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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

ゲージ対称性と質量

ゲージ対称性というのはちょっと難しい概念で、前にこのエントリーで説明したことありますが、今日はもう少し易しく説明してみます。

量子力学によると、素粒子というのは粒と波の性質を持っていて(実験的にも確認されています)、その波の位相を変えることを位相変換といいます。では位相とは何か、というのをまず説明します。

波の状態を記述しようとした時、何を説明すればいいのか考えてみます。波というのはある点が一定の周期で上下運動を繰り返しているわけですよね。その上下の振れの大きさが振幅で、振れの速さが周波数です。光や音のように進む波であれば、波の山と山(あるいは谷と谷)との間の距離が波長になります。これで波の性質はほぼ全てなのですがもう一つ、今観測している波が山なのか谷なのか、あるいは谷から山に行く途中なのか、山から谷に向かっている最中なのか、というのも今見てる波の状態を説明する必要がありますよね。つまり、山から山までを一つの周期と考えれば、その周期のどこにいるのかを位相と言います。なので、位相を変えるというのは、例えば、波が山の状態だったものを谷に変えるとか、谷から山に向かう途中だった波を谷に戻すとか、そういう操作になります。

で、ゲージ変換というのはある種の位相を変えることで、この位相変換を行っても物理法則が変わらないことをゲージ対称性と呼びます。驚きなのは、少なくとも私が昔初めて知った時には驚いたのですが、電磁気力、弱い相互作用、強い相互作用それぞれが、「ゲージ対称性を満たさなければならない」というルールを設定すると、それぞれの相互作用の形が決まってしまうのです。このルールによって決められた相互作用の形が正しいかどうかは実験的に詳しく調べられて、正しいことが確認されています。

ということで、昨日書いたように、ゲージ対称性というのは相互作用を支配する宇宙の根源的なルールであると信じられています。このルールを適用すると、これまた昨日書きましたが、力の媒介粒子たち(=ゲージボソンと呼びます)は質量を持つことができず、WやZが質量を持つという事実、すなわちゲージ対称性の破れが素粒子物理学上の大問題になっています。

ちなみに、クォークやレプトンなど(=フェルミオンと呼びます。フェルミオンというのはスピン1/2を持つ粒子の総称で、クォークやレプトンは全てスピン1/2を持ちます)はゲージ対称性から質量ゼロが要求されているわけではありません。確かに今の理論の枠組みだとゲージ対称性を破ってしまいますが、有限質量を持つからゲージ対称性を破るわけではなく、uクォークとdクォーク、あるいは電子ニュートリノと電子、のようにペアをなすフェルミオンが同じ質量を持たないからです(だったはずです。少なくともSU(2)では。)。uとd、電子ニュートリノと電子はそれぞれ質量が違うので確かにゲージ対称性を破ってはいますが、その破れ方がWやZとは違うことが私には気になります。ということで、フェルミオンが質量ゼロでなければならない理由は、ゲージ対称性ではなく、カイラル対称性に関連していると考えられています。

話を戻すと、破ってはならない対称性であるゲージ対称性を保持したまま、WやZに質量を持たせる仕組みがヒッグス機構と呼ばれるからくりで、このからくりの主役がヒッグスという粒子なのです。私としては、ゲージ対称性によりゲージボソンの質量ゼロが要求されているにもかかわらず大きな質量を持つ、という問題を回避するために導入されたヒッグス粒子とヒッグス機構で、別の理由(カイラル対称性)で質量ゼロのほうが自然であると考えられているフェルミオンにも質量を与える現在の標準理論というのは、ちょっと胡散臭い気がしています。標準理論が間違っているというのではなく、私たちの世界での素粒子の振る舞いは標準理論で正しく再現できるけれども、その背後にはもっと深遠な理由(私たちには見えてこないだけで)があるのではないかと思ってしまうのです。


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