ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

様々な研究

ちょっと前に何かの本で読んだのですが,人間の生体リズムは1日の周期が25時間程度というのは昔の研究に基づいた話で,最近(と言っても2000年前後)の研究ではかなり高い精度で24時間に近いと考えられているとか。実験の色々な系統誤差あるいはバイアスをなくすための工夫が重ねられた結果,どうも24時間に相当近いらしいという結果が出ているそうです。本当のところどうなんだ,というのは私は専門家ではないのでわかりませんし,生体って素粒子物理学とは真逆の複雑系ですから相当に難しい問題なのだと思いますが,1日の周期25時間というのは,なんとなく人間の願望というか言い訳というかが入ってる気がしてなりません。朝もう少し寝たい,と誰もが(きっと)思っているところをくすぐってるだけなのではないかと前から思っていたので,最近は24時間説が優勢という話を聞いて,私は24時間説に傾いています。

それはさておき,生体のリズムでよく話題に上がるのが,時間の感覚です。年をとると時の経つのが早く感じられたり,酒を飲んだ時も時間の経つのがあっという間です。これを説明しようとするとすぐに思いつくのはクロック仮説です。脳内にも基準クロックがあって,そのクロックの速さが子供の頃は速いけど年をとるにつれて段々遅くなってると考えるのは,デジタル回路を扱っている人間なら誰でも思いつくことです。こんな話題を酒飲んだときの与太話としてよくしていますが,まさにこういうことを研究している人に先日のFPGA講習会で会いました。

その人いわく,確かにそういうクロック仮説はあるのですが,決定版というわけではなく,様々な説があるとか。そして,その人たちのグループは別の仮説を立てているのだそうです。その仮説については説明が面倒なので勘弁して欲しいということで,別のわかりやすい話題を提供してくださったのですが,時間の感覚という誰もがふとなんでだろうと思うことを研究している人がわりと身近にいることがわかり,なんだか嬉しくなりました。

代わりに彼らが今やってる実験というのがまた面白いので紹介します。

人間の触覚に関わる研究で,右と左をどうやって,どのように認識しているのか調べるため,目隠しをした状態で右手と左手に何らかの刺激を与えます。普通の状態だったら当然左右を正しく認識するのですが,手を交差してもらうと,左手への刺激を右,右手への刺激を左と答えてしまうようになるのだそうです(正確には,統計的にそういうことが多くなるということなのだと思いますが)。つまり,右と左は手(や足)といった感覚器に備わっているというより,脳内処理の結果で,手を交差していることを認識している脳は,手を交差した瞬間にどちらが右,あるいは左なのかの認識に対する補正を入れていることになります。

さらに,このモデルを検証するには,手に何か棒のような物を持たせて,その棒に振動を与えて右か左かを判断してもらいます。その棒を交差させた場合,交差していることがわかっているかわかっていないかで回答にどういう違いがあるか,また,手を交差させた上で棒も交差させるとどうなるか,等々を今実際に実験しているのだそうです。左右をひっくり返すようなメガネを使ってもらうと,数日するとそれに慣れてしまい問題なくなる,という話と根本的には同じような話で,感覚器からの情報を脳がどうやって処理しているのか,較正や補正をどう行っているのかという研究なんでしょうね。

研究費をどうやって取ってくるか,学生にどうやって研究テーマをこなしてもらうか,グループ内の政治などなど,仕事として研究をしていると研究そのものの面白さ以外の部分で苦労しますが,そういう苦労のわからない全くの他分野の人から聞く研究の話って,本当に面白い時があります。今回のこの話もそういう類いで,きっと研究を進めるには多くの苦労があるのでしょうが,研究内容は普遍的な素朴なテーマで非常に面白そうな内容でした。素粒子物理学なんてやってるから余計に共感するのかもしれませんが,普遍的で誰もがなんでだろうと感じるようなテーマというのは,分野を問わず非常に面白いと感じてしまいます。

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