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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

相互作用の種類と質量の問題

先週は物質を構成するクォークとレプトンについて説明しました。世の中に存在する素粒子(と考えられている粒子)はそれだけでなく、相互作用を媒介する粒子たちが存在します。あと未発見ですが、質量の起源となるヒッグス粒子も存在すると考えられているので、世の中には大雑把に言うと3種類の粒子があることになりますね。

では相互作用は何種類かというと、実は4種類しかありません。一般の方になじみのある相互作用は重力と、後はほとんど電磁気力です。色んな力があるように思われるかもしれませんが、日常生活で感じる力は、重力以外は全て電磁気力と思ってもらって間違いありません。例えば、電車が動かしている力は何かと問われれば電磁気力ですよね。じゃあガソリン自動車が動くために働いている力は何かというと、素粒子レベルで見るとこれまた電磁気力です。ガソリンと空気の混合気体が爆発してピストンを動かして車は動くわけですが、ピストンを押すというのは、爆発した混合気体の分子が電磁気力的な反発力によってピストンを押しているのです。そもそも爆発(燃焼)するという化学反応は電磁相互作用によって分子の組み合わせが変わることで、世の中の化学反応、生物学的な反応(筋肉を動かすとか)も突き詰めれば全て電磁気力によって引き起こされています。今タイプしている指を動かしているのも電磁気力ですし、何を書こうか脳味噌内で考えているのも電磁気力によって引き起こされた神経の興奮なわけです。つまり、脳の働きも電磁気力によってコントロールされているのですから、人を好きになるにも電磁気力は不可欠なわけです。

いきなり話が大きく脱線しましたが、残り2つの相互作用はそれぞれ「強い相互作用」「弱い相互作用」と呼ばれています。前者は原子核中の陽子や中性子、もっとミクロにはクォークなどに働く力で、その名の通り4つの力のうちで最も強いです。なので、強い相互作用を利用した原爆や原子力発電では、少量の核燃料から莫大なエネルギーを利用できます。逆に言うと、電磁気力によって支配された化学反応や生物学的な反応は簡単に引き起こすことができますが、原子そのものを壊すとかくっつけるというような反応(=こういう反応を利用するのが原爆や原子力発電)を起こすのは簡単ではありません。

もう一つの相互作用「弱い相互作用」というのは、世間では馴染みが薄いと思います。素粒子・原子核の世界では非常に重要で、粒子の崩壊を引き起こしたりします。例えば、中性子(原子核中などに束縛されていない、中性子単体の場合です)はある寿命を持って陽子と電子とニュートリノに崩壊するのですが、この崩壊を起こしているのが弱い相互作用です。

以上、相互作用は4種類あることを説明しましたが、そもそも相互作用というのは素粒子レベルで見ると、ある粒子と別の粒子との間での媒介粒子の交換と考えることができます。ということは、相互作用は4種類あるわけですから、力の媒介粒子も4種類は存在しないとなりません。結局、重力はグラビトンと言われる粒子(未発見です)の交換、電磁気力は光子(=γ線、つまり電磁波ですね)の交換、強い相互作用はグルーオンと言われる粒子の交換、弱い相互作用は3種類の粒子(電荷プラスのW、電荷マイナスのW、電荷ゼロのZ)のどれかの交換、だと考えられています。

ここで重要なのは、素粒子物理学を理論化する上で重要なルールにゲージ対称性というのがあって(これについてはまた明日にでも説明します)、そのルールによると力の媒介粒子の質量はゼロでなければなりません。実際に、光子の質量はゼロですし、グルーオンの質量もゼロと考えられています。ところが、WやZという弱い相互作用の媒介粒子は非常に重くて、超重いトップクォークの半分くらいの質量を持ってます。ゲージ対称性というルールは量子力学や相対論と並ぶくらい重要な根本原理と考えられているので、ゲージ対称性からゼロでなければならないはずのWやZの質量がそんなに重いというのは、素粒子物理学にとっては天地がひっくり返るような大問題なのです。量子力学が間違ってたとか、相対論が間違っていたら大問題ですよね。それと同じなわけです。

そこで、WやZが質量を持つ(すなわち、ゲージ対称性が破れている)という大問題を解決するために導入されたのがヒッグス粒子なのです。ヒッグス粒子があると、ゲージ対称性という大切な対称性を破ることなくWやZに質量を持たせることが可能なのです。つまり、量子力学のような最も基本的で重要な概念であるゲージ対称性を回復することができるのです。

という背景があって、ヒッグスの発見とその性質の解明というのは現在の素粒子物理学で最重要問題の一つと位置づけられていて、私も非常に興味を持っています。


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