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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

同位体効果

午前中は研究室のミーティング。午後は昼飯後、生協の本屋を10分ほど徘徊。私たちの大学の生協の本屋では毎月第3火曜日は文庫本あるいは新書を3冊以上買うと15%オフというセールをやっているので、それを狙って本を買いに行きました。

その後は、研究室の学部4年生との実験。というか、今回は実験のために不可欠なコンピュータの使い方を簡単に説明・実践しました。高エネルギー実験では数多くの事象を集めるために、データの処理が大変で、コンピュータの助けなくして実験をやることは不可能です。にもかかわらず、そのための知識を蓄えられるような授業は大学には皆無なので、研究室に入ってから独学か、先輩から技を盗むか、教員から教えてもらうかして、スキルアップするしかありません。そういうわけで、今回はコンピュータのプチ講義でした。

4年生へのプチ講義を終えた後は、書類書きに、土曜日のアウトリーチの段取りとその準備。そして、その後にATLASグループのミーティング。修士課程の1年生がとある理由により研究室を去ることになったので、最新のラインナップは、修士課程は1年生が1人、2年生が2人。博士課程は2年生が2人という布陣になりました。メンバーが減ったのは残念ですが、まあ仕方ありません。来年度以降にまた多くの新人が入ることを願って、今のメンバーで頑張っていくしかありません。

と、今日1日を振り返りましたが、私にとって今日一番のニュースは、はやぶさ帰還でもワールドカップでの日本の勝利でもありません。同位体効果というものを知って驚きました。私はもともと化学が大嫌いで、化学の知識は高校生に余裕で負けます。なので、化学に関しては色々知らないことがあって、逆に、自分の中では新鮮な驚きを得ることが時々あるのですが、今日の驚きもかなりのものでした。

同位体効果というのは、同じ元素でも中性子数の違う同位体では物理的・化学的な性質が違うことで、それ自体には全く驚きはありません。私たちの研究分野だと、放射性同位体が安定同位体と異なる性質を持ってるということは、あまりにも当たり前ですから。ところが、今日の同位体効果は放射性同位体ではなく、安定同位体の話なのです。

自然界の炭素は、主成分のC12(陽子6個+中性子6個)の他に、安定同位体であるC13(陽子6個+中性子7個)と、放射性同位体であるC14(陽子6個+中性子7個)があります。で、私のような化学素人が考えると、C14は放射性同位体だから他の2つとは明らかに違う性質を持っているけれど、C12とC13に違いはないだろうと思ってしまうわけです。ところが、光合成をして植物が二酸化炭素を吸収、その後、植物内に残る炭素の割合がC12とC13では違うのだそうです。びっくりです。C12とC13の違いはと言えば、中性子が1個少ないか多いかで、質量が微妙に違うくらいです。光合成は化学反応で、化学反応の主役は原子中の電荷(=電子数とその配位)ですから、電荷が同じで質量がわずかに違うだけのC12とC13で、化学反応率に違いがあるとは思ってもみませんでした。

光合成の例だと、光合成反応回路にはC3とC4回路と2つがあって、そのうち特にC3回路ではこの同位体効果、すなわちC12とC13での植物内での炭素固定効率の違い、が顕著なんだそうです。いやー、驚きました。違いは質量だけですから、きっと、分子を構成する原子の質量のわずかな違いでポテンシャルが変わり、結合エネルギーが変わるということなんでしょうけど…そんなことが化学的に起こってるとは考えたこと全くありませんでした。

ちなみに、こういった(放射性ではない)同位体効果は化学では一般的らしく、それを応用した研究、例えば食物連鎖の研究などに使われているようです。マーカーとして使われるわけですね。

こういう驚きを得られるのは、私が化学が大嫌いだったおかげで(?)、新鮮な驚きが得られるという意味では、勉強しないことにも意味がありますね。ははは。

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この記事のコメント

固体物理の分野でも(放射性ではない)同位体効果はあります。特にBCS理論で説明できる超伝導体は、phononが引力を担うので、超伝導転移温度に強い同位体依存性があります。
2010-06-16 Wed 10:26 | URL | rigarash [ 編集]
> 固体物理の分野でも(放射性ではない)同位体効果はあります。特にBCS理論で説明できる超伝導体は、phononが引力を担うので、超伝導転移温度に強い同位体依存性があります。

そういうものなのですか。今度勉強してみます。
教えてくださってありがとうございます。
2010-06-16 Wed 11:05 | URL | ExtraDimension [ 編集]
1993年ごろ、ブルーバックスでその事実については知っていましたが、
物理学科で応用技術について学ぶ機会が少なかったのは残念です。

実験も幅広くやりたかったなあ。
「理論なら自宅で無料で本や論文を読むことも可能なので、大学では、
多額の研究費を使える実験系に行ったほうが貴重な経験をできたのでは」
などと思っています。まあ
「大学では化学が物理に、物理が数学に、数学が哲学になる」
とは教養時代から言われていました。

大学院の7年間、詐欺理論のために、ほかの有用な分野を学ぶ機会も
奪われる結果となったことが悔しくてなりません。
2010-06-17 Thu 07:19 | URL | nisimiyu [ 編集]

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