ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

物理ラン再開

先月の初めにRun2が開始され,わずかな量のデータを収集しましたが,その後は物理ランは行っていませんでした。テクニカルストップと呼ばれる定期点検期間を経て,beam scrubbingと呼ばれるビームパイプの焼き出し(?)を行っていました。ビームパイプ中の真空度を上げるために,温度を上げることでビームパイプに吸着されている分子を焼き出すことを加速器ではやりますが,beam scrubbingもある意味焼き出しで,これをやることによってビームパイプだかビームスクリーンと呼ばれる部分だかにトラップされている分子を焼き出します。ただ,その方法は,温度を上げるのではなく,ビームによる強い電場を利用します。バンチ間隔を狭めて,かつ,バンチあたりの電荷すなわち陽子数を上げることで電場を通常よりも強くして,その電場によって焼き出しを行います。これをbeam scrubbingと呼びます。

ただ,その原理を私はよく理解していなくて,それで焼き出しになるのか定量的な理解は全くありません。でも,とにかく,これをやることによってelectron cloudを減らすことができるんだそうです。electron cloudというのは,その言葉通り電子雲なのですが,これがなぜ出来るかというと荷電粒子が放出した光子がビームパイプ等に当たって光電効果が起こるからです。その光電効果を起こす元になるトラップされた分子を焼き出すというのがbeam scrubbingの目的なわけです。

順序が逆になりましたが,じゃあなぜbeam scrubbingをしてelectron cloudを減らそうかとすると,LHCの場合はelectron cloudによって生成される熱を抑えたいからです。ご存知の通りほぼ全周に渡って陽子軌道を曲げるための超伝導双極子電磁石が設置されていますので,ビームパイプの周りは超低温です。Electron cloudなどによって生成された熱は何らかの方法で逃がしてやらなければ超伝導が破れてしまいますし,冷却能力には限界がありますので,なるべく熱の発生を抑えたい,electron cloudを減らしたい,とうことになります。

ちなみに,KEKBのような電子を使う加速器では,ビーム強度を上げるとelectron cloudによってビームの不安定性が生じるため,electron cloudを減らしたいという要請があります。LHCにもelectron cloudによるビーム不安定性というのがあってもおかしくありませんが,陽子は電子ほど強い影響を受けないので,今のビーム強度だとメインの目的は熱負荷を抑えたいということみたいです。いや,これも専門家じゃないのでわかっていなくて,もはやビームの不安定性も問題になり始めているのかもしれませんが。。

とにかく,そのbeam scrubbingをテクニカルストップ後しばらくやっていまして,先週はほぼbeam scrubbingでした。ようやく,土曜から日曜にかけて物理ランを再開しまして,少しデータを取り始めました。徐々にルミノシティを上げるべくビーム強度を上げていってます。これから2,3週間,50ns間隔で物理ランをやり,その後は,25ns間隔に向けたbeamscrubbingを行い,8月初旬から中旬くらいから25ns間隔での物理ランを目指しています。

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