ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

J-PARC施設見学

先週J-PARCへ行った時の話です。

PACは3日間行われるのですが,初日の午前中に,PACの委員を対象にしたJ-PARC施設見学という催しがありました。前回5月のときもあったのですが,私は初日参加できなかったため,今回は初めての施設見学。ハドロンホール,MLF,T2Kの前置検出器エリアの3箇所を見学することができました。

ハドロンホールには,素粒子関連ではKOTOがあります。研究室のメンバーも参加し,親しみのある検出器を初めて見ました。と言っても,メインな検出器である電磁カロリメータと大きなγ線veto検出器たちは真空タンクの中なので見ることはできず,電磁カロリメータの後方にあるγ線veto検出器の一部をなんとか見ることができた程度でした。それでも,スライドなどで説明されるだけよりも,やっぱり実物を見るのはいいもんです。

ハドロンホール全体としては,ターゲットの交換を終えて,来年早々のランの準備が急ピッチで行われているという印象でした。特に大きな目玉は,ハドロンホール全体の排気システムでしょうか。例の事故の教訓を元に,様々な安全装置が追加されましたが,その一環として,ハドロンホール内の空気が直接ホールの外に出ないような仕組みに作り変えられています。それから,COMET実験用の建物の建設も凄い勢いで進んでいるようでした。

そして今回一番の驚きはMLFの建物でした。MLFが何の略が知りませんが(Material and LifeなんとかFacilityでしょうか?),まあとにかく本来は素粒子物理用の実験施設ではなく,物性の人たちのための(?)実験施設です。3GeVの陽子をターゲットにあてて中性子を生成。その中性子を利用した物性実験が主に行われています。で,何に驚いたって,その建物の綺麗さです。バスで連れて行かれたのですが,その建物はどう見ても実験施設には見えませんでした。外見綺麗なオフィスビルディングだし,建物の前にはモニュメントがあるし,中に入ってもどっかのオフィスビルのような綺麗さです。古今東西,素粒子物理実験の施設はコンクリートうち抜きで,工事中の建築現場みたいなのばかりです。実験施設というとそういうのを無意識に想像していた私にとっては本当に衝撃的でした。我々の分野の人間だったら,そんなとこにかける金があるなら実験そのものに金をかけると皆が思ってしまうのでしょうが,分野が異なると考え方が違うものです。というか,やっぱり,素粒子が貧乏なだけで,物性だと圧倒的に金が集まるのですかね。

ちなみに,MLFでも素粒子物理実験はやっていて,ミューオン関連の実験が幾つか走っています。加えて,飲み仲間のMくんがやろうとしているステライルニュートリノ探索実験もMLFでやろうとしています。MLFのいいのは,金のないKEKが運転するメインリングと違って,常に安定してビームが出ていることです。メインリングを使う実験は,T2KやKOTO,その他原子核関連の実験全てが運転時間の短さに頭を悩ませています。KEKの予算が極度に減らされた上に,電気代が高くなってしまって,実験設備を作ったはいいが,加速器を動かすための金がないという呆れた状況になっています。MLFには,そういう問題がないというのが大きな強みです。

そういえば,話に出たので書きますが,せっかく巨額の資金を使って実験施設,設備を作ったのに,電気代がなくて実験できないという予算措置は,なかなかにツライものがあります。この前話をしてお役人の方々の考えややり方があるというのも(前から聞いていた通りではありますが)よーくわかるのですが,それにしても,予算がついたプロジェクトなのに物を作るだけ作って実験できないというのは予算の無駄遣いだし,一番の問題は,国際的な信任を失うことです。素粒子物理の実験というのは,LHCは言うに及ばず,最近のプロジェクトはほぼ全て国際協力で行っています。日本で予算がついた,何年後にはどういう成果が得られそう,という見通しを立てて外国人が各国で予算を獲得して日本に実験をやりに来るのに,途中でやっぱりやれませんとなると,科学的だけでなく国家の信用を失っていまいます。こういうのはなんとか避けたいです。金がないのは,個人も国も同じで,誰が悪いわけでもないのすが,関係各位の協力でなんとか良い方向へ話が進むことを祈るばかりです。

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