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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

コンピュータの耐久性勝負

ウェブのニュースで見た宇宙でコンピュータの耐久性勝負という記事に興味を惹かれました。というのも、この勝負の肝は、私たちの検出器開発の重要な課題同様、放射線耐性なのです。

コンピュータの中枢であるCPUとかメモリーは、結局の所、シリコン半導体上に形成されたスイッチの固まりみたいなものです。集積度が異常に高いわけですが。例えば、回路のある部分に電圧をかけると、その電圧に応じてスイッチがオンになったりオフになったりするものが、無数に組み合わされているような状態を想像してください。半導体の特性を利用して、ある地点での微弱な電位変化でもって、別の地点でのより大きな電流量の調整を行っています。

ところが、放射線がCPUとかメモリーを形成しているシリコン半導体に入射、あるいは通過すると、そこで相互作用を起こし、放射線が持っていた運動エネルギーをシリコン半導体に落としていくことになります。このエネルギーによりシリコン中の原子を電離(プラスの電荷を持った原子核とマイナスの電荷を持った電子に分離)させ、まあ簡単に言うと、微弱な電流が発生して上で説明したスイッチが誤作動を起こします。これにより、例えば、メモリー上のデータは0か1が記憶されているわけですが、その値を書き換えてしまうなどの悪影響が発生します。

宇宙空間には大量の宇宙線が飛んでいるわけで、それらがコンピュータのCPUやメモリーに衝突すると、上で説明したメカニズムでコンピュータを誤作動させます。新聞の記事によると、そういう過酷な放射線環境+温度変化が大きいという宇宙空間でいかにコンピュータが誤作動しないようにするかを競う競争が行われる、ということのようです。

これって、私たち、というか特に私が興味を持っている検出器の開発の重要な課題とピタリと一致するんですね。LHCでは大量の陽子陽子衝突により大量の高エネルギー粒子が発生します。つまり、莫大な放射線を検出器は受けることになります。特に陽子陽子衝突地点に近ければ近いほど放射線をたくさん浴びますから、放射線耐性の高い検出器を作ることが重要な課題の一つで、私が興味を持っている検出器というのはまさにそういう場所で使われる検出器です。しかも、信号を読み出すための電子回路はコンピュータのCPUやメモリーとほぼ同じようなものですし、粒子を検出するセンサー部分もシリコン半導体でできていて、私たちの検出器開発のテーマと本当に似ています。

記事にはもちろん詳しいことは書かれていませんが、どのような技術を使うのか気になります。例えば、わかりやすいのは、一つの回路を小さくすること、すなわち集積度を上げることが重要です。同じ機能をもったスイッチの体積が小さければ、放射線が当たる確率が下がりますから。あるいは、1つの処理をするのに2つの処理系を用意したりするのでしょうか。とまあ、これらはハードウェア的な対策ですが、ソフトウェア的な対策も色々と講じるんでしょうかね。


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この記事のコメント

実用衛星に搭載される機器は、三重冗長が基本になっていますね。
2010-03-03 Wed 23:12 | URL | WB [ 編集]
> 実用衛星に搭載される機器は、三重冗長が基本になっていますね。

なるほど、それくらいは必要でしょうね。
2010-03-04 Thu 17:45 | URL | ExtraDimension [ 編集]

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