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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

酸欠

昨日は安全講習とテストを受けたという話を書きました。色々ある安全講習の中で、昨日受けたのはATLAS実験ホールで作業するためのものでした。

安全というと、色々なポイントがあります。例えば、一般的に重点が置かれるのは火事のときの避難方法、あるいは火事を起こさないための火の用心だったり、実験機材が大きな電力を使っていれば感電しないための注意、などなど色々あります。あとは、高いところで作業するときの注意や、素粒子実験だったら放射線に対する安全の理解というも定番です。

というように色々、安全に実験をするためのポイントがあるわけですが、ATLAS実験ホールでの作業で強調されているのは酸欠にならないための注意です。ATLASだけでなくLHCは地下100m程度にあるので、実験ホールおよび加速器のトンネルは当然のことながら密閉空間です。それだけだったら酸欠にそれほど注意する必要はないかもしれませんが、加速器は、ご存知のように、超伝導を保つために大量の液体ヘリウム(と窒素)を使って冷やされています。また、検出器には大量の液体アルゴンを使っているものもあります。なので、それらが事故で漏れ出し気化すると、密閉空間の酸素濃度がガツンと下がってしまいます。

空気には20%強の酸素がありますが、その濃度が少し下がっただけで人間にはトラブルが発生します。2,3%下がっただけで酸素欠乏症になるらしいです(昨日の講習の受け売り)。ついでに書くと、肺の中の毛細血管を通じて酸素の交換が行われるわけですが、毛細血管から出てくるガスの酸素濃度は約16%だそうです。濃度の濃い方から薄い方へガスの中に溶け込んでる成分は移動しますから、普通の空気の酸素濃度は20%を超えているために、酸素が毛細血管に取り込まれることになります。ということは、逆に、私たちが吸う空気の酸素濃度が16%未満になると毛細血管中の酸素は放出されてしまうわけで、16%未満の空気は吸えば吸うほど血管中の酸素を放出してしまうことになります。

ということで、地下100mの密閉空間にアルゴンやらヘリウムが漏れ出したら、人間にとっては酸欠の危険性大なのです。酸素濃度の探知機とアラームが色々な場所に取り付けられていますし、講習では、以上の酸欠の危険性と、避難方法などに重点が置かれていたわけです。アルゴンは空気より重いから、もしアルゴンが漏れ出した付近を通って逃げないとならない場合はなるべく背伸びして歩けとか、逆にヘリウムの場合は低い姿勢で歩けとか、そういったことが懇切丁寧に説明されます。

ちなみに、学部生の学生実験などでもドライアイスを使うことがあるかと思いますが、実はあれも油断すると危険です。密閉された空間に気化した二酸化炭素がたまると酸欠の危険があります。水をかけて遊んで白いガスが出るのを見て喜んでるくらいならいいですが、密閉した容器の底などには二酸化炭素がたまっており、酸素濃度が低くなっているので、注意が必要です。学生さんなどは(私も?)調子にのって遊びますが、あまり無茶はしないようにしましょう。

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この記事のコメント

液体ヘリウムの近くでは酸素が冷やされて溜まっているので、むしろ爆発の危険がある、ということは、ないのでしょうか?

ヘリウムは「高いので回収する」とも聞きますが、実際どのくらい使われているのでしょうか。
2010-05-23 Sun 11:03 | URL | nisimiyu [ 編集]

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