ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

学会雑感

今回の学会では,初日の晩にATLAS日本グループの会合がありその準備をしていたので初日の講演は集中して聞くことができませんでしたが,その他の日はわりと講演を聞く時間がありました。普段あまり物理に触れていないので,久々に物理脳を刺激されて楽しかったです。

なかでも特に気になるのは,自分自身がヒッグスの人なのでヒッグス関連です。誤差が非常に大きいので真面目な議論はできませんが,ttH(→bb)はあまりにややこしい解析なのでその結果を忘れると,トップ湯川が大きめ,ボトム湯川が小さめだと面白いなと思った瞬間に,誰かにτとの結合はでかそうだと言われてがっかり。レプトンとクォークで質量の作り方の違いを思い出すと,レプトンの場合は(ニュートリノ質量ゼロの仮定で)ヒッグス二重項しか使ってないけど,クォークだとアップタイプフェルミオンに質量を持たせるために
ヒッグス二重項の荷電共役を使ってたことを思い出し,でも,結局ダウンタイプはレプトンでもクォークでも一緒だよなぁ,ということになり,τ湯川とb湯川のズレを作り出すのは容易ではないことを再認識。いや,だからこそ実験ではそういう思い込みをしないで,とにかく虚心坦懐に測定精度をあげていかないとならないのだ,と自分に言い聞かせました。

最後の部分だけは真面目に思ってることで,ヒッグスとbとの結合,あるいはtとの結合を直接探索している人間は,測定精度が高いわけではなく難しい解析をやっているのだからこそ,バイアスをかけた解析にならないようにするのが重要です。ということを,学生のIくんにもきちんと口頭で伝えました。

あと,SUSY探索では一番単純なnレプトン+missing ETの解析は最終結果の解釈に不定性というかパラメータ依存性が小さいですが,それ以外はパラメータ依存性があるので最終結果のexclusion contourを見るときは注意が必要だということも再認識しました。ある解析結果の感度が凄く良いので現場で活躍してる若手たちに話を聞くと,ある粒子の崩壊比100%を仮定してるそうで,それならそういう崩壊経路での探索感度は上がって当然。まあ,そういう過程が一般的に悪くないものだとしても,真にSUSYがあるのかないのかを議論する際には気をつけなければなりません。

それから,T大のMさんとバスで一緒になり彼から聞いた話は印象的でした。突然,ニュートリノは運がいいけど,エネルギーフロンティアは違うと言いだし,何のことかと話を続けて聞くと,ニュートリノは大気ニュートリノしかり,最近測定されたθ13しかり,フリーパラメータが人間が測定するために適したところにある。人間が測定するには極めて難しい値になってもおかしくないのに,非常に好都合な値を持っている。最近のT2Kが示唆するCP非保存についても全く同様です。それに比べて,WやZのように質量の予言が正確にできたときを除き,トップクォーク質量もヒッグス質量もそれらの粒子を早期発見するという観点からは人類にとって優しい値ではありませんでした。トップなんて30GeVくらいに思われていた時期もあり,実際その辺をターゲットに加速器が作られたこともあります。ヒッグスについては,125GeVというのは,原理的にはいろいろなカップリングを測れるという意味で悪くない質量なのかもしれませんが,発見のためには最も難しい質量領域でした。SUSYがあったとしても重そうなことを示唆しています。ということで,エネルギーフロンティアでの新粒子発見はニュートリノの測定と対照的で,頑張って何世代もかけて初めてやっと可能な運命なのかもしれない,というのがMさんの話の内容でした。私いたく感銘し,忘れてはいかんと思い,いろんな人にこの話をしました。それだけでは足りず,こうしてブログにも書いています。

いやー,ホントそうです。人類の予想というのはいい加減なものですから,諦めずに頑張らないと幸運はやってきませんよね。

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