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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

研究費不正使用の話の続き

昨日のエントリーを書いた後に更に考えたのですが、ルール上は不正と言えないまでも、私の倫理観的には不正、少なくとも効率的に研究費が使用されているとは言い難い例を、悲しいことに私の周りでも見かけることもあります。倫理観の欠如した人はどういう団体にもいるでしょうし、そういう人を排除あるいは強制するのはかなり難しいです。何しろ彼らは確信犯ですから。

そういう不正行為まがいを防ぐためには、結局のところ誰かが監査するしかないのでしょうが、問題は、監査する人の人件費と不正行為まがいによって失われた研究費のバランスです。アメリカの大型スーパーでよく見かけるように、レジを担当する店員を雇わず、客が自分で何を買ったか申告するシステムって、人件費と万引きの損失とのバランスから、人件費のほうが高いと判断された地域、店に関しては客任せにしてしまうわけですよね。それと一緒で、大型研究機関、あるいは大学でも学部単位、あるいは学科単位くらいの大きな組織なら、監査するための専用職があったほうが効率的なのかな、とは思いますが、小さめの組織ではそんな人を雇うのは明らかに非効率的でしょう。ということで、どれくらいの大きさの組織まで意思統一をはかれるかで、この作戦を実行可能か決まってきそうです。

ただし、この問題は多くの研究者からは反対を受けそうです。私自身は、監査する、されること自体は悪くないと思っています。上で書いたように倫理観の欠如した人に研究費を与えるのは馬鹿らしいと思っていますので。ただ、いざ実行しようとすると、現段階では、その監査に莫大な時間を取られて、ただでさえ少ない研究時間が無くなってしまいそうで、なかなか大声で賛成とは言えません。

誤解されないように書いておきますが、大型物品を購入すれば、当然、どこに納入、搬入、設置されたか事務から確認を受けますし、設置された場所にあることを見せないとなりません(他の機関でどれくらいやってるのか知りませんが、私たちの大学はちゃんとやってると思います)。私が言ってる監査というのは、もっと少額の物品、あるいは旅費(たぶん、これが擬不正使用の巣窟と思います)の使用状況をもっと正確に把握するようなシステムのことです。これまた私たちの大学(学部?)は変な方向に厳しくチェックしてきますが、正しい方向で厳しくチェックするのはアリなのではないかと、私は考えています。

で、話を戻して、そういう細かい監査に大声で賛成するには、教育・研究職のスタッフをサポートするスタッフの方々にもっと協力してもらう必要があります。旧態依然とした公務員体質でないサポート専用スタッフがきっちりとサポートしてくれなくては、研究職、特に不正をしないで頑張って研究をしているスタッフ(=不正してるようなスタッフより忙しい)は、監査に協力できるような状況ではありません。アメリカの研究機関に長く在籍してましたが、研究スタッフをサポートするスタッフの質と量が日米では違い過ぎます。そもそも、研修旅行の担当者(=教員です)が旅行の立案・企画するのはわかりますが、懇親会のお茶菓子や飲み物を何十人分も用意するなど、ありえなくないですか。小学生でも遠足のお菓子は自分で用意してきます。こういう雑用までさせられている現状では、教員が細かな監査に協力するのは非常に難しいです。

とまあ、ごちゃごちゃ書きましたが、倫理観の欠如したろくでもない研究者がいなければ、それが一番いいんですけどね…。


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この記事のコメント

私が研究者時代に思っていたことは、予算の使い方を第三者による委員会などによってしっかりレビューすることです。それと併せて研究計画も。与えたら与えっぱなしの日本のシステムが良くないような気がします。その使い方までトレースする必要があると思います。

科研費の審査などでは、やはりその業界の人がレビューするわけで、それではあまり意味がないと思います。それよりも、研究とは関係ない利益関係のない人がレビューすべきと思っています。(研究内容をレビューできる人がどれだけいるか分かりませんが、今ではかなり多くの人がドクター終了後に企業に就職していると思いますので、そういう人たちでもいいと思います。)

もちろん研究ですから、当初の計画通りには行かないこともあるとは思いますが、その場合はちゃんと理由も存在すると思います。そこをしっかりレビューするのが重要と考えます。

