ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

LHCの壮大さ

久しぶりに出席しているCollaboration meetingですが,自分自身にとって「おっ」と思うようなニュースは今のところありません。ただ,落ち着いてミーティングに出ていると,LHCって凄いなぁと再認識することがいくつもあります。

たとえば,数日前にも書きましたが,LHC加速器の作業というのは本当に大変です。大変というのは,巨大な装置なので,何をするにしても莫大な人的資源が必要です。このシャットダウン中にやっていた大きな作業の一つである,超伝導電磁石間の接続のやり直しと試験,およびそれに関連した安全装置の追加など,気の遠くなるような作業が必要となります。これを1年半にわたって延々とテクニシャンの人たちがやってきたわけですが,その努力には本当に頭が下がりますし,いいなぁと思うのは,こういう作業が国を超えて行われていることです。政治的には微妙な関係の国とかがあっても,色々な国からテクニシャンがやってきて,全長27kmにもおよぶ巨大な装置の改修をみんなでやっていく,そういう国際協力ができるというのは,巨大科学のいいところだと改めて感じました。金だけ出す,口だけの国際協力ではなく,同じ釜の飯を食う,こういった共同作業が本当の国際協力だと痛感します。

あるいは,今,LHCの電磁石を超伝導にすべく順次冷やしているところですが,そのためには,膨大な量の液体窒素と液体ヘリウムが必要です。シャットダウン中は冷やしていませんでしたから,液体窒素もヘリウムも大量には必要ではありません。ですので,液体窒素およびヘリウムは,シャットダウン中はどこか別の場所に保管しておかなければなりませんが,そんな大きな予備タンクはありません。ミーティングで話に出ていたスライドを今参考にしながら書きますが,液体ヘリウムは35トンほどCERNに蓄えていましたが,残りは全部市場に戻していました。必要になったときに,幾らで買い戻すという契約のもと市場に戻していたそうで,電磁石を冷やし始めるにあたり市場から液体ヘリウムを買い戻しています。最終的には180トンくらい必要で,今は140トンくらいまで戻ってきているようです。

で,凄いと思ったのは,液体窒素なんてデッカいトレーラーで1日に10台とか,そういうオーダーでCERNに運び込んでいるのだそうです。毎日毎日そういう量の液体窒素を運び込むだけでも大変だし,それを管理するロジスティクスというのもしっかりしていなければなりません。液体窒素だけじゃなく,本当に色々なコーディネーションが必要で,これだけの大プロジェクトというのは科学者や技術者が普段行うようなことだけでは全く動かなくて,ロジスティクスその他私が普段全く考えていないようなことで大事なことがたくさんあります。言葉は悪いですが,戦争のようです。最新の武器の開発や兵士の訓練だけでは戦争には勝てなくて,ロジスティクスその他諸々をしっかりやらないとならないのと,なんとなく似ています。

そんなこんなで,知っている(た)ことばかりではあるのですが,Run2開始を目前に控えて慌ただしく動いているCERNを目の当たりにすると,LHCというプロジェクトの壮大さを改めて感じたのでした。

研究 | コメント:0 | トラックバック:0 |
<<模型に依存しない新物理探索の難しさ | HOME | 今年のノーベル物理学賞>>

この記事のコメント

コメントの投稿















コメント非公開の場合はチェック

この記事のトラックバック

| HOME |