FC2ブログ

ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

素粒子の世代と三角異常項

素粒子を分類すると、力を媒介する粒子(ゲージボソン)と物質を構成する粒子(フェルミオン)に大別でき、さらにフェルミオンは強い相互作用をするかどうかによってレプトン(電子やニュートリノなど強い相互作用をしないグループ)とクォークに分けられる、という話は今までにも何度か書いたことがあります。さらに、レプトンやクォークには世代というものがあって、レプトンだと電子と電子ニュートリノを第一世代、ミューオンとミューオンニュートリノを第二世代、タウとタウニュートリノを第三世代と呼びます。クォークの場合は、uとd、cとs、tとbがそれぞれ第一、二、三世代と分類されています。

この分類というのは現象論的になされたもので、つまり、実験や観測から経験則的に分類されたもので、なぜレプトン、クォークがともに3世代あるのか、レプトンとクォークの本質的な違い、などは本質的には理解できていません。これまた何度か説明してきましたが、相互作用を支配するのはゲージ原理であり、そのゲージ原理に支配されていないルールというのは、あくまで現象論的、経験則的に決められたというだけなのです。

ということで、レプトンとクォークはなぜ3世代からなっているんだろう、そもそも、なんでレプトンとクォークの世代数が同じなんだろう、という疑問には素粒子物理学は答えることができず、世代の謎と呼ばれています。ところが、理論的にはレプトンとクォークがペアとなって世代を作ってもらわないと困ってしまうことがあります。ただし、3世代である必要はないのですが。

ある特定の形の相互作用、例えば電荷を持たないパイ中間子が2つの光子に崩壊する過程など、の量子補正(不確定性原理の許す微小時間内ならば、仮想粒子になってもよいという効果です)を考えると、三角異常項(もっと一般的には量子異常)と呼ばれる数学的に嬉しくない寄与が発生してしまいます。相互作用を決めるゲージ対称性、もっと正確に言うと局所ゲージ対称性という対称性を課そうとすると、その三角異常項というのが理論計算を発散させてしまうのです。ノーベル賞を受賞した朝永の業績は、理論計算に現れる無限大の項を上手く消す手法(=繰り込み)を確立したことなのですが、三角異常項があると繰り込みができなくなってしまうのです。

じゃあなんで、パイ中間子の2つの光子への崩壊のような物理過程が実在するのか説明しようとすると、クォークとレプトンがペアを作っていないとならないのです。1つの世代内のクォークとレプトン(例えば、uとd、そして電子と電子ニュートリノ)による量子補正(今は三角異常項を考えています)の寄与を足し算すると、出来過ぎなのですが、ゼロになるのです。アクシオンの説明のときにも書きましたが、物理屋はこういう出来過ぎを単なる偶然とは思わない、思えないのです。つまり、レプントンとクォークはそもそもペアであり、世代を作っていることに本質的な意味があるはずだと考えるわけです。

このような背景があるために、レプントとクォークを統合する大統一理論というのは、素粒子物理屋にとっては非常に自然な論理的帰結と思ってしまいます。

ちなみに、量子異常がないことというのは、新しい理論体系を作ろうとする時の大きな指針になるのだそうです。紐理論を理解していないので単に聞いただけの話ですが、super stringが10次元時空で成立するというのも、量子異常の議論からの帰結だそうです。


研究 | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<過去30日間のエントリーを振り返る | HOME | 日食>>

この記事のコメント

コメントの投稿















コメント非公開の場合はチェック

この記事のトラックバック

| HOME |