そうすると、研究者の仕事も増えてしまいますが、人様のお金を使っている以上、そうあるべきだと思います。

今になって見てみると、高エネルギー業界の無駄や不合理も多く思いますので、そのあたりを考え直してもらえればと思います。

いかがでしょう?
2009-10-05 Mon 00:51 | URL | WB [ 編集]
コメントありがとうございます。

第三者によるレビューは、原理的には賛成します。
ブログ本文でも書いていたように、より厳しい監査等があってよいというのが
原理的には私の立場です。
「原理的」と繰り返すのは、厳しいレビューによって防げる損失と、
そのレビューに費やしたことによる損失のどちらが大きくなるのか
わからないからです。レビューする時間が莫大で本来遂行できる
研究が遂行できなくなるのも、研究費の無駄遣いですから。

> 科研費の審査などでは、やはりその業界の人がレビューするわけで、それではあまり意味がないと思います。それよりも、研究とは関係ない利益関係のない人がレビューすべきと思っています。(研究内容をレビューできる人がどれだけいるか分かりませんが、今ではかなり多くの人がドクター終了後に企業に就職していると思いますので、そういう人たちでもいいと思います。)

これまた原理的には賛成しますが、業界外の人でレビュー可能かどうか
というのは研究ジャンルに非常に依存すると思います。分野によって、
学部4年生程度から活躍できる場合もあれば、Dでもまだ第1線で活躍
するのが難しい分野があります。素粒子関連ではDを取った直後の
人間が科研費の審査を行い正当に評価するのは非常に難しいと思います。
正直、Dを取った直後の私では審査なんて全く不可能ですし、私の知る限り、
Dの学生で科研費の審査を任せていいと感じる学生を見たことがありません。

それから、科研費の審査員は公表されているので、それを見ると
わかるのですが、その業界の人なら誰でも審査員になれるという
わけではなく、その業界を引っ張っているような、信頼されている
人たちです。そういう人たちの見識をDを取った直後の人間に
求めるのは苦しいのではないかと思います。

それともう一つ、WBさんのおっしゃるようなトップダウン型の
運用をしたのがアメリカの高エネルギー業界です。トップダウン型に
なって以降のアメリカ高エネルギー業界の衰退は激しく、今や
高エネルギー関連の研究所はフェルミ研究所だけになってしまいました。
かつ、その存続も心配されています。利潤を生み出さない研究を
第3者に評価されるとそうなってしまうのは明らかで、アメリカの轍を
踏まないよう、日本の伝統であるボトムアップ型の形態をとるべく
高エネルギー委員会なるものがあったりします。

> そうすると、研究者の仕事も増えてしまいますが、人様のお金を使っている以上、そうあるべきだと思います。

おっしゃることはごもっともですし、自分個人の問題として私も
研究費集めには非常に苦労しているので、なるべく無駄や不正が
なくなって欲しいと思っています。ただ理解していただきたいのは、
真面目に研究をしている研究者ほど忙しく、研究時間は限りなくゼロに
近くなっています。それに比べて活躍していない研究者ほど暇で、
そういう人たちが予算を不正に、あるいは非効率的に使っています。
つまり、研究者というのは激しく二極分化しています。
レビューというのは、真面目に忙しく頑張っている研究者(前者)にとっては
拷問で、そうでない研究者(後者)に取っては余裕でクリアできてしまうものです。
なので、単純にレビューを厳しくするというのは著しく不公平感があって、
反対する研究者が少なくありません。

以上を理解された上で、それでも厳しくレビューすべき、という意見
なのかもしれませんが、その場合は、うーん、私の場合、休日を皆無に
しないとならなくなりそうです。博士課程からポスドク時代はそういう
生活でしたが、今の私にとっては肉体的にも精神的にも(研究なら
楽しいのでムチャすることできますが、雑用にそんなに時間をかける
精神力はありません。また、子供と過ごす時間をゼロにすることも
できません)不可能です。ごめんなさいと言うしかありません。
2009-10-05 Mon 14:40 | URL | ExtraDimension [ 編集]
より厳しいレビューというより、より厳しい監査を可能にすれば
事態はかなり改善されると思います。そのために必要なのは、
教育・研究スタッフの雑用を減らして、研究者みんながもっと
監査に協力的になれるような環境作りではないかと思います。
そのためには、繰り返しですが、事務系のスタッフの質と量を
あげてもらうことではないかと思います。そのためには…
これ以上公の場で言うのはまずいのでやめます。
2009-10-05 Mon 14:49 | URL | ExtraDimension [ 編集]
> 今ではかなり多くの人がドクター終了後に企業に就職していると思いますので、そういう人たちでもいいと思います。

これ、つまり、自分にやらせろということですか?
2009-11-18 Wed 01:29 | URL | とおりすがり [ 編集]

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