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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

ステライル・ニュートリノ

もうだいぶ前(10日前くらい?)になりますが、アメリカのフェルミラボというところでニュートリノ振動の実験をやってるグループ(MiniBooneという実験グループ)が、反ミューオンニュートリノが反電子ニュートリノに振動しているっぽいという結果を論文で発表しました。その筋の人に聞くと、1ヶ月くらい前の国際会議でその結果を発表してちょっとした話題になっているとか。この実験グループは、以前に、少ない統計を使った解析でもなにやら怪しいという結果を報告していたのですが、今回は統計を増やして、どうも振動してるっぽいという結果になったというわけです。

この実験グループは、コロンビア大学とロスアラモス研究所が中心となってる実験グループで、昔ロスアラモスの実験(LSNDという実験)で同じような結果が出たのですが、それが本当にニュートリノ振動なのかどうか確定できず、その結果の追試という意味合いを持った実験です。が、スーパーカミオカンデをはじめとする幾つかのニュートリノ振動実験の結果で、3種類あるニュートリノの振動パターン(あるニュートリノが別のニュートリノにどういう確率で振動するか)がほぼ確定してしまっていて、ロスアラモスの実験結果というのは、それ以外の実験結果と矛盾してしまうんですね。

ただし、ニュートリノが3種類ではなく、ステライル(sterile)ニュートリノと呼ばれる新しいタイプのニュートリノを導入することで、ロスアラモスの結果を説明できるかも、ということになっています。いや、そういう仮説があるというだけで、まあ正直、LSNDをやってた人、この結果をネタにしてる理論屋以外はあまり信じられてはいないのですが、とにかく、そういう結果があるからには白黒つけなくてはならないということ(たぶん)MiniBooneは始められました。

ちなみに、sterileというのは「不毛の」という意味で、私たちの知っているいかなる素粒子とも相互作用をしないという意味で使われています。質量がないとニュートリノ振動しないので質量は持ってる、つまり、重力は作用しますが、それ以外の3つの相互作用はしないというのがステライルニュートリノの特徴です。

で、最新のMiniBooneの結果に戻りますが、振動を確認したのは反ニュートリノだけでニュートリノの振動は確認されていません。ということは、もし今回の結果が正しいとすると、ステライルニュートリノという非常に怪しい素粒子が必要なだけではなく、おもいっきりCPも破れていないとなりません。本当だとするとエラいことなわけです。

しかし、その論文なり、国際会議での発表なりを見ると、このデータからそういう結論をよく導いたな、という感想を持つ人が多いのではないかと思います。確かに何か怪しげなものはあるけど、背景事象と呼ばれる信号に似てはいるが信号ではないノイズを本当に理解できてるのか疑わしく、「うーん」とだまりこんでしまいたくなるような結果です。

もうだいぶ前のことになりますが、PAMELAという宇宙線の量を観測する実験グループが陽電子過剰を報告し、ダークマターの間接観測かと話題になったことがありますが、それと似た印象を受けてしまいます。どう解釈したらいいのかハッキリしない結果を、解釈の仕方では非常にインパクトが大きいから、という理由で発表してるように感じてしまうのです。で、こういう怪しげな論文(結果)というのはネタに飢えてる理論屋の格好の餌で、その論文の結果をもとに色々な仮説を作り論文数を稼ぐ。一方、元ネタとなった怪しい論文というのは引用数が莫大な数になるのでインパクトファクターの大きい(=良い論文とみなされる)論文となる。という図式がどうもすっきりしません。

おっと、話はだいぶ脱線してしまいましたが、ステライルニュートリノについてその存在を頭から否定しようとしているわけではありません。自分たちの定式から外れた現象だからといって、その可能性を排除していたのでは新しい発見はありませんから。宇宙の観測、たとえば超新星の爆発を説明するにもステライルニュートリノが必要だと言ってる研究者もいるらしく(爆発した際の星のかけらの運動が今ひとつ予言と合わないのですが、それがステライルニュートリノがいると上手く説明できるとかなんとか。私には全く理解できてませんが)、各方面でステライルニュートリノの存在を確認したいと考えてる人もいるようです。

というわけで、それなりに注目される結果なわけですが、新聞報道が全くないのは共同実験グループに日本の大学、研究所が全く入っていないからですかね。日本人はニュートリノ大好き(?)で、わりとどーでもいい結果でもよく新聞に載りますが、今回のはかなりインパクトがあるにもかかわらず全く報道されていなかったような…。

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