ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

ゆで卵の黄身

早く家に帰って来たので、息子とテレビを見ました。NHKが子供向け(?)にやっている科学番組で、今日のお題は黄身が真ん中にあるゆで卵を作るにはどうしたらいいか、でした。

卵を転がしながらゆでればいいという話は聞いたことがありましたし、単純に考えれば、黄身と白身で重さが違うのだろうから(逆に、もし違わなかったら偏りませんよね)白身が固まりつつあるときに回転させておけば黄身が真ん中に来るはずです。でも、そんな単純な話ではないのかもしれないと期待に胸を膨らませ、過剰演出に耐えつつ番組を見続けたのですが…結論は単純に考えた通り。肩透かしをくらった気分でした。

ただ、自戒の念を持って今こうしてエントリーを書いているのですが、そういう当たり前のこともきっちりと実験するというのは大切かもしれません。実験というのは、理論的な仮説を検証しどの仮説が正しいのか判断したり、ある変数を測定することで新たな知見を得ようと行うわけです。ただ、素粒子物理学というのは高度に体系化されて、現在のところ、標準模型という理論体系であらゆる実験事実がほぼ矛盾無く説明されてしまっています。自分が研究を始めてから今まで、この標準模型の呪縛から逃れられていない、というのが高エネルギー物理学の趨勢です。

そのせいなのか、この業界にいる多くの人間が、なんらかの理論的仮説の検証実験ばかりを提案している気がします。それに比べて、例えば、近隣の分野である宇宙線などは、とりあえず測ってみる的な実験が多くてときたま羨ましくなることがあります。私は素粒子物理が好きなので、そういう実験の物理が素粒子物理学ほど魅力的だとは思わないのですが、実験屋の観点からは魅力を感じることがあるんですね。

今日の番組では、理屈とか原理なんて考えないで、とりあえず番組に出演してる女子高生(?)が色々試してみるのですが、頭を空っぽにしてとりあえず手を動かしてみるというのは、重大な発見(=理論的に考えられていなかった現象)をするには大切かもしれないなぁ、なんてことを感じてしまいました。

ただ、そういう実験を行えないのは標準模型の呪縛だけではなく、科研費に代表される外部資金を獲得するための制度によるところが大きいのかもしれません。私たちの分野に限った話ではありませんが、研究計画を提案して予算を獲得しようと思ったら、こんな面白いことがあって、こういうことをやればこういうことがわかる、あるいはこういうことができるようになる、と申請書を書かなければなりません。人間なんてアホなんだから、理論によるバイアスを忘れてとりあえず真摯に自然と向き合ってみます、なんていう実験計画は採用されませんから、自然と面白そうな仮説を検証するための実験が増えてしまうんでしょうね。

そういう意味では科研費には萌芽研究という種目があって、成果が必ずしも期待できなくてもいいから、一発新しいことをやってみるのを助成するというお題目なのですが、本当にそういう機能を果たしているなら大切な種目ですね。

…ゆで卵の黄身から、全く関係ない話題になりましたね。ははは。


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この記事のコメント

はじめまして

黄身のない卵で検索していたらヒットしました。

興味がある内容でしたのでコメントさせてもらいます。

新しい発見は失敗から生まれる事が多いそうです。

電子レンジが生まれた経緯はレーダの実験中傍に置き忘れた食べかけのチョコバーが溶けた事からだそうです。

実用レベルの応答速度が速い液晶が生まれた経緯も同様で、液晶の素材を混ぜ合わせる配合を間違えた事からだそうです。

ですから検証実験でも同様に失敗から何かが発見できても不思議ではないのでは?
(シミュレーションの数値を一桁間違えるとか)

夢がないと愉しくないですから、、、

2010-11-21 Sun 05:40 | URL | あき [ 編集]
コメントありがとうございます。

> ですから検証実験でも同様に失敗から何かが発見できても不思議ではないのでは?
> (シミュレーションの数値を一桁間違えるとか)

技術開発ではそういうことは多いでしょうね。
あきさんに挙げていただいた例も全て技術開発ですし、
今年のノーベル化学賞なんかも典型的な技術開発です。
ですので、技術開発においては、あきさんがおっしゃって
いることに強く同意します。

