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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

理系の女の生き方ガイド

という本を読みました。素粒子論研究者の坂東昌子という人と生物学者(?)の宇野なんとかさんという人の共著で、内容はタイトルそのまま、というか女性に限らず男でも理系研究者として生きて行こうと考えてる人へのガイド、エールといった感じです。

中身は共感できることが多く、また、著者の方たちは色々な世界を見ているからなのか(共著者の1人の専門分野が我々に近いということもあるでしょうが)、高エネルギーの世界の事情を客観的に描いてくれていたのは微妙に嬉しかったです。例えば、素粒子物理実験は実験の規模が大きく、自分の意志とは関係なくプロジェクトがどんどん進んで行くので、研究と私生活を両立させるのが難しい(実験の進行について行くのが大変)、ということをきっちりと理解・記述されていて、他分野でもわかってくれている人がいるんだ、と嬉しくなりました。

ちなみに本の中では、大型実験に携わっている高エネルギー物理屋に奥さん、あるいは旦那さんのことを尋ねてはならない、と冗談めかして書いていました。研究生活のあまりの忙しさに離婚、あるいは離婚までは行かなくても夫婦仲を保つのが難しいからだ、と説明してあったのには苦笑いしてしまいました。

それから、素粒子の世界は非常にオープンだというのも共感できる意見でした。指導教員だからといって遠慮する必要はないし、逆に誰に対しても正論を述べることのできる人間が評価されます。素粒子実験だと大勢の他大学・研究所のスタッフ、あるいは学生と共同研究を行うので、極論、指導教員に気に入られようが嫌われようが、実力があれば認められる世界です。前にも書きましたが、21世紀の今でも教授とそれ以外人間のhierarchyが歴然としてる分野もあるようで、そういう世界はきっと閉鎖社会なんでしょうね。教授に認められないと学会等で発表できず、学会で発表できないといくら優秀でも他の人に認めてもらうチャンスがない、そういう構造になってる分野もあるのかもしれません。それに比べると、前の段落では忙しくて大変だと書きましたが、私たちの世界は人間関係に囚われることなくやり甲斐のある研究分野であると言えるかもしれません。

本の主眼はもちろん女性に対するメッセージなわけですが、昔の女性研究者はやはり苦労が多かったようで、その点は同情せずにはいられませんでした。今でも、子供を産み、育てようとすると、どうしても女性は研究との両立が難しいですから、女性研究者を増やそうと思ったら、やはり育児関係の施設・サポートを充実させることが一番重要なんでしょうかね。

というわけで、多くの部分に共感したのですが、共感できない点が2つだけありました。

一つは女性が就職に不利だという話。私が知っている環境、つまり、日米欧の高エネルギー関係での就職、日本の大学の物理系の就職状況などをみると、女性が不利だとは全く思えません。私のように女性を増やそうと考えてる人や大学(公募で女性を優遇すると言ってる大学もあります)も多いですし、アメリカなどではマイノリティを優遇するのが当たり前なので(数値目標もあります)、自然と女性研究者が就職に有利になっています。ぶっちゃけてしまうと、アメリカだと同じポストを男性と女性で争うと、よっぽど実力に差がないと女性を採用します。こういうことは周知の事実で、それに関して男のほうが不公平だなんて言いません。ポストを争ってた男性は思うかもしれませんが…。なので、ポスドク問題と同じで、神話のように女性が就職に不利と言い続けるのはどうかな、と思いました。まして、女性を応援するのが趣旨の本ですから、女性のやる気を砕くようなバイアスを与えるのはクエスチョンマークでした。これまた、未だに女性に不遇の分野があるのかもしれませんが…。

もう一つは、とにかく内容がクソ真面目でした。学会に行って知り合いと酒を飲むのも情報収集として役立てよとか、ゼミ旅行と称して遊んでばかりの旅行に行くのは時間の無駄とか、著者が物凄い苦労をしていたからなのかもしれませんが、そこまで張りつめて日々を送ることはできないだろう、と思ってしまう内容もありました。まあ、私が不真面目代表の研究者だからこそ持つ感想かもしれません。

ところで、タイトルが私的には恥ずかしかったです。エロ本を買うよりも緊張しました。いえ、流石にいい大人ですからもう20年くらいエロ本買ってませんが、今買うとしたらエロ本のほうが抵抗ないかもしれません。それくらい買うのが恥ずかしかったです。「女の生き方ガイド」を買う私の姿を想像してください。エロ本買ってるほうがよっぽど自然のような…。


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