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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

質量の話

昨日は予期せず長々とクォークの話をしてしまいました。それじゃあ、ということで、ついでに電子の仲間の話と、質量の話を今日はしようと思います。

クォークに3世代あるように電子の仲間も3世代あって(なぜ、それぞれ3世代あるのか、というのは素粒子物理学上の重要な謎で、今のところその理由を説明する決定版はありません)、第1世代が電子、そして電子のペアとなる電子ニュートリノ、第2世代がミューオン(μ)とμニュートリノ、第3世代がタウ(τ)とτニュートリノと合計6種類の素粒子があります。ニュートリノの質量はニュートリノ混合の実証からゼロでないことはわかっていますが、質量そのものはまだ測定されていません。一方、電子、μ、τの質量はそれぞれ0.5MeV、106MeV、1800MeVと、クォーク同様第1世代が一番軽くて、第3世代が一番重くなっています。

ちなみに、以上の6種類の素粒子たちは総称でレプトンと呼ばれています。クォークとの大きな違いは強い相互作用をしないことです。また、電子、μ、τには電荷がありますが、ニュートリノには電荷がないので、ニュートリノに関しては弱い相互作用しかしません。なのでニュートリノというのは物質との相互作用が非常に弱いのです。ニュートリノのエネルギーにもよりますが、大雑把には1個のニュートリノが相互作用を起こすには地球を1億個並べないとなりません。地球1億個分くらいの物質を通り抜けてやっと反応するわけです。ニュートリノにとっては地球なんて透明ということですね。なので、通常の検出器ではニュートリノを観測することは不可能で、有名なカミオカンデのようなニュートリノ検出器は大量の物質を標的にして(カミオカンデの場合水)、たくさん飛来するニュートリノの一部が反応するのを待つことになります。

話を戻すと、クォークの中で一番軽いuクォークは約2、3MeV、ニュートリノを除くレプトンで一番軽いのが電子で0.5MeV。一方一番重い素粒子はトップクォークで174,000MeVもあります。電磁相互作用の強さは電荷で決まりますから、クォークもレプトンも大した違いはありませんし、弱い相互作用、強い相互作用に関しても強さそのものは素粒子の種類によってそれほど変わるわけではありません。

それなのに、質量はとんでもなく大きな違いがあります。トップクォークの重さなんて電子の348,000倍もあります。すると、なんで質量は粒子によってこんなに違うんだろう?そもそも質量って何で決まっているんだろう?って物理学者は思うわけです。自分の体重を測ってなんでこんなに重いんだろう?と疑問に思い、自分のお腹の周りを眺めてその疑問の答えを見つけるのと一緒(?)です。あ、いや、この例えはあくまで自分の場合ですよ。ははは。

自分の体重はさておき、素粒子の質量はじゃあ何で決まっているのかというと、まだ見つかっていないヒッグス粒子との結びつきの強さだと考えられています。そもそもレプトンにもクォークにも質量はなくて、例えば宇宙ができた直後の世界では質量ゼロだったのですが、その後宇宙が冷えてくると、ヒッグス粒子との結びつきを持つことで質量を獲得したと考えられています(このときに重要なのが南部さんが提唱した自発的対称性の破れという概念です)。で、ヒッグス粒子との結びつきの強さがそれぞれの素粒子に固有のもので、ヒッグスとくっつきやすい(?)粒子は重く、くっつきにくい粒子は軽いというわけです。素粒子の質量というのはヒッグスとのくっつきやすさの指標ということですね。

それではなぜヒッグスとのくっつきやすさに違いがあるかというと…それは私にはわかりません。そもそも上で説明したことは、ヒッグスが発見されていない今は単なる仮説であって、ヒッグスをまず発見し、そしてヒッグスとレプトンあるいはクォークとの結合の強さを測定して(レプトンとクォークの質量は測定されていますから)、上の仮説が正しいことを実証することが現在の素粒子物理学の最重要テーマの一つなのです。平たく言うと、質量についてはまだよくわかってないんですね。

もっと説明したいことがあるのですが、今日もいい加減長くなったのでもうこのへんでやめます。明日以降(?)にでもまた続きを書きます。


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