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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

小林・益川の講演

昨日に引き続き、学会中に設けられたノーベル物理学賞受賞記念講演関係の話です。

数日前のエントリーで書いたように、今日は楽しみにしていた益川さんの講演がありました。小林さんの話ももちろん楽しみでしたし、楽しみましたが、益川さんの講演は聞いたことが今までなかったので、より一層楽しみにいていました。

その講演は期待にたがわず非常に興味深かったです。専門家でないとわからない話ばかりだったのでここでは紹介しませんが、益川さんの人柄もわかるいい講演でした。その中で一つだけ印象に残ったことを挙げるとしたら、右巻き粒子と左巻き粒子の数がなぜ同じなのか、という話題です。スピン1/2のフェルミオンといわれる物質を作っている粒子たちは、本来質量がゼロと考えられています。その理由は前にも書いたことありますが、カイラル対称性というものがあるためです。

ちょっと戻って、右巻き、左巻きが何かというと、スピンには向きがあって、その向きによって右巻きとか左巻きという言い方をします。で、カイラル対称性というのは、右巻きの粒子と左巻きの粒子は別粒子として振る舞うということなんですね。数学的には、カイラル変換という右巻き粒子と左巻き粒子に対して独立の変換を施しても変換前と変わらないということを意味します。

このカイラル対称性というのはもしフェルミオンに質量がなければ保たれている対称性です。つまり、質量がなければ、今我々の世界で同一とみなされている粒子でも、右巻き粒子と左巻き粒子は別粒子として振る舞いますし、別粒子として取り扱わなければなりません。がっ、実際には全てのフェルミオンに質量があって右巻きと左巻き粒子は同一粒子として振る舞いますし、物理的に同一として扱えるわけです。逆に言うと、質量というのは右巻きと左巻きを繋げる強さを表していることになります。

というわけで、物理屋としては右巻き粒子と左巻き粒子は本来別物で、なぜかはわかりませんが、とにかくなんらかの理由で本来別物の右巻きと左巻きが質量によって結びつけられていると考えるわけです。

ここまで説明してようやく今日の益川さんの講演で印象に残った話に戻ると、彼はその左巻き粒子と右巻き粒子の数が同じことに疑問を持っていると言うんですね。ニュートリノは置いておくとして、クォークは右巻きだけ、あるいは左巻きだけということなく、両方が同じ数だけあります。私みたいな凡人はそのこと自体に疑問を持たないわけです。例えば、よく世間で言われているように、この宇宙になぜ反物質がないのか、みたいなわかりやすいことは誰でも不思議に思いますし、疑問に思うわけです。ところが、長い間培われた常識に縛られている凡人は、右巻き粒子と左巻き粒子の数が同じことに疑問を持たない、持てないのです。それを疑問と感じることができる益川さんというのは、やっぱり凄いなぁ、と単純に感激した、というのが今日の話です。

それから、小林さんと益川さんの講演以外にも色々面白い講演があったのですが、なかでもインプレッシブだったのは三田さんのトークです。

三田さんというのは、CP非保存をB中間子を使ってどうやって測定すればいいのか提案した理論屋で、この業界では小林・益川に次ぐ著名人です。酒を一緒に飲んだことのある面識のある人なのですが、真面目な講演を聞くのは今日が初めてでした。

講演の内容はもちろんCPに関する話なのですが、その説明のわかりやすいことに感激しました。学生時代、それからポスドク時代にCPの物理をやっていた私にとっては内容的には知ってる話ばかりなのですが、その説明の上手さ、物理的本質へのアプローチの仕方、等々に本当に感激しました。三田さんに比べたら私はCP(非保存)について知ってるだけなんですね。理解してるつもりでも、三田さんの理解の深さに比べたら全然理解してないといってもいいくらいなんです。ホント参りました、という感じの講演でした。

純粋に天才には憧れます。


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この記事のコメント

右巻きフェルミオンと左巻きフェルミオンは同一に振る舞うんですか???

よくわかりませんが、自然の中では同一に振る舞わない(ようにみえる)のに、なぜか同数存在することに疑問があるのかなぁ、なんて、素人ながら思います・・・
2009-03-29 Sun 00:13 | URL | [ 編集]
すみません、昨日の説明わかりにくかったですね。
少しはわかりやすくなるように、今日のエントリーで追加説明しました。
2009-03-29 Sun 12:14 | URL | ExtraDimension [ 編集]

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