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不思議に思うこと

昨日のエントリーの公平感に絡むことなのかもしれませんが、私が常々不思議に思うことにマスコミを筆頭とする日本国内の公務員バッシングです。私も公務員みたいな立場なので、お前が何を言ってるんだ、という意見を持つ方が大出あろうことは想像できますが、まあ、自分のブログなので勝手なことを(いつも通り?)書いてみます。

まず、日本のあまりに不健全な財政を立て直そうという議論のときに必ず槍玉にあがるのが、公務員の無駄遣いです。無駄遣いを減らすことに私も強く賛成します。その勢いで必ず出てくる議論が、公務員の数を減らせ、給料を減らせというものです。減らせるものなら減らしていいと思うのですが、マスコミが先導する公務員減らしの根拠が私にはわかりません。野村総研、大和総研あたりでさらっと調べると、どの統計を見ても日本の公務員数は圧倒的に少ないですし、人件費も飛び抜けて少ないです。OECDの国々のなかで、単位人口辺りの公務員数最下位、GDPに対する公務員雇用費最下位、公務員人件費÷(公務員人件費+民間人件費)これまた最下位、と、どういう数値を見ても他の国に比べて公務員雇用のために日本が多く金を使ってるとは言えません。というか、普通の見方をすれば、日本は公務員が飛び抜けて少ない国です。欧米に比べたら公務員数ほぼ半分ですから。

それでも、そんなに減らせというならどれくらい減らせるか少し考えてみると…日本の国家公務員数は約150万人。地方公務員数は350万人強です。その中で、警察や消防に携わる人の数を減らすというのは無理でしょうから、一番攻められている地方の職員数と給料を頑張って下げてみます。田舎の市町村の職員は暇そうに見えますから、マスコミ等が攻めたくなる気持ちはよくわかります。この辺の職員数と給料を減らすことは私も賛成です。ただ、地方公務員の半分くらいは学校の教員や幼稚園保育園関係者なので、地方自治体職員数は150万人くらいなのではないかと概算します。無茶を承知で人員を3割削減、給料を3割削減するとしましょう(はい、あくまで仮定の話です)。すると0.7x0.7で人件費は約半分になります。公務員数500万人のうちの150万人の人件費が半分になるので、トータルでは0.3*0.5=0.15、つまり15%ほど予算削減になります。

実際にはそんなことしたら失業保険払わないとならないし、最初に書いたように日本の公務員数は無茶苦茶少なくて、地方自治体の暇暇職員はいいとしても、国公立病院の医師やスタッフ、学校の教職員数は冷静に考えれば増やすのが筋です。なので、上の議論、15%予算削減というのは本当に仮の机上の話です。

さて、この机上の理論を押し進めて15%予算削減できたとすると、どれくらいの予算が浮くのでしょうか。人件費1人あたりオーダーとして1000万円としましょう。物理屋がよくやるオーダー計算です。実際には数百万円でしょうが、100万円よりは1000万円に近いでしょうから、1000万円としちゃいます。500万人の人件費は50兆円。その15%ですから7.5兆円の削減。まあ実際には5兆円といったところでしょうか。

繰り返しますが、こういう削減はできたらいいと思いますが、実際には他の分野であり得ないくらいの人手不足が発生してるわけですよ。他の国の比較からも明らかなように。なので私が独裁者になってなんでもできるとしても、5兆円の予算削減はせずに、その浮いた分は現在人手不足な公務員を増やすと思います。

なんていう、私の意見はさておき、めでたく5兆円削減できたとします。で、国家予算をさらっと眺めると、税収40兆円弱、歳出100兆円弱です…。歳出を5兆円減らしましたが、どう転んでも赤字です。つーか、こんなこと計算する前からわかってた話なのですが、マスコミが主導する無駄削減、非現実的な公務員減らしがどれくらいの効果を生むのか敢えて計算したわけですね。ついでに言っておくと、5兆円の削減は地方公務員で、地方交付税だけで地方公務員の人件費を賄っているわけではないので、国家予算としては5兆円も削減できません。せいぜい2、3兆円なのではないでしょうか。

世界的に見て異常に少ない公務員をさらに減らすという暴挙を行っても焼け石に水もいいところです。財政をまともにしようと思ったら税収を2.5倍しなくちゃならないのです。小学校低学年で習う簡単な算数です。100兆円の支出があるなら税収を100兆円にしないとならないのです。なんでこんな算数がマスコミその他、バラマキを要求する人たちはわからないのでしょうか。消費税率を20%にすればいいというのは、エコノミストでなくても小学校低学年でもわかる簡単な算数だったのです。

私が無茶を言ってるかと思われるかもしれませんが、国民の税負担率を調べてもらえば私が言ってることが無茶苦茶ではないことがわかってもらえると思います。日本人の税負担率はこらめたOECD諸国の中で最低ランク。特に個人の税負担率が異常に低い。よく新聞等で言われてるように法人税は高いんですね。だから国際競争力をそがれてるという話をよく耳にするわけです。個人の税金を2倍以上にするのは実は無茶苦茶ではなく、これだけの社会福祉が整備されてる国では当然だったりします。

