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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

トップクォーク

先週に引き続き今日もフロイブルク大学とのミーティングを行いました。

このブログを読んでるみなさんには説明不要かもしれませんが、世の中には6種類のクォーク(プラス、6種類それぞれの対となる反クォーク)が存在します。クォークというのは、現在の物理学では物質の根源をなす素粒子であると考えられていて、それ以上分割不能な最小単位みたいなものだと思ってください。クォーク以外だと電子(とその仲間)も素粒子と考えられていますが、今はクォークに注目して説明します。

クォーク6種類にはそれぞれ名前があってアップ(up)、ダウン(down)、チャーム(charm)、ストレンジ(strange)、トップ(top)、ボトム(bottom)と名付けられ、uクォーク、dクォーク、、、などと略されて呼ばれます。この6種類のうち自然界に多く存在するのはuとdです。というのも、uudという組み合わせで陽子が、uddという組み合わせで中性子ができているからです。陽子や中性子が原子核を形作り、原子核と電子から原子ができていますから、世の中の物質はuクォーク、dクォーク、そして電子からできているといってもいいくらいです。

ところで、uとd、cとs、tとbをペアとしてそれぞれを第一世代、第二世代、第三世代と呼んで、第一世代より第二世代、第二世代より第三世代のほうがより重くなります(他にも性質の違いはありますがその説明は省略)。重さを表す単位としてMeVというのを使うと(その単位が何を意味するのかは無視してもらって単にそういう単位なんだと思ってください)、uが2、3MeV、dが5MeV、sが100MeV、cが1300MeV、bが4200MeV、tが174,000MeV程度です。先に説明したようにuとかdは自然界に存在しますし、sクォークを含んだ粒子というのも宇宙線が大気に衝突することで、それなりに自然界に現れ観測するのも容易です。

ですが、cクォークより重い粒子というのは自然界では滅多に生成されないので、生成されたとしてもそれを観測することは非常に難しいです。そういうわけで、sクォークを含んだ粒子(K中間子)は宇宙線中で発見されましたが、それより重いクォークからなる粒子の発見には加速器を必要としました。より重いクォークを生成し発見するには、より高いエネルギーの加速器が必要で、cクォークと反cクォークからできているJ/psiと呼ばれる粒子が発見されたのは1974年、bクォークと反bクォークからできているUpsilonという粒子が発見されたのは1977年でした。もうこの段階で誰もが(?)6番目のクォークであるトップクォークの存在を信じていましたが、先に書いたようにあまりにもトップクォークが重かったためになかなか発見されませんでした。

日本でも高エネルギー加速器研究所(KEK)というところにトリスタンという大型加速器を検出してトップクォーク探索をしようとしていた時代がありました(が、トリスタンが完成したときには、他の様々な実験事実からトリスタンで達成できるエネルギーではトップクォークを生成できないことが予想されていた、という悲しい歴史があります)。日本以外でも幾つかの加速器を用いてトップクォーク探索を行いましたがなかなか発見できず、ようやく1994年になってアメリカのフェルミ国立加速器研究所(Fermilab)でトップ・反トップクォーク対の生成が確認されました。

このトップクォークというのはほぼ100%の確率で瞬時に(クォーク同士の束縛状態を作る前に)、bクォークとWという弱い相互作用の媒介粒子に崩壊してしまいます。トップクォーク以外はクォーク単体で崩壊するのではなく、その前にクォーク3つが集まってバリオンと呼ばれる陽子や中性子の仲間になるか、クォークと反クォークでペアを作ってメソンと呼ばれるπやKという粒子の仲間になります。

ここまで説明してようやく冒頭のフロイブルクとのミーティングの話に戻ります…。

フロイブルクと私たち双方がbクォークに興味を持っています。ヒッグスがbクォーク・反bクォーク対に壊れることができるから、というのが主な理由なのですが、そういう物理的なモチベーションからまずはbクォークの研究をしたいと考えています。するとトップクォークというのがbクォークの良い供給源になるんですね。10年前には発見を目指していた粒子なのに、今は別の粒子の供給源と考えられたり、あるいは超対称性(SUSY)から予言される粒子の探索などでは、トップクォークは邪魔な偽信号となってしまったりします。

そこでトップクォークが生成された事象をたくさん集めてbクォークの研究をしてやろう、というのがフロイブルクと私たち双方が今考えていることで、これに関してどうやって共同で研究を進めていこうか、ということを先週、今週と2週に渡って相談をしました。実際にはこの2つのグループだけでなく、たくさんのグループによって似た研究がされているので、いかに今までなされていない研究を探すか、というのもミーティングの重要なテーマでした。

…ミーティングの話をするつもりが、とんでもなく長いエントリーになってしまいました。


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