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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

ダブルベータ崩壊

忘れないうちに昨日の続きです。

昨日書いたようにマヨラナ粒子には粒子と反粒子の区別がありません(粒子=反粒子)。じゃあ、π0とかフォトンがマヨラナかというとそうではありません。マヨラナはフェルミオンでなければならないから(ディラック方程式を満たさないとならなかったような?)です。電荷を持っていると自動的に粒子と反粒子の区別ができてしまいますから、電気的に中性のフェルミオンということで既知の粒子の中ではニュートリノだけが候補に残ります。

で、次の話に行く前にレプトン数というものを簡単に説明しておくと、粒子であるレプトンには+1、反粒子のレプトンには-1をレプトン数として割り当てます。すると、レプトン数の和は素粒子反応の前後で変わらないという実験的事実があります。例えば、電荷が負のミューオンが崩壊すると、電子と反電子ニュートリノとミューオンニュートリノになります。反応の前のレプトン数ミューオンの+1、反応後は、電子の+1、反電子ニュートリノの-1、ミューオンニュートリノの+1、ということで合計+1となり、反応の前後でレプトン数は変わりません。が、理論的に必ず保存すべしという要請があるわけではなく、自然がそうなっている(ように見える)のです。つまり、現在の実験の精度の限界でレプトン数が保存しているように見えるだけで、レプトン数が保存していないと何か困るという話ではありません。むしろ、以前に三角異常項のとこで説明した(?)ように、レプトン数は保存していないほうが自然です。

なんでニュートリノがマヨラナだと嬉しいかというと、レプトン数を保存しなくなって、そのレプトン数の非保存がバリオン数の非対称(この宇宙には粒子ばかりが存在して、反粒子が存在していないこと)を生み出す可能性があるからです。バリオン数非対称を作るための理論のモデルは色々考えられていて、素粒子理論、宇宙論で活発なジャンルなのですが、今言ったレプトン数の破れ(Leptogenesisと呼ばれます)がバリオン数の破れ(Baryogenesisと呼ばれます)を生み出すというモデルは人気のモデルらしいです。いや、専門家でないので本当にどれくらい人気があるか、妥当性が高いかは知りませんが、ニュートリノがマヨラナならあり得るシナリオなので私たちのような一般人にも受け入れやすいシナリオです。

というわけで、ニュートリノがマヨラナだと嬉しいのですが、どうやってニュートリノが普通のフェルミオン(ディラック粒子と呼ばれます)と区別をつけるのかという話になると出て来るのがダブルβ崩壊です。原子核内でのβ崩壊を素粒子的に眺めると、dクォークがuクォーク+電子+反電子ニュートリノへと崩壊しています。崩壊過程というのは確率論的ですから、非常に稀にはβ崩壊が同時に起きることもあります。つまり、崩壊後の粒子としてそれぞれdクォーク、電子、反電子ニュートリノが2個ずつ生成される反応です。これはニュートリノを2個放出するので2νモードのダブルβ崩壊と呼ばれ、実験的にも観察されている、素粒子物理的には特に面白い反応ではありません。

ところが、ニュートリノ=反ニュートリノであるマヨラナ粒子の場合、一方のダブルβ崩壊で発生したニュートリノあるいは反ニュートリノがもう片方のダブルβ崩壊に吸収されてしまい、終状態にはニュートリノが現れなくなります。これが0νダブルβ崩壊と呼ばれ、ニュートリノがマヨラナ粒子であることを示す反応と考えられています。というわけで、0νダブルβ崩壊を探す実験が世界中でたくさん行われていますし、かつ将来計画も数多くあります。

ニュートリノはディラック粒子ではなくマヨラナ粒子だと信じてる人のほうが多いと思うのですが、その証拠となる0νのダブルβ崩壊、早く発見されて欲しいものです。


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