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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

実験近況

LHCは順調(=大きな事故やトラブルが無く)に運転を続けています。リングに入射する陽子数を徐々に増やし、それに応じてルミノシティも上がっています。ピークルミノシティで4x10^30くらいまで到達しています。1日あたりの積分ルミノシティも100nb^-1近くなり、調子のいい日は100nb^-1を越えました。とはいえ、これまでに収集したデータの総量はやっと1pb^-1を越えたところ。2011、2012年で1fb^-1(=1000pb^-1)のデータ収集が目標なのですが、この調子ではその目標をクリアするのは厳しい感じです。

当面のルミノシティの目標が10^32として、それに到達できたとして今のペースをスケールさせると1日あたりの積分ルミノィティが2pb^-1程度。2011,2012年に、あわせてあと何日運転できるかわかりませんが、一声400,500日程度でしょうか。ということは、今すぐ10^32のルミノシティに到達できれば目標クリアも夢ではありませんが、まあそういうわけにはいかないので、1fb^-1はちょっと厳しいという予想になります。

でもまあ、それでも、標準モデルの物理検証を今までの2TeVから7TeVで行えますから、物理解析をしなければならないD論の学生やポスドクにとっては、数100pb^-1のデータは貴重です。ヒッグスは無理ですが、もし軽ければSUSYも見つかる可能性が十分ありますし。

一方、私たちの担当するシリコン半導体検出器では、運転を止めるような問題ではありませんが、少々心配な問題が発生しています。ビーム衝突点近くのシリコンセンサーとその読み出し部分は、検出器外部のデータ収集システムとオプティカルリンク(平たく言うと光ファイバーです)で結ばれています。シリコンからの信号読み出しのための制御信号を送ったり、シリコンセンサーからの信号を読み出したりしています。家庭にある光通信と同じく、光信号を電気信号に、あるいはその逆で電気信号を光信号に変換する必要があり、それには世間で広く出まわっているのと基本的には同じIC素子が使われています。このIC素子がかなりの割合で死に続けています。私たちシリコンストリップ検出器だけでなく、シリコンピクセル検出器などでも同じ素子が使われているのですが、同様にデッドが増え続けていて、その原因が不明。幸いなことに交換可能な場所にあるのですが、交換不可能な場所にも同様の素子が使われていて、原因を理解できていない現在は、いつ交換不可能な部分の素子が死ぬのか戦々恐々としています。

もちろん、多くの人がその原因究明に取り組んでいるのですが、今のところ決定打は無く、もしかすると寿命なのではないかという説すら出てきています。しかし、もし本当に寿命だとすると、交換不可能な部分の素子が死に始めると予想されるのが2、3年後と見積もられていて、当初から放射線ダメージにより交換することが予定されていたシリコン検出器ですが、放射線ダメージよりもさきにこれが原因で動かなくなるのではないかという心配も出てきています。なんにせよ、早く原因を解明しなければなりません。


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この記事のコメント

予想より早く死んでいると言うことは、放射線テストはやっていたと言うことでしょうか?
我々の間でも光ネットワークのトランシーバーの放射線耐性が問題になっています。中国のBESの人の話だとLEDが放射線で弱っていくそうで、しかも、カプラーの中身はわからないのでどのカプラーにどのLEDが使われているかわからない。
LEDもPhotodiodeもシリコン素子ですから、そのうち死にますよね。
2010-08-12 Thu 10:14 | URL | 中村@Belle [ 編集]
今回死んでいるのは、センサー+ハイブリッド側ではなく、エレキハットにあるクレート側です。放射線の影響ではないでしょう。蛇足ですが、検出器内部に入れるものに関しては、放射線耐性は考えられています。
2010-08-12 Thu 19:52 | URL | ExtraDimension [ 編集]

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