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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

ダークマター探索

昨日は日曜ということで普段より早く帰り、ちょっとだけ休養をとりました。とは言ってもアパートにいても何もすることがないので、前々から読もうと思っていた論文をちらちら眺めました。

その一つがPAMELAという実験グループの宇宙線中の陽電子成分の測定です。人工衛星を打ち上げて、地表からの高度数百キロの上空で宇宙線の成分を調べる実験で、特に陽電子やら、反陽子といった反物質の量の測定が主なテーマの実験です。高エネルギー物理屋の私が何でこの実験に興味があるかというと、この実験はダークマター探索という意味合いがあるからです。

ダークマターというのは、全宇宙のエネルギーの約4分の1を占めていると考えられている電気的に中性で非常に相互作用の弱い未発見の物質・素粒子のことです。その正体がまだわかっていなくて、宇宙物理、素粒子物理両面で今一番流行っている(?)研究テーマの一つと言えます。光っていなくて見えない天体物理学的なもの(MACHOと呼ばれます)、あるいは何らかの素粒子(WIMPと呼ばれます)という両面から探索が行われていて、現状ではWIMPであろう、少なくともMACHOだけからでは全宇宙の4分の1のエネルギーを担うことができそうにない、ということになっています。

ちなみに、MACHOは筋肉隆々のごっつい人のことで、日本語でもマッチョと言えば分かってもらえますよね。逆にWIMPというのはなよなよした人のことで、MACHOの逆の意味があります。誰が命名したか知りませんが、結構遊んでますね。

そういうわけで、高エネルギー関連で多くの人がダークマター探索を行っています。大別すると3種類のアプローチがあります。一つは、宇宙から降ってくるWIMPを直接検出しようと言ういう実験で、相互作用が非常に弱くてニュートリノを検出するようなものなので、実験もKamiokandeのようなニュートリノ検出実験と似ています。多くの宇宙線が偽信号になるので、それを避けるために地下で実験やってます。

2番目は、ダークマターがSUSYが存在すれば存在するある種の粒子であると仮定して、LHCなどの加速器実験でその粒子を生成・発見しようとする試みです。ダークマターが現状では何かわかっていないので色々な候補があるのですが、その候補の中で最有力なのが上で書いたようにある種のSUSY粒子というのも、最近とみにSUSYの人気が高い理由の一つになっています。SUSY以外だとAxionと言われる仮想的な粒子なんかも候補ですが、今までのの探索結果などから旗色が悪いです。

そして3番目が、昨日読んだ論文のように宇宙線中の反物質の量やガンマ線の量などを測定するというものです。基本的にはダークマターがある種のSUSY粒子であると仮定します。すると、たまにはダークマター同士の衝突があって、その結果陽電子が生成されます。陽電子は色々な既知の相互作用が原因で生成されますが、その相互作用から生成される陽電子の量は理解できていると仮定し、予想される量よりも多ければダークマター同士の衝突から生成されたのではないか、と考えるわけです。

PAMELAというグループは去年からずっと、あるエネルギー領域で陽電子の量が予想よりも多く、ダークマター同士の相互作用による結果ではないか、ということを匂わせる発表やら論文投稿(正確にはプレプリントと言って、査読付きの雑誌に投稿、あるいは掲載される前の論文です)が相次いでいました。私が読んだのもそういうプレプリントの一つなのですが、うーん、なかなか判断に苦しむ論文です。彼らが宣伝しているエネルギー領域以外での陽電子の量も理論予想(ダークマター以外の既知の相互作用から生成される陽電子の量の予想)と合っていなくて、前からそういう結果だったので、そこらへんに改善があったのかと思って論文眺めたのですが、そういうわけでもなく…。うーむ。


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2009-03-10 Tue 05:09 | | [ 編集]

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