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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

宇宙線中の(陽)電子測定の続報

ちょっと前に宇宙線中の(陽)電子過剰というエントリで、宇宙線中の陽電子と電子の量があるエネルギー領域で予測されるよりも多いという話をしました。暗黒物質の対消滅にともなう(陽)電子生成の可能性があるために、今非常に注目されている観測結果であるという内容でした。

そのときもお伝えしたように、FERMIという人工衛星を使った宇宙線測定プロジェクトでは今までよりも高い精度で電子のスペクトラム(どれくらいのエネルギーの電子がどれくらいの量あるか)を測定することが可能で、その最新結果が待たれていました。アメリカの物理学会で発表するために、preprintと呼ばれる査読なしの論文にすら発表していなかったのですが、約1週間ほど前にpreprintとしてその結果が投稿されていました。

結果をいきなり書くと、残念ながら過去の実験ほどの(陽)電子過剰は観測されませんでした。過去の実験に比べて測定誤差が小さいので、昔の結果は…という状況です。それでも、100GeV以上の領域では、既存の電子源からだけでは説明できないようなわずかな過剰を観測しています。ただし、昔の観測結果ほどの大きな過剰ではないので、現在の予測量に考慮に入れられていないパルサーからの電子のせいだ、というのが最も有力な解釈だそうです。暗黒物質の対消滅というシナリオを否定することはできない、というただし書きはありますが、まあ、素直に読むとその可能性は低いと考えられているようです。

ちなみに、このpreprintは astro-phの0905.0025です。

専門家ではない人向けに説明しておくと、査読付きの専門誌に投稿すると同時にpreprintという形式で世間に論文を広めます。専門誌の場合、投稿してから雑誌に掲載されるまでにかなりの時間を必要とするので、とりあえず最新結果を報告するという意味合いがあります。私たちの世界で広く使われているのは、arXivと呼ばれるpreprintのデータベースです。Los Alamosというアメリカの国立研究所にサイトがあるのですが、今は注意書きにCornell大学が運営、National Science Foundationが財政面のサポートをしてる、とありますね。

どこが運営してるかは置いておくとして、普段私たちはこのサイトのおかげで苦労なく最新の実験結果、理論の情報をチェックすることができます。自分の好きなカテゴリーにsubscribeすると、1日1回、過去24時間に投稿されたpreprintのタイトルとabstract(概要です)をメールで送ってきてくれます。このメールをちらっと眺めているだけで最新情報を得られるのですから、有り難いサービスです。


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