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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

Tevatronでのヒッグス探索

過去のヒッグス探索で最も感度が高かったのはCERNで行われていたLEP実験で、114.4GeV以下ではなさそう(統計の言葉で言うと95%信頼度)、というのがその結果です。ちなみに、LEPというのは、今LHCが設置されているトンネルを使った電子・陽電子衝突型加速器のことです。その実験を終わりにして加速器を解体、空いたトンネルに新たに設置されたのがLHCというわけです。115GeV付近に怪しい兆候があったので、LHCの建設開始を延期してLEP実験を延長するかどうかという難しい判断が必要でしたが、結局、LEP実験をやめてLHCの準備に取りかかったという経緯があります。なので、115GeV付近の非常に軽いヒッグスが将来見つかると、LEP実験をやっていて延長を望んでいた人たちの心境は複雑なものになるかもしれません。

LEP実験が終わったのが2000年末。その後、ヒッグス探索はアメリカのフェルミ国立加速器研究所(Fermilab)のTevatron実験に舞台を移します。とは言うものの、私もその実験を昔やっていたわけですが、ルミノシティが上がらないために十分な統計を貯めることができず、標準模型の予言するヒッグスの存在の有無を統計的に判断できるほどの感度はなかなか出ませんでした。それでも、LHCの開始が遅れたこともあって予定よりも長いこと実験を続け、最近では160GeV付近のヒッグスの存在を95%信頼度で否定しています。

昨日のセミナーではTevatronでのヒッグス探索、特に120GeV付近の軽いヒッグス探索に関する現状を話してもらいました。最終結果はもう知っていたわけですが、解析内容について詳しく議論できたので、私にとっては面白いセミナーでした。ただ、学生さんには内容が専門的過ぎて少し難しかったかもしれません。さて、その内容で気になったのは、前にも書いたことある気がしますが、CDF、Dzero(Tevatronには2つの衝突点があり、それぞれの衝突点にCDFとDzeroという2つの検出器、実験グループがあります)ともに150GeV以下の領域ではシミュレーション等を使って求めたバックグラウンドの予測値よりもイベント数が若干上ブレしている点です。どちらの実験グループの上ブレも1σ程度のわずかなものですが、予測値からのブレ方が独立な実験なのに似ているのは興味深いです。信号がそこらへんにあるのか、あるいは両者に共通のシステマティクス、例えば、バックグラウンドの断面積を過小評価している、による効果のどちらかなわけですが、もちろん現状ではどっちなのかわかりません。

彼らの解析ではNeural Network等を使った非常に複雑な手法を用いているので、バックグラウンドをどれくらい正しく理解しているのかを判断しずらい面があります。95%信頼度での信号の除外を目指して解析をチューニングしていて、真にヒッグスを見つけるのであればなすべきバックグラウンドの理解の努力が欠けているように感じる、というのが正直な感想です。私がいたときも似たような解析でしたが、感度が上がってきているのですから、今一度バックグラウンドの見直しをしたほうがよいのではないか、と外野は思ってしまいました。


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