超対称性粒子と標準模型粒子が反応すると超対称性粒子が生成されます。で、重要なのは、この反応率が極めて小さいということです(中間状態の超対称性粒子の質量が重いために反応率が抑制される。WやZの質量が重いので弱い相互作用が弱いのと同じ理由です)。どれくらい小さいかというと、ニュートリノの反応率と同じくらいで、平均して地球を何億個も通過しないと反応を起こさないというレベルです。

話題は若干それますが、上記2つの性質、安定して宇宙に存在し続けることと、物質との相互作用が弱く観測できなこと、からLSPがダークマターの有力な候補となりえています。

話を戻すと、私たちの検出器ではニュートリノを検出できないのと同様に、LSPも私たちの検出器では検出できません。ちなみに、当然のことですが、スーパーカミオカンデなどのニュートリノ検出器も必ずニュートリノを検出しているわけではありません。無数に飛んで来るニュートリノのうちの10のウン10乗分の1のニュートリノを捕獲しているにすぎません。

で、私たちの検出器というのは陽子の衝突地点をぐるっと取り囲んでいるので、もし検出できない粒子があると、全ての観測エネルギーにアンバランスが生じます。そこで、このアンバランスを観測したら私たちはニュートリノあるいは、LSPを観測した(のではないか)と思うわけです。もちろん色々な理由でエネルギーのアンバランスは生じます。検出器は100%の確率で粒子を捕獲できるわけではありませんから、たまたま観測をミスったことでアンバランスは生じます。あるいは、ある検出器が粒子が来てないのにノイズなどで粒子を検出したと間違えれば、結果として、その逆方向にエネルギーのアンバランスを作ります。というような偽のニュートリノ源、偽のLSP源ではないことを確認した後、さらに色々な情報を使い観測したエネルギーアンバランスがニュートリノなのか、LSPなのかを判断します。

ということは、LSPを放出した事象(=陽子同士の衝突によって色々な粒子が生成された事)自体を直接観測したとしても、超対称性粒子自体を直接観測しているわけではありません。もっと言うと、天文家が「見えない」ブラックホールをブラックホールだと言えるのと違って、残念ながら、私たちの場合はエネルギーアンバランスを作るであろうSUSY以外の仮説が山ほど存在します。もちろん、これまでの実験結果や理論の自然さ等からSUSYが最有力なのは間違いないのですが、実験的にきちんと排除できていない以上、色々な仮説は存在するわけですね。

そこで、「SUSYらしい」(=標準模型では説明できない)エネルギーアンバランスを持った事象を発見したら、今度はSUSYにのみ存在する事象の特徴を測定しなければなりません。他の仮説との違いを証明して晴れてSUSY発見となるわけです。いやー、早くそういう日が来るといいですねー。今から興奮します。あ、でも、SUSYだと確定できなくても、標準模型で説明できない事象が発見されただけでも素粒子関係者は大興奮するでしょう。新しい理論が必要なことが確定するわけですから。

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