しかし、科学、とりわけ第1原理からの予言が可能な
素粒子物理学には滅多にそういうことがありません、
残念ながら。
(標準模型が提唱されて40年ほど経ちますが、未だに
標準模型で説明できない現象が見つかっていません。)
もちろん、だからといって新しい原理の発見をあきらめて
いるわけではありません。だからこそLHCのような実験を
やっています。

> 夢がないと愉しくないですから、、、

素粒子物理学というのは最も定式化が進み、
新しい原理を見つけるのが最も難しい科学分野だと
思います。にもかかわらず、素粒子物理学をやってる
人間というのは、桁外れの夢追い人なんだと思います。
2010-11-21 Sun 18:27 | URL | ExtraDimension [ 編集]
私は、既に確立している理論であったとしても、普遍的な科学的事実である限りそれを深く理解することには、古代の神話的宇宙観よりずっと多くの価値があると思って進学しました。多様な素粒子実験の結果を、たった18個のパラメータから精密に予言できるのは、標準理論だけです。全ての物理現象の基礎理論なので、何にでも応用できるでしょう。

実験と合いもしない身勝手な理論を研究したがる人のために、なぜアカハラ被害者の私が、さらに強制的に加害者に税金を貢がされなければならないのでしょうか?その人たちが私より優れた仕事をしたとも思えないのに。私の論文では、少なくとも、ニュートリノの質量が小さい理由や、電弱統一の必然性は判ります(URL参照)。インパクトファクターなんて、排他的な詐欺集団の間で互いに引用していれば、たとえ実験でひとつも見つかっていなくても簡単に上がります。私は多大な被害を受けました。中学3年時に量子力学については独習して、数式込みで約50頁の自由研究にまとめていました。「研究者としての適性を見る」らしいJMOの予選(答えの数値を書くだけの、読む人によって評価が変わりようのない真偽が明確なテスト)に合格していたのは研究室の元同学年では男性を含めても私だけです。しかし博士号取得は大幅に遅れ、科学者になることすら許されません。女性限定の公募も、指導教官などの推薦書が必要で、研究職に一度も採用されたことのない私の被害回復にはなりません。

超対称性理論の研究を数百万円の税金を使ってした人は100人くらいいますから、もしLHC実験で超対称性粒子がみつからなければ、私に一人20万円ずつを弁償してもらいたい。直接関与していなくても、同じ物理の専門家なのに、この30年前からひとつも見つかっていない超対称性理論には批判もせず、代りに院試の出題ミスを指摘した私には退学させたり、論文を問答無用で大幅削除させたり、長年無視した教授達(プロフィール参照)は同罪(未必の故意)ではないでしょうか?私は理科I類の中でも上位1割の成績でしたから、他の実用的な分野に進学したり、大卒後すぐに就職していれば7年間で2000万円くらいは稼げたはずです。2度目の修士1年のときからTAには採用されていましたが、誠意のない教授達は未だにアカハラの事実すら認めようとしません。失った年月は取り戻せません。

「サイレント・ネイビー」の著者も豊田亨死刑囚の修士論文を読んだのか判りませんが、「夢のある研究をできない分野だからカルトに入信したのだ」などという理屈は正常な科学者の価値観と思えません。この論文では、標準理論については殆ど言及していませんでした。よく知らなかったのでは。「税金を使って詐欺のような研究をする人だけが科学者になれる」今の素粒子論業界こそ不健全だと思います。正しい科学的知識を与えもせず、当然の結果として誤解した人や、詐欺に気づいて批判した人を、偉そうに死なせたり愚か者扱いするのは悪質です。私は、自分の書いた博士論文元原稿の半分程度の内容を、自分では恐らく物理的に正しいと思いますが、他の書物で読んだり、教わったことはありません。なぜ削除させられたのか判りません。学部時代には、時空は曲がっているのだと信じている人が多かったと思います。学生にわざと真実を教えず、惑わせた結果、留年や自殺に至らせるような教授は、職務上当然期待されることに応える誠意に欠けていると思わざるを得ません。

一人でも多くの若者が、早く誤解なく現在までに人類の到達し得た科学的知識を習得し、また、人類を幸福にするような研究に貢献することができますように!
2010-11-22 Mon 12:50 | URL | nisimiyu(西川美幸) [ 編集]

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