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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

誤差

明日の研究室ミーティングで論文紹介の担当に当たっているため、昨日と今日は仕事の合間を縫って論文読み+スライド作成に時間を費やしました。

紹介する論文は、デフォルトはもちろん高エネルギー物理の論文なのですが、Y教授の方針(?)で全くの別分野の論文でも構いません。まあ、そうは言っても別分野の論文はチンプンカンプンなので、比較的内容が近い分野、例えば宇宙関係などがよく紹介されます。ですが、私が明日やるのはかなり異業種。流石に専門的な論文では歯が立たないので、物理学会誌に紹介された比較的緩い記事なのですが、内容以外に高エネルギー屋には目についてしまうところがあります。それが誤差の取り扱いです。

誤差には大きく分けて2つあります。

一つは統計誤差。例えば、コイントスを10回したら平均では表と裏がそれぞれ5回づつのはずですが、たまたま6回4回になったり、7回3回になったり…と、平均からずれることもあります。このように、たまたま平均からずれることもあるわけで、そのずれのことを統計誤差(あるいは偶然誤差とも呼ぶのか?)といいます。

ちなみに、実験はコインがイカサマコインかそうでないまっとうなコインかを識別する作業に似ています。10回投げて表が7回、裏が3回ではそのコインがイカサマ用なのかどうかは判断に苦しみますが、10,000回投げて表が7,000回、裏が3,000回ならイカサマコインだと判断できます。素粒子実験で、例えばヒッグスを探すとします。ヒッグスが生成された時に検出器に残す信号と、ヒッグス以外の粒子が生成された時に検出器に残す信号(=バックグラウンドと呼びます)は似ています。そこで、10個の事象からよりも、10,000個の事象からのほうがより正確にヒッグスなのかそうでないのかを判断することができるというわけです。もちろん、ヒッグスの信号がバックグラウンドと全然似ていなければ統計誤差を考える必要はありませんが、LHCでヒッグスを探す場合には統計誤差が重要になります。

もう一つは系統誤差。これは測定器の測定精度などから生じる真の値からのズレのことです。例えば、1mm刻みのモノサシで身長を測ろうと思っても、1/1000mmの精度で測定することはできませんよね。本当の身長に比べて数分の1mm程度のズレがあってしかるべきです。あるいは、同じ人間の身長を測るにしても姿勢やその他の測定のやり方で真の値から微妙にズレてしまうこともあります。こういった諸々を系統誤差といいます。統計誤差は偶然の産物なのである意味人間にはコントロールのしようがありません。唯一の方法は、測定回数を増やすことだけです。一方、系統誤差は測定精度だったりするので、頑張って良い検出器を作れば小さくすることのできることが多い誤差です(原理的には)。

以上の誤差を高エネルギー物理屋は非常に気にするんですね。他の研究分野ではそんなことを考える以前に目でみたら一目瞭然だったりするからなのか(信号とバックグラウンドが全然似てないということを意味します)、誤差に対する注意度が全然違います。完全に職業病ですが、新聞やテレビでグラフや表が出てくると、誤差が書いてないのでイライラ、あるいは一人ツッコミを入れてしまいます。10±1と10±10では全然意味が違うわけですね。前者は明らかに(確率的に)0ではありませんが、後者は0の確率が非常に高いわけです。なので単に「10」と言われると、どう解釈していいのか悩んで…しまうことはありませんが、テンションガタ落ちなのは間違いありません。

で、話を戻すと、今取り組んでいる異分野の記事。数値に誤差が全くない時点で内容を疑ってしまうというのは、きっと高エネルギー物理屋の悪い癖なんでしょうね。ちなみに、こういう態度は観測者によるバイアスなので、実験をするときには、こういうバイアスを無くす努力をしないとなりません。いや、でもなー、やっぱり誤差は付けてくれないと…。

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