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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

なぜSupersymmetry?

昨日の続きですが、超対称性というアイデアがそもそもなんで生まれたのか、なんで必要なのか、ということを説明しようと思います。

量子力学の世界に不確定性原理というのがあります。ごく短い時間なら嘘のエネルギー状態でもいいというヤツです。例えば、質量mの粒子も非常に短い時間間隔なら質量がmじゃなくてもいいのです。質量ゼロの光子も短い時間なら質量を持っていることになります。ちなみに、こういう質量を持った嘘の状態の光子のことを仮想光子(=virtual photon)と呼びます。全ての粒子に対して不確定性原理は正しくて、質量の源と考えられているヒッグス粒子に対してもあてはまります。つまり、ヒッグスにも仮想ヒッグスの状態があるわけです。

ここで問題が発生します。ヒッグス以外の粒子だったら、仮想状態というのは本来の状態に比べてそれほど大きな寄与がありません(仮想状態の寄与を専門用語では量子補正とか、放射補正とか呼びます)。例えば、また質量を考えてみると、もともと持っている質量に、量子補正の影響を足した物が、我々が観測する質量となるわけですが、その補正の量というのがヒッグス以外ではそれほど大きくないのです。ところが、ヒッグスはこの量子補正が大きくて効いて、宇宙初期の高温の状態から現在の冷えた宇宙の状態までの量子補正の大きさを考えると、そもそものヒッグスの質量に比べて10の13から15乗も大きい補正量になってしまいます。もはや、どう考えても補正ではないですね。不自然です。10の13乗と言ったら10兆ですよ。1円の投資が10兆円になるのは不自然ではないですか?相当悪いことをしても無理ですよね。

そういうわけで、ヒッグスの量子補正というのは素粒子物理学の世界ではあまりにも不自然なのです。1円の投資が10兆円になるのは偶然とは思えない。きっと何かカラクリがあるに違いないと思うわけです。そのカラクリが超対称性なんですね。超対称性では全ての粒子にパートナーがいます(=スーパーパートナーと呼びます)。電子にも電子の相棒、ヒッグスにもヒッグスの相棒がいるはずなのです。この相棒がいるとヒッグスの量子補正では、符号が反対の寄与が発生して、1円が10兆円にも膨れ上がらないということが予言されます。つまり、ヒッグスの量子補正がバカでかくならないための工夫が超対称性だったわけです。

昨日も書きましたが、そういう理由で導入された超対称性が、その帰結として力の統一を上手く説明できたり、未知の暗黒物質の有力候補を提供したりして、最近の素粒子物理学、宇宙論では大人気なのです。でも、上で説明したように、本来のモチベーションはヒッグスに関連してたわけで、逆に言うと、ヒッグスが存在しない場合、超対称性のモチベーションというのは実は低いのです。ヒッグスとは切っても切れない絆と言っていいでしょう。

こういう背景があって、我々研究者はヒッグス探索・SUSY探索に日夜明け暮れている(明け暮れていたいが雑用が多い?)のですが…やっぱり、研究者以外から見ると変人ですよね。そんなことに興味を持って、職業としてるわけですから。


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