ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

バンチ交叉ごとの衝突回数

昨日やったミーティングで,バンチ交叉ごとの陽子陽子衝突回数について理解できていない人が多かったので,このブログではこれまでに何度か説明したような記憶もありますが,しつこくまた説明してみます。

コライダー実験では,単位時間あたりの事象数は定義により,断面積(cm^2)×ルミノシティ(cm^{-2}s^{-1})です。LHCのエネルギーでの断面積は約80mb(通常はオーダー計算くらいしかしないので100mbという数字を使っています),LHCの設計値ではルミノシティは10E34,ですから,その2つの数字を掛け合わせて,単位時間当たりの陽子陽子衝突回数は8E8となります。あ,bの単位は10^{-24}cm^2です。

これで単位時間当たりの衝突回数がわかりましたら,バンチ交叉ごとの衝突回数を知りたければ,バンチの時間間隔がわかればよいということになります。話を簡単にするために,LHCのような円形加速器でその1周にわたりバンチが一定間隔で入っていることを仮定します。現在LHCでは設計値である25ns間隔で運転していますので,その数字を使うとバンチ交叉の周期が40MHzですから,[8E8]/[40MHz]あるいは,私は単位を揃えることだけを考えて8E8×25nsと計算するのですが,いずれにせよ,バンチ交叉あたりの衝突回数は20回ということになります。

実際には,LHCの1周にわたり完全に等間隔にバンチが入っているわけではなく,全周にわたりRFの周波数に従ってぎっちりと陽子バンチが埋まっているわけではないので,バンチ交叉あたりの平均衝突数はもう少し多くて,設計値では23となっています。

ここまで読んでおわかりになったかと思いますが,定義からして当然なのですが,同じルミノシティの場合バンチ間隔が短いほどバンチあたりの衝突回数は少ないです。当たり前ですね。同じルミノシティということは,単位時間あたりの衝突回数が同じだと言ってるのですから,バンチのすれ違う回数が多ければ多いほど,そのバンチ交叉あたりでの衝突は少ないということになります。

バンチ交叉あたりの衝突回数が多いと,検出器に飛び込んでくる粒子の数が多くなるわけですから,それだけ検出器としては粒子の検出が難しくなります。それが理由で,検出器サイドは同じルミノシティを達成できるのであればバンチ交叉間隔は短くして欲しいという要望があります。ただし,加速器の立場に立つと,今回50ns間隔から25ns間隔にしたことによる新たな問題も発生しています。ざっくり言うと,って,ざっくりとしか私もわかっていませんが,陽子と陽子の間隔が短いがためにバンチ同士での相互作用が強くなりビームが不安定になるという問題があります。これによって,ビームの広がりが大きくなる(=エミッタンスが大きくなる)なんていうことが起きます。

なので,バンチ交叉間隔というのは,加速器側と検出器側の妥協の接点となります。とはいえ,検出器側もバンチ交叉間隔が短ければ短いほどいいかというとそんなことはなくて,検出器の反応の速さが有限ですので,具体的にはシリコンセンサーだったら,粒子がシリコンセンサーに入射して発生する電気信号を集める時間が有限なので,ある一定の頻度以上の陽子陽子衝突が起こっても時間的に分離できなくなって困ってしまいます。

25ns間隔で発生する陽子陽子衝突事象を記録するには,40MHzでデータ収集しなければなりませんが,ATLASのような莫大な検出器から来るデータをすべて記録することはできません。確か1事象あたりのデータサイズは1だか2MBだったはず。じゃあどうするかというと...

書き始めるときに考えていたことと違う方向に話が進んできてしまいましたし,もうだいぶ長くなったので,この続きはまた次回書いてみます。

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この記事のコメント

相変わらずお忙しいようで、今月まだ一度も勤務時間につくばでお目にかかってない気がします。

ルミノシティーの単位って皆さん XXXx10-33 とかそういう加速器に押し付けられたのを使われますが、
10^{33} (cm^{-2}s^{-1})で /nb/sec になり物理屋には理解しやすいです。

LHCだと34乗なので10/nb/sec。
断面積100mbなら
100 mb x 10/nb/sec = 1 GHz ですね。
これを 40 MHz で割ればバンチ交差あたり 25個が出てきます。

もう一度書きますが 33乗で /nb/secです。覚えておきましょう。
トリガーのバンド幅とか急に計算しないといけないときに役に立ちます。
2015-10-14 Wed 19:47 | URL | 中村@つくば [ 編集]

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