ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

Luminosity leveling

ご存知の方も多いかと思いますが,ATLASでは去年の途中からluminosity levelingを行っています。LHCは2E34cm^{-2}s^{-1}を出せるのですが,ATLASの場合データ収集が追いつかず,フィルの開始当初は1.5E34でluminosity levelingしてます。

どれくらいのルミノシティまで行けるかの制限は複数の要素から来ます。トリガーレートが上がるとデータ転送が間に合わなくなる,トリガーの後段である計算機による処理が追いつかなくなる,金がなくて記録媒体が足りなくなる,検出器の性能が落ちてしまう,などなど色々な要素があります。去年のATLASの場合は,トリガー後段の計算機資源が足りなくなったためにデータ処理が追いつかなくなりluminosity levelingせざるを得なくなりました。(CMSも同じくらいのルミノシティでlevelingしてるみたいですが,何がボトルネックになってるのかは知りません。)

この年末年始のシャットダウンのあいだにCERNが計算機資源を追加することが決まったので,今年の運転ではどれくらいのルミノシティになったらlevelingをすべきかの議論が盛んに行われています。ルミノシティが上がると苦しくなる検出器は当然陽子陽子衝突点近傍に近いもので,ピクセル検出器が一番大変になります。チャンネル数も桁違いですので,データ転送量が半端ではなく,一番最初に帯域の制限にぶつかるのがピクセルです。だったら,トリガーを変えてたとえば閾値を上げるとか,あるものに対してはprescaleを上げるとかの対処もありますが,それについては物理の議論が必要になります。このように複雑な多体問題なのですが,Run CoordinatorになったIさんのトークでは,どうやら2E34でlevelingをするみたいです。

じゃあLHC側はどんなことを言ってるかというと,2.2ないし2.3E34くらいまでは行けそうと言ってます。衝突点最近傍のビーム収束用電磁石の冷却がルミノシティを制限すると考えられていて,もっとバンチ数を増やせばルミノシティ自体を上げる潜在能力はあるみたいですが,どうもその辺の値が上限と考えられているようです。ビーム収束用電磁石だけでなく,LHCの全周に渡って配置されているdipoleの熱負荷も限界に近く,いずれにせよ,冷却能力がルミノシティを制限しています。なにしろ,設計値の2倍以上のところの話ですからね。

今LHCでやってるluminosity levelingは衝突点でのビーム軌道をわずかにズラすものです。Levelingの方法は大きく分けて3つで,今やってるように軌道をズラす方法,crossing angleを変える方法,β*を変化させていく方法,というのがあるらしいです。軌道をズラす方法が一番簡単で,LHCbでは大昔からこの方法でlevelingをしています。crossing angleを変える方法もある意味で使われています。というのは,陽子をLHCに入射した直後はバンチあたりの陽子数が多いために,衝突地点でのビーム同士の相互作用を小さくし上手く衝突させるためにcrossing angleをつけていますが,時間が経つにつれ陽子数が減って来るとビーム同士の相互作用の影響が小さくなるので,今度は逆にルミノシティを稼ぐためにcrossing angleを小さくしています。加速器の人はこれをanti-levelingと呼んでいて,ビーム入射直後に160μradだったcrossing angleを連続的に小さくしています。

ただし,levelingの方法それぞれにproとconがあるので,加速器の人たちはβ*を変化させる方法でのlevelingも考えていて,Machine Developement (CERN界隈ではMDと呼ばれています)と呼ばれる加速器のstudyの時には,すでに陽子陽子衝突をさせながらβ*を変化させるということを実施しています。それを今年の運転では,まずfillの最後のほうで練習として導入する予定みたいです。ちなみに,前にも書いたことあるかもしれませんが,β*は今30cmで設計値の40cmよりも絞っています。これをさらに今後は,27cm, 25cmと絞ることも考えているそうで,LHCの潜在能力に驚かされます。

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