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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

加速器はナマモノ

LHCの今後の予定はとりあえず来週450GeV+450GeVで衝突させることになったようです。LHCに陽子ビームが入射される時点で450GeVなので、つまり全然加速はさせずに、とにかく衝突させるわけです。加速器側にとっては、ビームを思ったように絞ることができるか(粒子ビームを絞るというのは、イメージ的には光学と同じと思って下さい。光の場合はレンズで軌道を調整しますが、荷電粒子ビームの場合は磁場を使って軌道を調整します。)のテストなんでしょうね。検出器側としては、エネルギーは低くてもいいので、とにかくビーム衝突のデータを見たい、という強い要望があります。ヒッグスとか超対称性とか面白い物理探索はもちろんできませんが、検出器が予想通り動いているかどうかは確認できますし、検出器を調整していくにも、ビーム衝突データがあると大助かりだからです。

来週衝突に成功したら、次のステップ(というのが何か私は具体的には知りません。エネルギーを上げるための磁石のトレーニング?)に向けてしばらくビームは無しで加速器側の調整を行う予定になっています。
…なんてことを書いていたら今メールが来て、加速器の電源の一部の故障で、来週中頃まではビームがないようです。

こういうことが加速器では日常の出来事です。特に実験の開始当初は、こういうことの繰り返しです。そもそも全長27kmにわたる巨大加速器を数ミクロンの精度で設置し、しかも、大部分に超伝導磁石が使われているのですから、全てのパーツが故障無く動くことが奇跡みたいなものです。低温技術を初めとする技術力の結晶でその奇跡を実現させているわけです。そういう精密かつ超巨大な加速器ですから、ビームの振る舞い全てを完全に把握するのは非常に難しいです。よく言われるのは「加速器はナマモノ」なんですね。あまりの複雑系で、全ての粒子の動きをシミュレートすることなんてもちろんできませんし、仮にシミュレートしようとしても、加速器の温度、圧力、その他を高い精度で把握することは難しいので、人間にとってビームをコントロールするというのは、ナマモノを取り扱ってるようなものなのです。昨日のビームの軌道の安定点と今日の安定点は違う、なんてことが普通なわけです。同じセットアップを使ってるはずでもそういうことが起こるのです。

今の実験はあまりにも巨大プロジェクトなため、私たち実験家が加速器のコントロールルームに詰めて意見を言うとか、話を聞くということは全くありません。しかし、私が昔KEKで参加していたB中間子に関する実験では、私のような実験家が加速器のコントロールルームに居座り、加速器の人と一緒に加速器の振る舞いを見るということが行われていました。その時、加速器は本当にナマモノだと思ったものです。


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