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ATLAS at Anywhere (旧 ATLAS at Osaka)

ゲージ対称性

素粒子物理学の土台になっているのが量子力学と相対性理論ということは広く知られていますが、もう1つ重要な概念にゲージ対称性というものがあります。量子原理、相対性原理、そしてゲージ原理の3つの考え方から現代の素粒子物理学は作られている、と言っていいくらいです。そこで今日は、馴染みの薄いゲージ対称性について少し説明してみます。

CP対称性の破れのエントリーでも書いたように、ある変換を行っても物理法則が変わらないことを物理学の世界では対称性があると言います。例えば並進対称といえば、座標を並行移動させても物理法則は変わらない、ということを意味します。東京で実験をしても、大阪で実験しても結果が変わらなければ、その実験を支配する物理法則には並進対称性がある、ということです。

素粒子物理学の世界には根本的な対称性が幾つかありますが、それらは2つのグループに大別することができます。時空に対する外部対称性と、それ以外の内部対称性です。時空に対する対称性というのは、文字通り我々が存在する3次元空間+時間の4次元空間におけるある種の座標変換です。上で例に挙げた並進操作などは時空における変換なわけです。一方、粒子の状態を記述するためには、4次元時空で指定する以外の性質もあります。例えば粒子の性質の1つにスピンというものがありますが、スピンは粒子の位置と時間だけでは指定できません。そういう4次元時空以外の座標空間のことを内部空間と呼びます。

ゲージ変換というのはある内部空間において粒子の位相を変えるような変換のことです。実空間でないのでイメージしにくいですが、とにかく、実空間以外での変換だと思って下さい。ということは、ゲージ対称性というのは、その内部空間における変換操作をしても物理法則に変わりがない、ということを意味します。特に驚きなのは、局所ゲージ対称性といって、粒子の位相を時空の各点で勝手に変えてしまっても物理法則が変わってはならない、という要求をすると、相互作用がどういう形なのか決まってしまうのです。別の言い方をすると、局所ゲージ対称性が保たれるように理論を作ろうとすると、ゲージ場という力の媒介粒子を導入せざるをえず(電磁気なら力の媒介粒子は光子、弱い力では電荷がそれぞれプラスとマイナスのW粒子と中性のZ粒子、強い力ではグルーオンです)、かつ、その媒介粒子と元々存在する粒子との相互作用が一意的に決まってしまうのです。

ゲージ変換と一言で言っても、変換を行う内部空間が複数定義でき、定義された内部空間によって変換の仕方も違うので、複数の種類のゲージ変換というものが存在します。その変換の仕方を数学的に分類したのが、U(1)変換とか、SU(2)変換とか、SU(3)とか、SU(5)とか、、、で、電磁気力なら、U(1)変換に対するゲージ対称性を要求すればその相互作用を理論的に記述できる(QED)のです。弱い力ならSU(2)、強い力はSU(3)といった具合です。さらに言うと、電弱統一理論と呼ばれる電磁気力と弱い力を統一して記述する理論では、SU(2)xU(1)変換に対するゲージ対称性を要求しています。

というように、粒子の相互作用を記述する理論の土台にはゲージ対称性という考え方があり、電弱統一理論と強い力を記述するQCDの成功から、ゲージ原理というのは、冒頭に書いたように量子原理、相対性原理と並ぶ宇宙の根源的なルールだと考えられています。こういう背景のもと、内部対称性であるゲージ対称性と、重力を記述するための外部対称性を混ぜこぜで使うにはどうしたらよいのか、という問題に対する解が超対称性なのです。それについては先日このエントリーで説明した通りです。

とまあ、ごちゃごちゃ書きましたが、一般にはあまり知られていませんが、とにかくゲージ対称性というのが素粒子物理学には非常に重要な役割を果たしているのです。


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