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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

アクシオン

素粒子物理学上の大きな謎の一つに、「強いCP問題」というのがあります。ヒッグスとか、SUSYとか、ダークマターとか、等々に比べて地味かもしれませんが、多くの(?)素粒子物理学者が気にしている問題の一つです。

CPが弱い相互作用で破れていることが発見されて以来、長い間CP非保存の研究は弱い相互作用を使って研究されてきました。逆に、CPの破れは弱い相互作用でしか観測されていなくて、中性子の電気双極子モーメントに関してゼロでない有限値が観測されていないことから、強い相互作用ではCPが保存されている(あるいは、CPの破れの大きさは非常に小さい)と考えられています。ところが、強い相互作用を記述する理論体系ではCPを保存する必然性がありません。2つの独立な効果が偶然キャンセルしあうことでCPを保存することになっているのですが、独立な効果が無茶苦茶高い精度でキャンセルするというのはあまりにも不自然(=これを強いCP問題と言います)で、何らかの理由があるだろう、と物理学者は考えているわけです。

ヒッグスが存在したとき、量子効果から真空が不安定になってしまう。全くの偶然で安定になるのは不自然だ。SUSYが存在すれば真空を安定にできる、というのがSUSYを導入する動機の一つでしたが、それに似ていますね。物理学者は、独立な現象2つ(以上)が理由無く同じ大きさの効果を出すことに強く不自然さを感じてしまうのです。

強いCP問題を解決するために導入されたのがアクシオンと呼ばれる粒子です。ヒッグスはヒッグス場というスカラー場が自発的に対称性を破った結果生じる実粒子なわけですが、アクシオンはカイラル対称性が自発的に破れた結果生じるゴールドストンボソンで、ヒッグスとの結合により有限の質量を持ちます。カイラル対称性を要求しているので、SU(3)、SU(2)xU(1)による相互作用で保存量(電荷など)が存在したように、カイラル対称性にもとづく保存量が存在することになりますが、フェルミオンがその保存量を持つかどうかはモデルに依存するようです。

強いCP問題とは独立に(?)実はアクシオンは注目されています。というのは、ダークマターの候補でもあるからです。最有力候補はSUSYが予言するSUSY粒子なのですが、アクシオンの可能性もまだ残されています。物質との相互作用が弱い相互作用程度なので、質量によってはダークマターの性質を満たします。強いCP問題もあって、アクシオン探索というのはそれなりに注目されている実験です。

アクシオンが注目されるもう一つの理由に、(アクシオンとは直接関係ないのですが)宇宙のバリオン数の非対称問題があります。宇宙には物質ばかりが存在して、反物質が存在しない、という有名な話関連です。アクシオンの理論的背景となる数学的な取り扱いによって、バリオン数非保存をうまく説明できるから、らしいのですが、私の守備範囲を超えているので説明はやめておきます。

なぜアクシオンの話をしたかと言うと、今朝の研究室のミーティングで学生の一人がアクシオン探索の論文紹介をしたからなのですが。私が持っている知識は今書いたことくらいで、この乏しい知識ではその論文を理解するのは到底不可能でした…。


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