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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

電子ボルト

LHCで3.5+3.5TeVでの陽子陽子衝突に成功したという話を、多くのニュースで見かけます。これだけ報道されると、ちょっとでも故障したらまた騒がれるのではないかと心配な一方、多くの人に知ってもらえるという意味でやっぱり嬉しいものです。

ところで、新聞等で7TeV、すなわち7兆電子ボルトのエネルギーに到達したと報道されていますが、一般の方は、この「7兆電子ボルト」という表現をどう感じるのでしょうね。7兆ってあるからとりあえず凄いって思うのでしょうか。まあ、7兆はいいとしても電子ボルトという単位でピンとくる人はきっといませんよね。そこで、その単位を説明してみます。

一言でいうと、電荷1を持った粒子の電位を1ボルト上げるエネルギー、ということになります。これじゃあ、説明というより定義ですが、ボルトの単位がJ/C(ジュール/クーロン)だということを理解してる方なら、電子ボルトでちゃんとジュールという単位になってることがわかるかと思います。電子は1.6x10^{-19}クーロンですから、1電子ボルトは1.6x10^{-19}ジュール(またはクーロン・ボルト)という日常生活の感覚では非常に小さなエネルギーです。

単位について高校生の物理を思い出して説明すると、エネルギー(あるいは仕事)は「力」x「距離」ですよね。荷電粒子に働く力はF=qEという式を思い出してもらうとわかるように、「電荷」x「電場」です。ということは、エネルギーは「力」x「距離」=「電荷」x「電場」x「距離」です。さらに電場の単位を考えると、ある距離離れた2地点での電位差(単位はボルト)正確には電位の位置微分、なので、電場の単位は「電位」÷「距離」になります。ということは、もとから整理すると
エネルギー=「力」x「距離」
     =「電荷」x「電場」x「距離」
     =「電荷」x「電位」÷「距離」x「距離」
     =「電荷」x「電位」
となって、単位がクーロン・ボルトになっていることがわかります。つまり、ジュール=クーロン・ボルトとなっています。

では、7兆電子ボルトがどれくらいかというと、1電子ボルトが1.6x10^{-19}でしたから、7x10^{12}x1.6x10^{-19}=1.1x10^{-6}ジュール、つまり、約100万分の1ジュールです。その辺を飛んでる虫の重さを1グラム、速度を1m/sとして運動エネルギーを計算すると5x10^{-4}ジュール。とういことで7兆電子ボルトのエネルギーって、その辺の虫の運動エネルギーの500分の1にしかなりません。こう書くと全然凄くない感じがしちゃいますね…。

でも、虫を構成する陽子の数を考えたらどえらいことになります。虫が水みたいなものだと考えると1モル18グラム。よって、1グラムは1/18モルなので、水分子が6x10^{23}/18=3x10^{23}個あることになります。水分子1個に陽子の数は10個、中性子の数は8個あるので、核子という意味では虫は18x3x10^{23}個=5x10^{24}個の陽子、あるいは中性子を持っています。ということは、陽子あるいは中性子1個あたりのエネルギーに直すと虫の場合、5x10^{-4}/(5x10^{24})=10^{-28}ジュールにしかなりません。それに比べて7兆電子ボルト(=10^{-6}ジュール)がいかに大きいかわかっていただけるかと(?)思います。

さらに、LHCで何が凄いって7兆電子ボルトというエネルギーよりも、加速器に蓄えられているエネルギーの総量が凄いです。今は1個の陽子が3.5兆電子ボルトですが、その陽子が片方のビームにつき10^{10}個くらい今は加速器内にあります。最終的にはそれぞれのビームに3x10^{14}(だったかな?)個のビームが蓄積される予定です。ビームのエネルギーもそれぞれ7兆電子ボルトまで増加される予定なので、ビームあたりのエネルギー総量は10^{-6}ジュールx3x10^{14}=3x10^{8}ジュールというとんでもないエネルギーになります。よく使われる比喩では、航空母艦が最大戦速で航行してるとき、あるいは大型ジェット旅客機の発着時のエネルギーに相当します。なので、加速器の一部が故障して陽子ビームがどこかにぶつかれば悲惨な事故になってしまうのは当然だったりします。というわけで、故障しても、装置が壊れないようなプロテクションシステムというのがLHCでは本当に大切なんですね。

(いい加減な計算なので、どっか違ってるかもしれません。数字をあまり真面目に捉えないでください。あくまで概算。目安と考えてください。)


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