ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

観測ではなく再現

もうだいぶ前の話になってしまいますが,ICFAセミナーに出席するために中国へ行ったときのこと。KEKの理論屋のOさんと雑談していたときに彼が言ったことが印象に残っています。

ICFAは,前にも書いた通りInternational Committee for Future Acceleratorsの略です。つまり,加速器実験の将来計画を世界的に調整・協力していくための委員会です。ところが最近は非加速器実験もICFAの守備範囲(?)となり,それは別に悪いことではないと思うのですが,議論する対象としては加速器実験よりも非加速器実験のほうが多いのではないかと思うくらい加速器実験以外のテーマが多くなってきています。LHCがバカでかいプロジェクトの上,欧米の高エネルギー物理業界はLHC比率が高いので,人数という意味では加速器実験に携わっている人の比率が今でも多いのだと思いますが,それにしてもセミナーでは非加速器実験ばかりでした。まあ,セミナーの中身については,ICFAセミナーのことを書いたエントリーでも言ったように,中国主催だったので無茶苦茶なバランスだったということはありますが。

とにかく,最近の素粒子物理業界はダークマターにダブルβ,さらに宇宙に接近した分野の比率がどんどん大きくなっています。そんな状況を揶揄してOさんは「人類はもう自然を再現するのを諦めてしまうのか。自然を観測するだけなら過去何千年もやってきた。自然を宇宙の誕生初期を人類が再現できるようになってまだ数10年しか経っていないのに。」と私に熱く語ってきました。いやー,カッコいいと感動してしまいました。Oさんはいつも熱く素粒子物理を語り,夢を語る人なので,彼の話を聞くのは楽しいのですが,今回もまたやられました。

そうなんですよね。ついこの前の公開講座でも質問されましたが,宇宙の誕生直後10^{-10}秒後の世界のことを説明しても普通の感覚なら信じられません。私が宇宙天文の話を聞いてもあまり信じないのも同じ感覚です。でも私たちが自信を持っているのは,加速器実験により仮説を検証可能,自然を再現して何度も繰り返し確認しているからです。宇宙や天文の人には反論されると思いますが,私個人の感覚としては,観測は状況証拠で,実験は直接証拠です。別に加速器を使わなくても実験はやれますから,たとえばダブルβとかは加速器の代わりに線源を使った実験なので,そういう意味では加速器でなくてもよいのですが,実験というのは観測よりも一段深く突っ込んだ検証方法だという感覚を持っています。

しかもその実験方法が,自然に存在する何かを使うのではなく人類の英知を結集した加速器で行うというのは,人類がまさに自然を再現しているという感じがしてカッコいいなと私なんかは思ってしまいます。というか,たぶん大昔に,素粒子物理が何かという話を聞いたときに感じたことです。でも,最近はそういう感覚が薄れていました。そこにOさんの熱い語りを聞き,よく使われる表現ですが,忘れていたことを思い出した気がしました。いやー,Oさんカッコいいです。

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