ということを考えると、昨日のエントリーで書いたように、日本人は貧しい人を国が助けることをあまり好きではない、つまり税金を払いたくないという考えが首尾一貫してるんでしょうね。でもって、公務員に対してはなぜか知りませんが、異常なまでの不公平感を抱くんですね。これもまた私には理解不能です。今の若い人は就職難しいですからまだ理解できるのですが、少なくとも私たちの世代より上の人がそういう不公平感を抱くのはなぜなのかわかりません。高度経済成長期からバブルの頃は、給料が少ないので人気なかったわけですよね。自分より上の世代の親戚の人などからは、パッとしない公務員になんて誰もなりたがらなかったとよく聞きます。実際、叔父の一人はなれた公務員になりませんでしたし。

最後に一つ、マスコミ等が公務員バッシングをする根拠の一つに給与の官民格差というのがあります。雇用形態が違う国同士で比較、しかもコア職員という限られた公務員だけを取り出すという、バイアスばりばりの結果で、それを使うのはどう考えてもフェアじゃないと思うのですが。だって、派遣会社から派遣された大蔵官僚なんているわけないですから。あ、でも、私個人は官民格差の縮小大歓迎です。なぜって、自分の給料が私立大学の教員なみになるのは大歓迎です。はい、私立大学の教員の給料の方が圧倒的に良いのですよ。国からの補助金もらってるのに、です。官は攻められますが、援助をもらいかつ給料も高い民も攻められて欲しいものです。

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この記事のコメント

日本のマスコミと政治家のクォリティーに関して考え出すと、恥ずかしくなります。
日本のマスコミは科学的、統計的な考え方が全く出来てないし、論理的にも全く筋が通っていないことが多いです。私はEDさんのように、怒ることはとっくにあきらめてしまいました。
<a href="http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100225a06j.pdf">この経産省のレポート</a>を読むと、マスコミが伝えない事実が載っています。
1. 日本の貯蓄率はアメリカ以下
2. 日本の会社の労働分配比は非常に高い
3. 日本の輸出依存度はそれ程高くない
4. 日本の労働生産性はそれ程高くない
官僚は政治家やマスコミよりはまともと言うことですね。
2010-07-21 Wed 19:09 | URL | 中村 [ 編集]
私立大の年間予算に占める補助金の割合はどのくらいなのでしょうか?
2010-07-22 Thu 02:42 | URL | WB [ 編集]
大学の名前と収支報告とやるとたくさん出てきますが、
概ね学生からの収入の2割のようです。全体では 7-8% 。
2010-07-22 Thu 11:11 | URL | 中村 [ 編集]
来年度から運営費8%減という噂もあって、だいぶ騒いでますね。
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/info/statement.html
http://www.kek.jp/ja/news/press/2010/Kokudaikyou.html
2010-07-22 Thu 12:11 | URL | [ 編集]
面白いレポートを紹介してくださってありがとうございます。
常々感じていますが、官僚はマスコミよりもよっぽどマトモと私も思います。
私はあきらめずに怒り続けます。
2010-07-22 Thu 17:21 | URL | ExtraDimension [ 編集]
> 来年度から運営費8%減という噂もあって、だいぶ騒いでますね。
> http://www.s.u-tokyo.ac.jp/info/statement.html
> http://www.kek.jp/ja/news/press/2010/Kokudaikyou.html

シーリング復活をこういうとこに使ってきますか…。
無駄削減という錦の御旗のもとに、実際にやるのは未来への投資削減。
そしてその金をバラまく。
何が何でも今までのツケを将来の世代に背負わせようという
首尾一貫した政策ですか。その政策を支持する人が多いから
与党なわけで、日本人というのは恐ろしいです。

2010-07-22 Thu 17:28 | URL | ExtraDimension [ 編集]
私は中学時代から科学者になりたくて、公務員研究職を希望して進学しました。公務員なら、小柄で化粧が苦手な女性でも中身で評価され、虐められずに好きな科学的職務に専念できるのではないかと期待しました。修士入学時に、指定研究職に就ければ返さなくて良いと謳う日本育英会の第一種奨学金には予約採用されていました。進学は周りを見ても当然で、民間への就職活動はしていませんでした。就職氷河期だったからではなく、逆に、成績も東大の学内で上位1割、適性があると思ったから進学したのです。物理学科の同学年にも、JMOに予選合格していたのは他に3人くらいしかいませんでした(女性ではもちろん私だけ)。

小柴先生のノーベル賞受賞時に素粒子物理でTAをしていたのも私だけなので、まさか科学者になれないとは思いませんでしたが、2004年、学位取得時には、任期つきでない研究職の公募がひとつもありませんでした。学科長の子弟など、博士1年から有給研究員に採用された人や、海外留学させてもらった人も多いですが、私は「白痴」といわれていちど退学させられました。試験ではなく推薦状が必須でした。

