ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

マスタープランシンポジウムと重力波検出

昨日は,学術会議の大型マスタープランシンポジウムでトークをしてきました。他の講演よりも聴衆の反応が良く質問もそこそこあったので,トーク自体はまずまずだったかもしれませんが,私の悪い癖で質問の受け答えでふざけすぎたところがあり,真面目な人にはちょっとやり過ぎだと感じた人がいるかもしれないなと後で少しだけ後悔しています。ただ,シンポジウムの後に何人かに声を掛けていただき,他分野の人にも(主には原子核ですが)伝えたいメッセージは伝わったのかなという気がしています。

シンポジウムが終わりそれはそれで一安心なのですが,本番はこれからで,申請書の締め切りが迫っています。学術会議の締め切りは3月一杯ですが,大型計画は個人で申請するのではなく,研究機関の長あるいは部局長が申請します。HL-LHCの場合はKEKから申請するので,KEK内部で締め切りが設けられていて,他プロジェクトとの調整などが必要であることから3月半ばが最終締め切りで,かつ,研究の概要については今月中には提出しなければなりません。さらに,素核研の内部での調整もあるので,そこへの概要提出締め切りはさらに早く来週には提出しないとなりません。

加えて,大型科研費関連の申請書も近々書かなければならず,ここしばらくは予算を取るための申請書作成に心血を注ぐことになります。

前のエントリーで書いたように,予算とは関係のない書類書きも相変わらずやっていまして,ここしばらくは本当に申請書と格闘する日々なのですが,ワクワクするようなニュースも飛び込んできました。みなさんもご存知のように,とうとう重力波を捉えることにLIGOが成功しました。セミナーを見たかったのですが時間がなくてまだ見ていません。そのうち見ようとは思っていますが,とりあえずはPRLのabstractだけ眺めました。凄いですね。重力波の観測から,どれくらいの重さのブラックホールがぶつかってどれくらいの重さのブラックホール一つになったかがわかってしまうのですね。太陽質量の36倍と25倍のブラックホールがぶつかり,太陽質量62倍のブラックホールと対照質量3倍分のエネルギーが重力波として放出されたんだそうです。

このニュースの話を電車の中で偶然会った物性の教授としたのですが,その話のなかでなるほどなぁと思ったのは,物性をやってる人から見ると,今回の重力波検出しかり,私たちがやってる素粒子実験しかり,理論的に予想してたものが見えて何が面白いんだろう?という感覚があるのだそうです。もちろん,すっごい発見だということはわかるし,理論を検証することの大切さもわかるので,科学的意義が大きいことはわかるのだけど,実験屋として本当にそれを面白いと感じるのかというのが疑問だと言うのです。私その感覚は凄くわかるのですが,検証されていない理論による仮説が日常生活の感覚から大きくかけ離れているにもかかわらず,それが実証できれば,それはやはり驚きだと思うし,あるいはその仮説が実証されることにより,さらにその先が広がる結果であれば,それはやっぱり凄いと思ってしまいます。たぶん,私が持っている感覚をその物性の人も共有はしてくれるのですが,私が感じたのは,素粒子物理実験屋が他分野の特に同じく物理をやってる人に説明するときの説明がイマイチなのかな,という反省でした。

理論屋が自分の理論なり模型を語るのは理解してもらえても,それを実験的に単に検証すると言っても,きっと物性等で実験をやってる人には面白みが伝わらないのです。予想してた通りの結果になって何が面白いの?という反応をする人が多いみたいなのです。確かにそれはその通りで,ちょっと前に私が磁石で遊んで楽しんだように,実験の面白さの原点は思ったのと違う結果になったときで,じゃあ,それはなんでなんだろう?と考えるのが面白いわけです。こういう原点に立ち返って他分野の人にわかってもらうように説明しないとならないのだということを再認識できて,その物性の教授との短い会話は非常に有意義でした。

ヒッグスの場合だったら,単なる理論の検証ではなく,この宇宙にヒッグス場が凝縮しているのだという驚きを伝えないとならないし,だからこそその驚きのヒッグス場を研究することの面白さ,そういう分野が開けたことの意義を説明しないとならないのですよね。同じように,もしSUSYが見つかれば,それは単なる理論の検証なのではなく,時空とスピンという内部空間を繋げるかもしれないという驚きの可能性を語らないとならないし,SUSYが見つかったことによる新しい分野の発展について語らないとならないのですよね,きっと。

重力波がきっかけで,物性の偉い人とこういう話をできたのは本当に幸運でした。

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