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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

物理学会1日目と2日目

一昨日から学会に来ています。まず、岡山大学のキャンパスの広さに驚きました。面積そのものが驚くほどということはないのかもしれませんが、キャンパスは住宅地にあるんですね。何にもないところならいざしらず、住宅地にこれだけのキャンパスを確保しているのは凄いです。建物の密度が低く、キャンパス内に芝生があったり、ベンチがあったり、と、いかにも大学のキャンパスという感じで私は非常に気に入りました。

さて、学会はというと、一昨日はKaonをやっている多くの学生が、そして昨日の午前はATLASをやっている博士課程のMくんが、講演を行いました。みんな練習の甲斐があっていい発表だったと思います。特にMくんの場合は私が指導しているので、例のごとく(そうは見えないのかもしれませんが)ドキドキしながら講演を見守っていました。が、そんな心配は不要で、安心感のあるしっかりした発表でした。質疑応答も安心して聞いていられました。

講演内容で興味深かったのは、ブラックホールの直接観測と重力波の検出のセッションでした。強い重力場中での一般相対論の検証という意義があるのですが、天文の方の講演では、天文学をやってる人間に取ってはすでに20世紀中にブラックホールを観測したことになっている、というコメントがあったのが強く印象に残っています。光などを吸い込む見えない天体がある。その天体の質量・密度は、周りの光などを吸い込む速度から、非常に大きいことがわかる。そんな高密度の天体はブラックホール以外にはありえない。だから、ブラックホールを観測したのだ、という主張なんですね。それはそうなのかもしれませんが、物理をやってる人間はそんなこと言いません。直接検証していないのですから、あくまでブラックホール候補のような気がします。そういう天文のロジックでいいなら、我々もすでに色んな未知の粒子を発見してることになってしまいます。

この話で思い出したのは、二酸化炭素と地球の温暖化を結びつける気象学者のロジックです。二酸化炭素の増加と気温の上昇には相関がある(ように見える)。二酸化炭素以外に観測されている気温の上昇を説明できる原因が見当たらない。だから、二酸化炭素の増加が温暖化をもたらしている、というのが気象学者の主張です。

ブラックホールの話も二酸化炭素の話も正しいのかもしれません。けど、どちらも間接証明なんですね。私たち物理学者から見ると。ヒッグスの存在を仮定して、様々な観測量を精密測定すると、ある質量のヒッグスが存在した場合の予言と非常に高い精度で一致したとします。だからといって、ヒッグスを発見したという物理学者はいません。実験で仮説を実証できる物理学と、それが不可能な天文あるいは気象学では、アプローチの仕方が違うのはわかります。私が感じる大きな違和感もその違いに起因しているのだと思うのですが、でもなぁ…自分たちが知ってることだけが全て正しいというのが前提になってるというのは、やはり理解しがたい解釈です。


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この記事のコメント

 昨年度11月におけるクライメートゲート事件をご存知でしょうか?これは、温暖化の権威であるマイケル・マン氏らがホッケースティック曲線のデータなどを捏造していたということが明らかになった事件です。日本では全く騒がれず、多くの人は知らないでしょうがこれによってIPCCの信用は下がっています。
 実際、さまざまな観測事実から、
温暖化が人為的なものかはcontroversialであって、現在のようなCO2犯人説を押し付けるIPCCの姿勢には疑問符がつきます。
2010-03-22 Mon 14:07 | URL | GT5 [ 編集]
クライメートゲート事件については新聞で読む程度には知っています。

一言追加しますと、勘違いなさらないで欲しいのですが、私は温暖化が二酸化炭素の
増加によるものだとする説に、反対でも賛成でもありません。私の知識では
判断不能です。言いたかったのは、我々物理学者と気象学者(あるいは
天文学者)では考え方というか、問題へのアプローチの仕方が違うという
ことで、それに対する驚きを本文に書きました。
2010-03-23 Tue 16:27 | URL | ExtraDimension [ 編集]
いくつか補足します。本文での「天文学者によるアプローチ」と「気象学者、気候学者による気候変動へのアプローチ」は似て非なるものです。私は、これを前提としていたのですが、言葉足らずでした。で、何故前者と後者が全く違うかということなのですが、ある現象に対して、ブラックホール(BH)の存在なしには説明できない(という事実、厳密には現代物理学の範囲内での考察がある)のでBHが存在する(間接的)証明となるとするのが、(本文での)天文学の立場でした。一方、IPCCのやり方は、温暖化の原因はさまざまな要素がありそれらが複雑に絡み合って気候変動を起こすという事実を無視し、一方的にCO2増加のみが温暖化の原因であるとしている点です。(言い換えれば、CO2の増加以外に、温暖化を説明できる根拠がないとIPCCは主張しているのです。)
2010-03-24 Wed 16:02 | URL | GT5 [ 編集]
例えば、温室効果をもたらす気体には、CO2のほかにも、メタン、水蒸気(H2O)などがあります。温室効果としては二酸化炭素よりも水蒸気のほうがはるかに大きいにもかかわらず、IPCCはこれを(故意に)無視しCO2犯人説を公言しています。

また、これだけは言っておきたいのですが、全ての気候学者・気象学者が上記のようなアプローチをとっているわけでもないと思います。もちろん似たようなことは天文学者の方々にも言えるでしょう。
2010-03-24 Wed 16:34 | URL | GT5 [ 編集]

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