国立大学の名を借りた無限連鎖講に騙された気分です。長年アカハラを受けたため、職務経験はないとされ、民間就職してからも、社内の同年齢平均より給与は安いです。従って大学卒業時から数えた平均年収は、今も半額未満です。私を「嫁き遅れ」「ブス」「高額のアルバイトをしていたのだろう」などと言いふらした既婚男性の方が、年下でも手当てを多く受けています。黙って我慢していた女性ほど学歴で逆差別を受けることになり、やりきれません。

付き合っていた人はいますが、放射線実験の時は妊娠も怖くて、収入のない学生では結婚なんて怖くてできませんでした。まあ、父が8人兄弟姉妹なのであまりするつもりもなかったのですが、アカハラについて学内で発表しようとしたことをきっかけに一方的によくわからない悪口を言われてふられ、返事も来なくなりました。

私の批判は直接自分が被害を受けた事実しか言っていませんが、平気で他人の容姿や被害事実を種に嘲笑するような人が優遇されるのはおかしいです。今頃女性優先の公募があっても私は既に研究の世界を離れて5年経ちますから論文など書いていません。「女性だから業績がないのに採用された」等と言いふらされるだけでしょう。

大学でも、就職してからも、なぜ、2001年から「超対称性理論など信頼できない。LHC実験で超対称粒子など見つからないだろう」と科学的に正しい予言をした私だけ、こんなひどい差別を受けなければならないのでしょうか。ガリレオ・ガリレイを弾圧するようなことが現代も日本で行われています。ぞっとします。

公務員が嫌なのではなく、ひどい差別待遇をした教授たちや、「白痴」と言った事務職員が偶々公務員で、私は直接被害を受け、未だに解決していないため、恨めしいのです。公務員には信頼できる知人等もいると思うので、公益通報もしています。深刻な事実を含む公益目的のブログなのに、侮辱的にからかうコメントが多くて悲しくなります。このブログ運営者も、私の公開質問した学術的内容に関してはまともに答えていませんね。誤魔化して、研究費だけ勝ち取ろうとしているのでしょうか?

ところで、少子化でWikipediaなども充実してきたのですから、既知の基礎科学を教える大学教員は減らしても良いと思います。同じことを繰り返し話すのが無駄に思えてしまいます。昔から図書館の本で自習することにより学んだ知識が多かったので、講義は放送大学でも良いと思います。これなら大幅に減らせそうです。むしろ、小中学校時代に、実験を含む理科教育を多数の先生で行ったほうが、効率的では。何が起きるか予想するための知識がない子どもの安全は、生身の大人が見ていなければ守れませんし、ビデオより本物のほうが興味を引けます。大学生以後の理論面は、基礎があれば自分で学ぶことができるのですから。

ですから、わがままなようですが私は、研究職は希望しても、大学教員は希望していないのです。身長153cmなだけで学生に馬鹿にされそうですし、教養の数学教員なんて退屈で発狂しそうです。新しい科学的事実の発見に貢献するような仕事が良いです。素粒子理論というのは、とても奥深く難しいイメージがあったので、実験と両立する自信がなくて理論を希望してしまいました。しかし今思いなおすと、学術書なら大学にいかなくても読めるので、大学では、最先端の装置を扱う実験をやったほうが良かったと後悔しています。世界で2つしかないとかいうμSR実験用の装置を触らせていただいたのは貴重な思い出ですが、3日間だけでした。理想的には、国立研究所の研究員になりたかったです。しかし法人化で、公募自体がなくなってしまいました。

そもそも、科学者に憧れたのはつくばの科学万博以来です。あの跡地にはたくさん研究所ができたそうですが、私の訪問したことのないところがほとんどです。できれば全部見て回りたかった気がします。有益な実験技術を身につける機会も、アカハラのために奪われました。詐欺理論のために失ったものは大きいです。

ワインバーグが好きですが、超対称性理論には当初から賛成したことがなく、途中で主張を変えて裏切ったわけではありません。まったく実証されていないこの理論を研究した人は、後輩でも、博士課程在学中から私の20倍の給与をもらい、先に学位取得して、順調に就職して行きました。これが競争的資金の遣い道です。実力って何でしょう。脅迫力や権力?今の私は、被害感情で集中力も奪われています。

ノーベル賞や紫綬褒章、学士院賞の一部は、私や横田雪瑛さんの、血と汗と涙でできているのではないでしょうか。「相手を敵味方に分けて一方を悪人に仕立て、自分たちだけ得をする」のが定義ならば、友人なんて要りません。詐欺理論で国民の財産に危害を加え、学生を留年させた結果自殺を招いたのは教員本人の資質の問題なのに、公務員だった場合は国を訴えなければならないのもおかしな話です。
2010-07-26 Mon 00:38 | URL | nisimiyu(西川 美幸) [ 編集]

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