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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

陽子の速度

数日前に、「天使と悪魔」の冒頭で出てきたCERNでのシーンで、LHCで陽子が光速の99%にまで加速された、うんぬんという話題を書きました。それと関連のあるネタなのですが、LHCが設計通りの7TeVまで陽子を加速できたときの速さを計算してみました。

陽子の質量を0.938GeV、運動量が7000GeVとするとβ(=速度÷光速度)が0.99999999102になりました。つまり速度は光速の99%ではなく、99.999999102%です。ちなみに、LHCが動いていない現状での世界最高エネルギーはTevatronの1TeV(ホントは0.98TeVですが、面倒なので1TeVとします)。この場合の陽子の速さは光速の99.9999560%です。99.9999560%が99.999999102%になったと言われても凄さがピンと来ません。が、7TeVの陽子の速さは「光速ー時速10km」で、1TeVの陽子の速さは「光速ー時速475km」なので、その差は時速465kmということになります。光速に近いところ(=質量が静止質量に比べて非常に大きくなっている領域)で時速にして465kmも差があるというのはやっぱり凄いですね。

別の見方で、LHC加速器内に蓄えられているビームのエネルギーがどれくらい凄いか考えてみます。

陽子が1個だけだとそのエネルギーはもちろん7TeV=7×10の12乗eVです。このエネルギーというのは陽子という日常生活からは想像もできないような超微細な粒子1個のエネルギーですから、日常生活のスケールからすると全然凄くありません。よく使われる例ですが、蜂のような虫の運動エネルギーを考えてみるとわかります。質量が1g、飛ぶ速さが1m/sと仮にすると、その運動エネルギーは3×10の15乗eVになります。なんとLHCのビームエネルギーの500倍にもなります。

ですが、加速器というのは陽子(あるいは電子)を1個だけ加速するわけではなく、無茶苦茶たくさんある粒子をビームとして加速します。LHCの場合だと一声10の14乗個の陽子がリング内に蓄えられています。ということで、加速器リングないに蓄積された陽子のエネルギーだと1つのビームあたりで7×10^12×10^14eV=7×10の26乗eVです。単位をジュールに直すと、およそ10の8乗J。これがどれくらいのエネルギーに相当するか暇な人は計算してみてください。100トントラックが時速100km以上で走ってるときの運動エネルギーだったり、航空母艦が最大戦速度で進んでいる時の運動エネルギーだったり、戦闘機が離陸だか着陸するときの運動エネルギーだったり、、、いい加減に例をあげていますが、まあ、とにかくそういうレベルの莫大なエネルギーになります。

というわけで、例えば、ビームを軌道上に保持するための超伝導電磁石がクエンチ(超伝導状態から常伝導になってしまう)して、ビームがビームパイプのどっかに当たったとしたら、その当たった部分が強烈なダメージを受けてしまうわけですね。なので、そうならないための安全対策も加速器では非常に重要になるわけです。


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