ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

国際共同実験の難しさ

LHCは順調に立ち上げ作業が進み,昨日の晩に,3バンチ入れてそのうちの2バンチを衝突させるというパイロット物理ランを行いました。当初の予定では来週の月曜くらいからということだったのですが,予定よりも順調に準備が進み昨日から一応物理ランが始まりました。とはいえ,上記のようにバンチ数が少なくルミノシティはまだ小さいので,実際には物理のためのデータ収集というよりは,検出器側の調整を行うためのデータ収集が可能になるような,安定したビーム衝突を開始したというところです。

そんな良いニュースと並行して,先週のアップグレード会合では,私は毎晩のように予算絡みのミーティングに出ていました。今回特に話題になったのは,common fundと呼ばれる予算をどうやって負担するか,ということでした。たとえば運転経費には,電気代など実験を遂行するにあたり必要な共通の予算と,各検出器グループへの貢献度合いで負担する部分に分かれています。今回話題になったのは,アップグレード計画に関してループ全体で負担すべき予算をどう捻出すればよいのかということでした。

どうすればよいのか,と言っても,幾つかの階層に分かれた議論が必要で,国ごとの負担をどうやって決めるのかという部分と,その負担を文科省のような各国のFunding agencyに払ってもらうための協定(のようなもの)をどういう形にすればよいのか,という2つが大きな議論でした。前者については,各国の著者数に応じて負担割合を決めるべきか,それとも加速器や検出器の建設費負担の割合に応じて決めるべきか,というものでした。後者については,すでに存在する運転経費支払いのための協定とは別にアップグレード用common fundという項目を作るべきか,それとも名目は変えずに現在の運転経費の中に入れてしまうべきか,というのが意見の対立でした。

これらはそれぞれの国の事情と,funding agencyの方針に強く依存するもので,原理的にどちらがよいか決められるような問題ではないので,議論の落とし所を探るのが非常に難しいです。ラーメンが好きな人とカレーが好きな人の間でどちらを食べに行くか議論しているようなもので,ラーメンじゃないと予算を出さないという国もあれば,カレーにしか予算を出さないという国もあるのですから,この手の話を纏めるのは本当に一苦労です。私はこういう議論に最近加わるようになったのですが,LHCの建設時からずっとそういう議論はされてきたわけで,現場レベルとは違うところでも国際共同実験特有の難しさがあるもんだと実感しています。

もうちょっと現場よりというか検出器建設に限った部分で言うと,どこの国も最先端技術を使った研究開発に予算を使いたいけど,インフラ的な部分には予算を使いたくないんですね。だからこそcommon fundという概念が必要になります。たとえば,シリコン検出器開発だったら,多くの国はセンサーとかセンサーからの信号読み出しのASICを含めたフロントエンドには金を出してもいいと思っているけど,ただ買ってくるだけで済んでしまうようなもの,たとえば普通のLV電源を好んで買いたいという国はなく,出資したい予算項目に偏りが生まれます。プロジェクトリーダーたちは,各国代表と相談してこういう予算の不均衡をなくそうと努力しています。そんなわけで,予想はしていましたが,ストリップ検出器建設についてプロジェクトリーダーは早速私に連絡を取って相談を持ちかけてきています。

大きなプロジェクトを進めるだけでも大変ですが,さらに国際共同で大きなプロジェクトを進めようと思うと,外からは見えにくい苦労が色々なところにあるものです。

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